第22話 我が家
自宅に帰って、丸一日泥のように眠った。
DANCEの医師から薬が処方されていて、寝る前に飲むようにとのことだった。多分、テストの時に見た夢が原因だろう。そのとき見たドリームがどんな内容だったのか、ほとんど覚えていないのだが、あんまり夢見がよくなかった気がする。テスト後、翌朝までグッスリというのも不自然だし、今日も久々の自宅とはいえ、こんなに眠れるのもおかしい。だから、あの薬はドリームを見ないようにする睡眠薬なのだと思う。
「流石に寝過ぎだな。目玉が溶けそう。」
のそっとベッドから起き、一階に降りる。リビングには家族全員揃っていた。そういえば、お盆休みの時期だったな。
「お、光。久しぶりだな。よく眠れたか?」
ソファに座ってテレビを見ていた父さんがリビングに入ってきた俺に声をかけた。
「うん。寝過ぎて目玉溶けそう。」
ダイニングに座ってお茶を飲んでいた母さんが立ち上がる。
「お腹空かない?なんか食べる?こっち来て座りなよ。」
「うん……。そのお煎餅食べたい。」
「お茶淹れるわ。」
ダイニングの俺の席に座り、菓子盆に乗った煎餅を一枚手に取った。口に運ぶとパリと乾いた音がし、香ばしい香りが広がった。
(煎餅ってこんなに美味しかったっけ?)
DANCEでも三食きっちり食べていたし、食事はどれも美味しかったけれど、小遣いがなかったのもあって間食は全くしなかった。
「お兄ちゃん、ドリーマー研修ってどんなだった?」
「んー、守秘義務があるから言えないー。」
「えー、ケチんぼだー!」
「んー、そうだなー、テストと名前のつくもの全部やった。」
「え!テスト!」
「そうだよ。国語数学英語理科社会、音楽美術技術家庭に保健体育。ホワイトパズルもやったし、性格診断みたいなのから、色覚や音感テストも。身体測定、健康診断、体力テスト。あと、法律も覚えないといけないんだ。」
「すご、私には無理!友達に自慢しよっと!」
「だから、ダメだって。喋ったら死刑なんだって。」
「え……。」
望が絶句する。
死刑というのは言い過ぎだが、寺島さんのあの感じだったら、事故を装って始末されかねない。
ドリーマー自体が少ないのだから、情報の出所がどこか、すぐにバレてしまうだろう。
「ごめんな。恰好の話のネタなんだけど、マジで国家機密だから。人の命かかってるからな。」
「……わかった。」
母さんがみんなにお茶を淹れ、ダイニングの自分の席に座る。
「光が家を出るのはちょっと寂しいけど、ちょっと早まっただけだと思えば。」
「いずれは光も望も独立していくのだしな、母さん。老後の予行演習みたいなもんだな。」
「そう!光が生活するためのお金の心配をしてたんだけど、光の住む部屋の家賃は要らないと!!さらに手当ても出るし!本当に至れり尽くせりね!!」
父さんと母さんはちょっとハイになっているらしい。
そういうところが我が家っぽいけども。
「ということで、明日から引っ越し準備、頑張りなさいね!」
切り替えが早いのがうちの家族の長所かもな。
久し振りの我が家でのんびり過ごした。
他愛もない日常。
話が進みませんでした。
嵐の前の静けさ?かもしれない(^_^;)




