最強の戦利品
俺達は敵の強さに愕然としていた。
俺とディアリーの連係攻撃でも倒せないなんて……。
「さあ行きますよ!」
敵が接近してくる。
俺は火炎を生成し、矢のような大群に変えて、敵にうち放つ。
しかし、敵の刃物にぶつかるや否や瞬間移動させられてしまい、無力化してしまう。
「おやおや、無駄な足掻きですね」
敵は余裕そうに俺達に近づいてくる。
「マナ、ワッセにやった強化魔法をアタシにやってくれ」
ディアリーがマナちゃんに力強く提案する。
そうか、俺でもディアリーと互角になれるくらいのパワーを出せるのだ。ディアリーに強化魔法を使えば、もしや勝てるかもしれない……。
「分かった。ウィース・ホルス」
マナちゃんがそう唱えると、ディアリーの周囲に光の粒子のような物が纏わりつく。
「おっしゃ!このアタシならいける!」
ディアリーは力強く拳を振るう。
ディアリーの前方の地面が抉れ、巨大な何かに削られたように吹き飛ぶ。
「この威力なら!やったか!?」
俺は、今度こそやったぞと言うような視線で敵の方を見た。
しかし、そこに敵は居なかった。
「ですから無駄ですと言ってるでしょう?」
遠くの方で敵の声が聞こえた。
「これでも駄目か!なら移動先もろとも攻撃してやる。」
俺は手をかざし、再び落雷を起こした。今度は敵が移動していたところを、複数箇所同時に攻撃してだ。
轟音が複数個同時に鳴る。土煙があちこちから巻き上がる。
「これなら、やったか?」
「ですから無駄ですと……。やれやれ」
敵は先程までとは全く別の場所に瞬間移動していた。
「事前にこの辺りには何カ所もキズを付けているのですよ。たかが数カ所を抑えた位、どうということはありません」
敵はそう言うと、俺に急接近し刃物を向けてきた。
俺は鉄の塊を創造しながら、後ろに下がる。鉄の塊は紙切れのように、あっさりと切られてしまう。
あの武器さえどうにかしないと……。
「大人しく負けを認めれば、痛みなく倒してあげますよ?」
「ふざけるな!誰がそんなことをするか!」
敵の提案に、ディアリーは激怒する。
「では、あなたから倒してあげましょうか!」
敵はそう言うと、物凄い勢いでディアリーに接近してくる。
ディアリーが拳を勢いよく振り、地形もろとも吹き飛ばそうとするが、あっさりと瞬間移動でかわされてしまう。
「どんなに強くても、当たらなければ意味はないんですよ!」
敵はそう言いながら、また接近を試みる。
「くそ!こっちを、見ろ!」
ディアリーの魅了攻撃が放たれるが、これも瞬間移動で無力化されてしまう。
「いい加減飽きましたよ、それ。見飽きはしませんけどね、ふふ」
やはり、あの武器をどうにかしないと、ダメージを与えられない
……ん? 武器をどうにかすれば良いのか!
俺は猫型になり、ある物の万物創造を試みた。
「ディアリー、もう一回魅了攻撃を頼む!」
俺がそう叫ぶと、
「分かった。けどこれ、恥ずかしいんだからな!」
とディアリーは応じてくれた。
「こっちを見ろ!」
ディアリーが魅了攻撃を試みる。
敵は一瞬動きが固まるが、瞬間移動で別の場所に行ってしまい、攻撃の届く範囲ではなかった。
「今だ!スイッチオン!」
俺は創造した電磁石を使ったのだ。敵の刃物が吸い寄せられてくる。敵は驚いた表情を浮かべるが、魅了の効果で何もできない。
「奪っちまえば、こっちのもんだな!」
俺は敵の武器を奪い取り自分の物にした。
「なっ…か、返せ!」
敵は狼狽しながら叫ぶ。
ディアリーはその隙をついて、敵の背後に回り込み、拳を一撃入れた。
「ガ、ガハッ」
敵は勢いよく吹き飛び、数百メートル位は吹き飛ばされたのではないかと思われるほどだ。
敵は地面に頭を擦り付けたまま、動かなくなっている。
この瞬間、俺たちの勝利は確定したのだった。
「やったな、なんとか勝てた」
と俺が言うと、
「いやぁ強敵だったよ。アタシがこんなに苦戦するなんて」
とディアリーが疲れきった表情で返事をした。
「こいつはどうする?」
俺は敵を指差して、皆に問いかけた。
「とりあえず縄で縛って、教皇様の元に連れて行こう。暗殺の依頼が誰からなのか気になるし」
アルムも戦いに疲れたような表情で言う。
「この瞬間移動の刃物なんだが、これはマナちゃんに渡しても良いかな?」
「え、私?」
マナちゃんは驚いたような表情を見せる。
「うん、サポート役のマナちゃんが瞬間移動で身を守りつつ、サポートしながら、隙を見て敵を切りつけるってのが良いんじゃないかなと思ってさ」
と俺は提案する。
「良いんじゃないかな?」
「アタシも賛成!マナの強化魔法は凄く頼りになるしな」
「分かったよ。私が持つね」
皆が賛同してくれたようだった。
また空を飛び直し、二、三時間が経っただろうか……。
遂に神聖ミヤオオ帝国に到着した。
いよいよ、教皇との対面の時である。何を言われるのかドキドキする。
そして、なぜ俺達が襲われたのかも気になるところだ。