領主激怒!!
「一つだけ心配なことがありますのじゃ…。」
村長は俺を呼び出して、語り始めた。
「昔より技術の発展は、災いを呼び起こすとして、禁忌にされてきましたのじゃ……神獣様とは言え、その事が気がかりでしてじゃなぁ」
「そんな言い伝えが、あるのか?」
「ええ、魔法絶対思想と言う物でして、魔法こそが、唯一神より与えられし物。そうでない物は、良くないとされております」
「なら、大丈夫だ」
「と言いますと?」
「万物創造の魔法で生み出された物だから、これらも魔法の塊。問題はないだろうよ」
「ほぉ、なるほど」
村長はすっかり感心した様子であった。
その後で、マナちゃんと会話した。
「ワッセちゃんは修行とか勉強とか好きかな?」
マナちゃんが、いつものように俺を抱きしめながら、そう問いかける。
「うーん、あんまり好きじゃないかな?頑張るのって」
「そっかぁ、じゃあさ、頑張らないで頑張ろっか!」
「???」
俺には意味が、理解できなかった。
「寝ながら、魔法で布団を動かしたり、食器やスプーンを、手を使わずに動かしたりとか、そういう魔法特訓は嫌かな?」
「ああ、まあそれくらいなら良いかな」
俺の特訓が始まった。とは言っても、簡単で気楽なのばかりだが。
寝ながら、体を宙に浮かして、好きなところに行ったり、食事を魔法のみで行ったりなど、対して負荷にはならない特訓だ。
しかし、効果は劇的で、俺の魔法がどんどん成長していくのが分かる。マナちゃんは一流のモンスター使いで、個々に合わせた特訓メニューを、考案するのが上手らしい。
魔法が上達するにつれて、マナちゃんに誉められる。俺はそれが嬉しくってどんどん頑張る。いや、特訓メニュー的には、それほど頑張ってはないかもしれないが……。そうして、またマナちゃんが誉めてくれる。
そんな感じの正のループで、俺の魔法技術は、どんどん進歩していった。
簡単な炎や肉体強化くらいなら、すんなりできるほどだ。マナちゃんのためなら、なんだってできる気がする。
俺の日課はゲームと、頑張らない魔法特訓になっていた。
それから一月程が経った……
突然、村の天候が大荒れになる。雨は徐々に強くなり、空はどんよりとし、風は強くなり、雷鳴が轟く。
すると、村の入り口に一人の男が現れた。
「我は、この地の領主ゴスペルである。村長ビブロスに用がある。直ちに出せ。」
雷鳴が強まる。村人たちに緊張が走った。
「は、私が村長のビブロスでありますが……」
「これは一体どう言うことであるか?」
領主ゴスペルは、険しい顔で問いかける。
「これと言いますと?」
「人々が、あまり働いてないではないか?我への信仰も少ないぞ」
「しかし、規定量の農作物は収めております。」
と村長は弱々しく反論する。
「それでは駄目なのだ!」
村の外れに雷が、轟音を立てて落ちた。
「我の信魔法は、各地の村人の信仰心によって成り立つ。しかし、この村の我への信仰心はどうしたことか、こんなにも低いぞ」
「そ、それは…」
村長は、青ざめた表情で言う
「村人は働き、我への信仰心と農作物を納める。我はその見返りに、天候の安定と、農作物の安定の信魔法を、行使する。それが契約であろう」
「そこまで詳しくは、知りませんでした。農作物を納めるだけでは駄目でしたか……」
「なぜこんなにも働かぬ、なぜこんなにも信仰心が低下した。なのに、なぜ農作物は納められるのか、言え」
「実は、神獣様が現れまして……」
「なに、神獣とな!」
「は、はい!実はうちの孫マナが神獣様を召喚しまして、それで……。」
「……我の前に連れてこい」
「は!」
マナちゃんと俺が、領主の前に連れて来られる。
「そなたがマナか……美しい」
「……はい。」
マナちゃんが緊張したように答える。
「で、その抱えてる猫が神獣と申すか?」
「はい。その通りでございます。」
緊張しているマナちゃんは見たくないな……。そう思いながら、俺は領主に言う。
「俺はワッセ。どうも神獣らしい」
「ほお、証拠はあるのか?」
「万物創造ができるぞ」
「!?そんな馬鹿な!!」
「ほれほれ」
俺はそう言いながら、鏡や、農作機、ゲーム機などを次々に創造していく。
「ついでに人化もできるぞ」
俺は神人化しながら、そう言った。
「……!?………そうか我には分かったぞ」
「分かってくれたか」
俺は一安心する。が……。
「貴様は悪魔だ。これはすべて幻である。我や村人を騙しおって!この悪魔め!」
「なっ!」
俺はビックリ。
「ち、違います。この子は、ワッセちゃんは、悪魔なんかじゃありません!」
「まあ否定するよなあ!悪魔召喚は大罪であるぞ。死罪もあり得る」
領主は激怒しながら、そう叫ぶ
「ええい、悪魔め我が葬ってくれよう!」