俺無双!!
「フェーゴ・チスパ」
領主が唱えると、その周辺が禍々しく燃え始める。火の大群が出来上がり、俺の方へと勢いよく突撃してきた。
「火には火かな?特訓の成果見せてやる!」
俺はそう叫ぶと、領主と同じ様に火の大群を呼び起こし、向こうのそれらとぶつけて相殺させた。
「な!馬鹿な!この我のフェーゴ・チスパを真似して相殺しただと!あり得ん!」
領主はまた困惑している。その姿がお前にはお似合いだ。
「な、ならば、これならどうだ!オー・レーゲン!」
領主の呼応に連動し、大地から水か溢れ出す。水は一つにまとまり巨大な塊となって、俺に襲いかかる。
俺は、先ほどと同じように火の大軍を起こし、水の塊にぶつけた。しかし、効果はなさそうだった。
「水に火では相殺できないか。だったら、その水ごと操ってやる」
俺は、険しい顔になり、かなりの力を込めて、水の塊を魔力で操ろうとする。
敵の水の塊が、押し返されている。この調子だ。
「いっけー」
俺がそう強く吼えると、水の塊は遂に領主を押し潰した。
「ぐわぁ…。」
水の塊は激しく破裂し、領主にかなりのダメージを与えたようだ。
「この辺にしておいてやろうか?」
俺は領主にそう問いかける。
「ふざけるな!この私が悪魔ごときに負けるはずがない!ええいこうなったら我の信魔法で!」
領主は手を空に掲げ、呪文を唱え始める
「アストラペー・ヴェント・ラーファガ」
すると、辺りが雷鳴に包まれ、雷雲が垂れ込めてきた。
「雷は相殺はできないぞ!なぜなら速度が尋常じゃなく早いからだ!回避も不可能!」
領主は誇らしげにそう言う。
雷か…。たしかに厄介だ。だがこれなら……。
「ええい!なにをしても無駄だ!悪魔!我の最強魔法を食らうが良い!」
轟音が辺りを覆う。閃光に包まれ、土煙が立ち込める……。
「いやあ、危ない危ない!」
土煙がなくなると共に、無事な俺の姿がくっきりと現れる。
「ば、馬鹿な!なぜ無傷?」
領主は不思議そうに俺を見つめる。
「ああ、これはな、避雷針って奴のおかげなんだ。」
俺の後ろには、大きな避雷針が創造されていたのだった。
「な、なんだそれは?それで我の雷を無力化したと言うのか?」
領主は、また困惑した表情で驚く。
「ああ、そうだ。これがある限りお前の攻撃は無効だ。勝負あったな」
俺はそう言うと、領主の周りに鉄を創造し、奴を縛り上げた。
「な、なんたる無礼な行為!貴様、許さんぞ!我が領の兵を引き連れて、この村を滅ぼしてくれようか?」
領主はそう喚き始めた。
「そ、それは困ります」
マナちゃんがおろおろしながら言う。
「そうだよな、娘!困るよなぁ!その悪魔に、早くこれを解かせろ。」
「ワッセちゃん……解いて。」
マナちゃんが懇願してくる。俺は領主から鉄を解いた。
「農作物はどうにかなっても、兵を連れて来られたんじゃ勝ち目はないよ…」
マナちゃんは動揺する。
「いっそのこと、あいつを倒しちゃうか?」
俺はマナちゃんに問う。
「領主様を倒しちゃったら、その部下や他の村や、その上の人達も黙ってないよ……。いくらなんでもそんな状況は、ワッセちゃんにも打開できないでしょう?」
「……。」
俺は言葉を失う。
「やはり、その娘は賢い!我のペットになれ!その悪魔も、人型の時の可愛さは気に入ったぞ。我のペットにして、今日の分を何倍にも何倍にもして、可愛がってくれようぞ!フハハハ」
「いえ、ワッセちゃんはお許しください!私一人でどうか!なんでも言うことを聞きますから!」
「駄目だ!マナちゃん!なにされるか分からないぞ」
「ええい、うるさい悪魔め!黙らんと村に兵を呼び集めるぞ」
「……。」
「で、マナとやらの娘よ。具体的に我に何をしてくれるのじゃ?」
「そ、それは…」
「こんな村で、ずぶ濡れにされた我の事を、気晴らししてくれるのだろう?え?」
いやらしい表情をまた浮かべる領主。
「そこまでにしないか、ゴスペル」
村に一人の女の子らしき人物が入ってきた。金髪ショートヘアーでとても可愛らしい。
「誰だ貴様は。」
領主ゴスペルは、不機嫌そうに問い尋ねる。
「僕はアルム。神聖ミヤオオ帝国教皇の使いである。この紋章が目に入らぬか!」
「そ、それは神聖ミヤオオ教皇直轄部隊の紋章!なぜこんな少女が!?」
「頭が高い!低くしろ!」
「はっはー」
領主は頭を下げる。ざまあみろ。
「神獣様に対する数々の非礼、僕はこの目で確かに見ていたぞ」
「いえ、こやつは悪魔でして……」
「黙れ、あれほどの戦いを体験しておきながら、そのような事がよく言えたものだな。」
アルムは辛辣な表情を浮かべる。
「ど、どうかお許しを」
領主ゴスペルが命乞いをする。
「お前は牢屋行きだ、ゴスペル。さて僕は君達に話があって来たんだ。」
アルムはそう言って、俺とマナちゃんに近づいてきた。




