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夢見るアイツと踊るオレ  作者: 小塚彩霧
夢見るアイツ
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第8話 非日常

 私の日常は非日常だった。

 二歳で覚醒して、ママが死んで、ずっとあの夢ばかり見ていた。ママの傍にいたくて。


 あの事故でママを亡くした後、伯父さん夫妻に引き取られた。伯父さんはママの兄。本当のパパは私が生まれる前に離婚したらしいけど、よく知らない。

 伯父さんはママにちょっと似ているかも。兄妹だから当たり前かもしれないけど。伯母さんは物腰が柔らかくて、おっとりした美人さん。伯父さん夫妻には息子がいて、私の一つ年上。お兄ちゃんはいつも私の世話を焼いてくれる。

 伯父さんたちのお陰で、人並みの生活をさせてもらっている。私が小さいときに引き取られているので、もしかしたら、私が『伯父さんたちが実の父母じゃない』と気付いていないと思っているかもしれない。お兄ちゃんももしかしたら、そもそも私が従妹だということを知らないのかもしれない。


 私はよく居眠りをしているけど、その分の勉強などはこっそり、夜中にやっていたりする。昼にちゃんと勉強して、夜にグッスリ眠ればよいのだけど、普通に眠る方法なんてもう忘れてしまった。寝ると大抵ドリームなので、あんまり疲れは取れない。それも相まって、長時間起きたままでいるのが難しい。


 ドリームは過去の事も未来の事も見る。自分に関する他愛のない日常の夢だったり、はたまたとんでもない大事件の夢だったりする。覚えていないほど幼い頃だったり、未来だったりすると、その記憶がないので、ドリームか普通の夢かわからなくなる。それでも、しばらく体験しているうちに見分けがつくようになる。ただ、ドリームを長く見ていると、今度は現実とドリームの区別がつかなくなってくる。


「大丈夫か?」


 突然グラッと大きな目眩が来て、支えのない方へ身体が傾いた。それを支えてくれたのが声の主。


「コウ……」


 薄れゆく意識の端でコウが心配そうに私の顔を覗き込んだのを見た。コウの腕の中にいる。そう思うと嬉しくて私の身体を委ねた。


「先生、巌が寝ました。保健室に行ってきます。」


 私を肩に担ぐようにして子供抱き。そんなに身長差も体重差もないコウだから、お姫様抱っこではないのは仕方がない。


「サヤ、夜はちゃんと寝ろよ。俺もガタイが良けりゃ、もうちょっとカッコ良く運んでやれるんだけど。」


 ふふ。まどろんだ夢と現実の間で笑う。私はコウが好き。実際に再会するより前からコウが好き。ドリームの中で出会って好きになった。


(私がコウを好きって言ったら、どうするかな?)


 ああ、ドリームでこの瞬間も見た。こうやってコウに抱きかかえられながら、告白したらどうなるかって考えてた。それから、しばらくして堪え切れなくなってコウに告白したけど、コウは何も答えてくれないの。もっと未来でも私はもう一度コウに告白する。そこの答えはいつも怖くて目覚めてしまって聞いたことがない。


 コウが傍にいてくれたら、ドリームを見なくても普通の人と同じ日常生活が送れるのではないかと淡い期待をしたけれど、結局、ドリームから離れられていない。

 ドリームではない現実の世界ではコウと仲良くなったけど、まだまだ何も進展していないし、ママを助ける方法も何一つ掴めていない。ドリームから離れるわけにはいかない。


 目を開けると傍にコウがいる。保健室の天井が見える。


(現実かしら、(ドリーム)かしら……)


 コウが私に毛布を掛け、声をかけてくる。


「俺、教室に戻るけど、あんまり眠りすぎるなよ。」

「コウ……」

「ん?」

「私が戻ってこなかったら、迎えに来て……」

「わかった。」


 最近、寝てる時間の方が長いなぁ。ドリームから戻ってこれなくなるのも時間の問題だろうか……。


珍しく沙夜視点。

たまには光視点以外の回もあると面白いかなーと思って書いてみました。

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