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夢見るアイツと踊るオレ  作者: 小塚彩霧
閑話
34/111

閑話その2 一方その頃~寺島さん

 光がDANCEへ戻り、あれこれと大変な目に遭っているその頃。


◆◇◆


「はー、やれやれ。やっと東京に戻れる。」


 車を運転して、中央道で東京に戻る。

 今日は朝から八千代を乗せて東京から山梨まで。朝イチの講義に間に合うように送り届けるため、今日は朝五時出勤だった。東京に着く頃には午後になっている。


「このまま、車だけ置いたら退庁しようかな。安田さん、昼飯、一緒にどうですか?」

「そうですね。俺も今日はこの後、非番ですから。」


 助手席に乗る公安の安田さんも朝から付き合わされて可哀想に。八千代がしばらくDANCEにいるので、その間は護衛をしなくて良い。


「そういや、昨日のデート、かわいかったですよ。コウ君とサヤちゃん。」

「そうか、そりゃ良かった。まだ中学生ですもんね。」

「ずっと二人で手を繋いでて、かき氷とか食べて、河川敷で二人くっついて座って花火見て。」

「へぇ。初々しいねぇ。」

「それに引き換え俺は。一人で花火……。『リア充爆発しろ』と思いました。」

「ははは……。安田さんの仕事だとなかなかプライベートも制約がありそうですしね。」

「そうなんですよね。憧れて入った職業とはいえ、秘密が多すぎて。」


◆◇◆


 安田さんと虎ノ門駅近くの洋食屋に入った。時折、吉田部長や尾崎と食べに来るが、安田さんは初めてだと思う。


「いただきまーす!」


 俺は煮込みハンバーグ、安田さんはサービスランチとナポリタンを頼んだ。安田さんの物凄い食べっぷりに驚いた。かつては自分も水泳部だったし、毎日信じられない量を掃除機のように平らげていたけれども。


「良い食べっぷりですね。」

「ふぉーでふか?」


 安田さんは口の中いっぱいに頬張ったまま返事をした。


「いいですよ、口の中に入ってるときに返事しなくても。ゆっくり食べて。」


 いい歳の大人に失礼だが、少年のようで可愛らしく、思わず笑ってしまった。安田さんはそれに気付かず食べ続けている。八千代も今、DANCEでトレーニングをしているから、そのうちこれくらい食べるようになるかもしれない。自分の息子もまだ二歳だが、十数年経ってティーンエイジャーになったら、これくらい食べるようになるかもしれない。娘は四歳だか、大きくなってもここまでは食べてほしくはないなぁ……。


「ごちそうさまでした!」

「早っ!?安田さん、二人分、もう平らげちゃったの?」

「いやー、ここのメシ、うまいですね。ナポリタンもケチャップが甘めで美味しいし、エビフライとクリームコロッケと唐揚げっていう欲張りメニュー!最高でした!」

「急いで食べるからちょっと待って。」

「いいですよ。自分のペースで食べてください。待ってる間に上へメールで報告入れるんで。」


◆◇◆


 ランチの後、店の前で安田さんと別れた。

 妻にカエルのスタンプのメッセージをする。

 家に着く頃には娘も幼稚園から帰ってきているかな?何か新しい絵本でもお土産にしようか?

 最寄り駅の駅前にある本屋に立ち寄り、絵本を二冊買った。


「ただいまー。」

「おかえりー。」


 玄関ドアを開けて家に入ると、リビングから妻の那奈(なな)が出てきた。それに続いて子供達も俺に向かって駆けてくる。


「パパ、おかえりー!」

「ぱぱ!」

「ただいま、陽奈(ひな)(なる)!」


 だっこだっこと足元にまとわりつく子供達を那奈が引き剥がす。


「パパは今、外から帰ってきてバイ菌だらけでーす!キレイキレイしてから遊ぼうね!」

「良い子だなー。すぐキレイキレイするからリビングで待っててね。」


 鞄を置き、背広を玄関のハンガーに掛けると洗面所でうがい手洗いをする。鞄を書斎に、背広は寝室のハンガーに掛け直し、部屋着のTシャツとチノパンに着替えた。


「おまたせー。ほら、お土産だよ。」

「わーい!あ、お姫様だ!読んで!!」

「これ、ぶっぶー。」

「じゃあ、順番。どっちからにしようかなー?」


 子供達は我先にと俺の胡座の膝の上に座ろうとする。


「ひなが先!」

「なるもー!」

「あれ?どっちがおりこうさんかな??」


 陽奈が先に膝から降りて、ちょんと正座した。続いて成も陽奈の真似をしてちょんと正座する。


「うわぁ、今日はどっちもおりこうさんだな!この前は成からだったから、今日は陽奈からにしようかな?いつもお姉ちゃんを頑張ってるもんね。」

「うん!」

「なるもー!!」

「うーん、いっぺんにできないから、じゅんばんこね。成のは後で、二回読んであげるから。お返事は?」

「はーい!」

「陽奈も成もかわいいなー。ほら、最初は陽奈だよ。」

「うん!」


 陽奈が膝の上に乗ると、絵本を開く。『親指姫』だ。


「むかーしむかし、あるところに……」


前半は健啖家安田さん(公彦君)、後半は子煩悩寺島さんの回でした。

寺島さんイチオシです。

眼鏡の尾崎さんももっと出番があると良いのになー。

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