教皇暗殺
俺達は、大きな建物に入る。豪華なシャンデリア、赤いじゅうたん、高級そうなオブジェの数々。まるで別世界のようだ。
「よくぞいらっしゃられた。神獣様」
気品溢れる老人らしき人物が、俺に声をかける。
「教皇様、お連れしました。こちらが神獣様になります」
アルムは丁寧な口調でそう言った。
「うむ、ご苦労であった」
「あなたが教皇様か?」
「そうです、神獣様。心よりお待ちしておりました」
「なあ、教皇様と俺ってどっちが偉いんだ?」
俺はアルムに問いかける。
「うーん、難しいね…。どっちもそれなりに偉いとは思うけれど……」
アルムは曖昧に答えた。
「なら、お互いタメ語で良いかな? 教皇様。」
「分かった。そうしよう」
「この領主と暗殺者はどうなる?」
俺は二人の処遇を教皇に問いかける。
「領主は牢屋行き、暗殺者は尋問と言ったところか? もっともそれで、答えてくれるかは分からんが」
「ど、どうか教皇様、お助けを! こやつは悪魔でして……」
領主がそう言いかけた時、
「黙れ、黙れ。お前は神獣様に対し酷い事をした。その処罰は受けてもらう。」
「ひぃいい!」
領主は呆然としている。
「ところで領主、そなたは誰かの命令で動いたと言う訳ではあるまいな?」
「は、はい……しかし、何者かが私に神獣の事と、村人の信仰心が減っていることを伝えにきました」
「ほぉ、そやつの正体は分かるか?」
「い、いえ、黒いフードで全身を覆っていたもので」
領主は震えたような声で答える。
「そうか、なら良い。こやつを牢に連れていけ。」
「はっ!」
教皇の部下らしき者達が、領主を連れて行く。
「俺達をここに連れてきたのはどうしてだ?」
「一目会いたかったのと、神獣様のことを人々に伝えても良いかと聞きたかったからじゃ」
「人々に伝える?」
「昔より神獣様と言うのは、繁栄をもたらしたり、魔王の復活から守ってくれたりと良い噂があって、それを広めようと思っておったのじゃ」
「なるほど、俺にそんな噂が」
「後は、神獣様の事を快く思わぬ者の存在についても聞かせておこうと思っての」
「暗殺者みたいな奴か」
「うむ、魔法を絶対とする者らの中には、神獣様のような存在を厄介視するものもいてなあ」
「今回の暗殺者は瞬間移動の使い手でした。おそらく暗殺者の中でもかなりの手練れかと僕は思います」
アルムは相変わらず丁寧な口調で言う。
「やはり厄介な奴らに疎まわれているようだのお。」
「そんなに俺の存在は厄介なのか? 村長も技術がどうとかって言っていたが…」
「魔法ではなく、技術発達させるとこの世に災いが起こると言う思想だな。神獣様は技術発達させてしまったのか?」
「まぁ、村でちょっとな……」
俺は村でのゲーム機や農作機のことを思い出す……。
「ふむ、まあ神獣様なら問題ないとは思うが、魔法第一主義者の連中とってはかなり疎ましい話かもしれんのお」
「そ、そうなのか……」
「まあ安心してくれ。私の名において保護するから」
「それは助かる」
俺はホッと一安心した。
「この後はどうする?なんならここに住んでくれても構わんぞ」
「いやぁ村に戻ろうかと思ってる」
村でのんびりとゲームをしたいし……。
「それなら念のためアルムを護衛に付けておこう。良いか?アルム」
「はい、僕は構いません」
アルムは少し嬉しそうに答える。
「じゃあ、この辺で失礼するよ。また何かあったら呼んでくれ」
「うむ、分かった。神獣様の事を皆に報告しておく。」
俺達は飛行魔法を使って、村へと帰ることにした。今度は敵も襲ってくることなく、六時間程で村に着いた。
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「さてと明日にでも、皆に神獣様のことを伝えるとするか」
「それは困りますよ、教皇様」
「何奴!? ここは神聖なる場。無関係者は立ち入り禁止だぞ」
「教皇様がいけないのですぞ。あんなものの存在をお認めになって、公表までしようと言うのですから」
「ええい、兵はどうした! この者を捕まえろ!」
「兵ならぐっすり寝てますよ……そしてあなたも……。」
「き、貴様何をする……。ガッハ……」
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俺達は村で平穏な暮らしをしていた。子供達とゲームをしたり、簡単な魔法の訓練をしたりと。
しかし、その平穏はアルムの一言で覆ってしまった。
「え、教皇様が暗殺された? 神獣様がその主犯で、悪魔扱いだって!?」