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夢見るアイツと踊るオレ  作者: 小塚彩霧
夢見るアイツ
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第5話 夢を見る

 明日の準備も終え、ベッドに入る。眠る前にグダグダととりとめのない事を考えるのが好きだ。

 花火大会での事故の事は全く覚えていない。二歳じゃ無理もないけど。でも、十二年経っても取材に来るくらい大惨事だったわけで。それに、あの死者の名前が気になって仕方がない。

 巌沙規。きっとサヤの縁者だと思う。母親かな?でも母親がいないって話は聞いたことないし、年齢的に叔母さんかな。伯母さんかもしれない。サヤが学校に来たら聞いてみようかな。でも、俺と同じで二歳じゃ何も覚えてないか。

 サヤといえば、アイツ、いつ起きるんだろ?ショーゴにサヤのことが好きかと聞かれたが、好きなのかな。嫌いじゃないし、世話焼きな性格だから気にかかるけど。顔は割と好みで髪の毛もサラサラだし。好きなのか?うーん。


◆◇◆


(あれ?またこの光景?)


 いつの間にか眠りに落ちた。昼間、サヤの病室で見た光景を今見ている。夢だってことはわかる。

 河川敷の土手の上の道で俺の前を若い女の人と浴衣姿の小さな女の子が歩いてる。今、気がついたけど、昼間の光景とちょっと違う。目線がかなり低い。俺と前を歩く小さな女の子は同じくらいの歳っぽい。二、三歳かな。

 夢の中で自分の思い通りに動けたりすることがあるけど、今日はできないっぽい。前を歩く二人の顔を見たいけど、早く歩けなくて追い付けない。

 夏祭りのようで、屋台の明かりが煌々として、行き交う人々や盆踊りの喧騒が聞こえる。進むにつれ、周りに人が増えてきた。周りの人が花火は何時から始まるのか等と話しているのが聞こえた。


(これ、花火大会の夢!?記憶なのか、想像なのか。)


 自分の意思で動けないのでわからないが、多分、これは既に迷子になっている。

 ひたすら前の女の子を追いかけて歩く俺。花火会場に近づいてきたのか、その辺りの土手の斜面に腰掛ける人が増えてきた。かなり奥の方まで進んだが、近すぎて人がまばらだ。


「近すぎて首が痛くなっちゃうかなぁ。まあいいか。」


 女の人がそう言って、女の子をだっこして斜面に腰掛けた。それを見た俺は、てててと近寄りその女の人の隣に座り、女の子の手を握った。


(おお、二歳の俺、大胆!)

「あれ?ボク、ひとりなの?迷子かな?」


 ううん、と首を振って来た方向を指差す俺。


「ママかパパがもう来るのかな?ここで待ってよっか?」


 とりあえず、静観するつもりらしい。


「サヤ、もうすぐ花火始まるからねー。ママと一緒にここで花火見るんだよ?」

「うん♪はなび♪きらきらー」


 かわいい笑顔で空いた手をヒラヒラ振る女の子。


(サヤだって!?ママだって!?)


 花火が始まる放送が流れ、音楽と共に大きな音をたてて打ち上げ花火が上がる。夜空に色とりどりの光が煌めき、二歳の俺とサヤは大きな音に驚きながらもキャッキャッと喜んでいる。


(このあと、花火の打ち上げに失敗して、暴発するんだよな……)


 そう思ったタイミングで、花火が低いところで炸裂し、打ち上げ場所からの怒号と一緒に、火の玉や花火の破片がこちらに向かって降ってくる。

 人混みで思うように逃げられない状況で人々が悲鳴を上げる。サヤの母親が俺とサヤの二人を抱え、火の玉から逃げるように走り出した。


(俺がいなかったらもう少し早く走れた?)


 いたたまれない気持ちでいっぱいになったその時、大き目の破片が飛んでくるのがサヤの母親の肩越しに見えた。

 避けて!そんな俺の願いも虚しく、無情にも彼女の背中に命中した。彼女はガハッと肺の中の空気を吐き出し、その場に倒れこんだ。俺達は彼女の身体の陰でその災難から守られていた。


「ママ」


 サヤが小さな声で母親を呼ぶ。ああ、いつか見た夢の女の子の声だ。あの夢、このシーンだったんだ。


「大丈夫。」


 彼女は俺達を抱き締めたまま、その言葉を最後に意識を失う。この事故でサヤの母親が死ぬんだ。


『私、あの人を助けたいの。』


 サヤが助けたかったのは母親だったんだな。でも、十二年も前に死んだ人を助けるのは無理だ。

 これが俺の想像で作られた単なる夢なのか、二歳の俺の記憶がよみがえったものなのかわからない。こんな夢を見たからって明日からも何も変わらない。


記憶なのか夢なのか。

予知夢の過去版と思ってください。

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