4月26日 夜 咲良の過去
「くぅぅぅぅぅ…ゔぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…うぐぐぐぐぐぐぐ…」
「るっせぇ…」
「あなたよく寝れるわね、私は寝不足になるわ。」
「もう慣れました。」
「いや、お前は吸血鬼一族だから関係なくね?」
「私はもあなた達人間と同じ育て方をされたのよ、夜寝ても昼間寝ても大丈夫よ。」
あの後、夕飯を食べた4人は咲良の用意した布団へ入り、睡眠に入ったが、午後十時頃から星乃のイビキにより寝れない三人であった。
「う~ん…じゃあ何か話すか。」
武瑠は咲良とクレアに提案をする。
「それは構いませんが…武瑠様、一体何を話すのです?」
咲良は武瑠の意見に賛成したが、話のネタに対して質問をすると。
「それだったら私、一つ気になってることがあるの。」
と、珍しくクレアが質問をした、その言葉に武瑠は驚いた反応をしながら
「クレアが珍しいな…何が知りたいんだ?」
と、武瑠は物珍しそうに質問した。
「……咲良さん、いえ『世界の覇者』あなたはどうして星乃唯一の元で暮らそうと思ったの??どうして世界の頂点を目指したの?」
「お、おいクレア…」
「そして、どうして星乃唯一を『兄さん』と呼んでいるの?」
まるで攻めるかのように質問をするクレアを武瑠は止めようとするが
「……いつかは言うことであろうことです、分かりました、全て話します…まず始めに、私は亜人種です。」
「えぇ、それは薄々気付いていたわ、人間の動きでは無かったものね、星乃唯一も人間なのだけどね。」
「俺も前から知ってたな。」
二人は咲良の質問に知っていると首を縦に頷く。
「………私は『狐神族』の生き残りです。」
「き!狐神族!?そんな!その種族は既に絶滅したのじゃないの!?」
「その証拠に…ぅぅぅっ!!」
すると咲良の頭にぴょこん!と効果音が入りそうな耳の生え方で耳が頭から生えた。
「ほ、本物なのか…と言なると、『狐神族』は妖術使いじゃないの?あなたは妖術使わないの?」
「使えますが、今は使わないようにしているんです。」
その言葉を聞いたクレアは、ちらっと熟睡している星乃を見てこう言った。
「使わなくなった経緯を教えてはくれないかしら?」
「そうですね、いつかは話す内容です、話します、始まりは多分私がこの家にホームステイに行った時の話です。」
~~
「ここが、星乃家の家…中々和風と言うものなのね。」
その当時私は、ただの孤児だった、一人と言う壁を乗り越え、私は今の今まで、私は一人で生きてきた。
「では私たちはこの辺で失礼します。」
私を運んでくれた人が一礼をして車に戻り発車し、帰ってしまった。
「………入りましょう…」
私は事前に届けられた合鍵を使い、戸を開け、玄関に入ろうとしたときだった。
「」
「ぇえ!?いやぁあああああああああああ!!?」
一人の男性の死体があった、私は今まで数多の生きた者を殺したのだが、出会い頭初見の場所でまさか人の死体を見てしまうなんて……
「ぅ……ぅぅ…」
「っ!!大丈夫ですか!?」
まだ息はある!私はかけより、その男性を抱えるが、直ぐに異変に気づく。
「肌が……」
その肌は蒼白く、とても冷たかった…まるで血が無いような症状に見えた。
「す……すま、な…け…ど…居間……まで、頼める…………かな?」
「は、はい!!」
それが、後に私の尊敬する星乃唯一本人とのはじめての出会いだった。
~~
「うわぁ…流石に玄関オープン人の死体はきついわ」
「私は大丈夫だけど、同じ立場になったら私も驚くかもしれないわね。」
「正直今思うと、兄さんがこんな田舎にすむ理由がわかったかもしれません。」
「そんなことよりも、その続き、話してくれないか?」
「分かりました。」
~~
「す、すまんな、来てくれたのに。」
「い、いえ、心配なさらず、今はゆっくり休んでください。」
本当に大丈夫なのかこと人…と思う私がそこにいた。
「いやぁ…休めば治るもんじゃなくてね、これは持病さ『赤血球減少症』聞いたこと無いかな?」
確か、数千万人に一人なるかならないかと言う、不治の病、基本的に亜人種から出る魔素が原因とされている。
「えぇ、ですがそうなると一つ疑問が浮上します、何故私を引き受けてくれたのですか?」
「ん?う~ん……何だろうね…ホームステイ一覧を見たとき、写真越しでも分かる、暗い顔をしてるように見えたから…かな?」
「何をいっているのかわかりません。」
「だろうな、俺も分からないや。」
変わってる人…私はその時、そんな見方をしていた…今は違うけれど。
~~
「星乃は本当に星乃だな…」
と一言呟く武瑠
「あの性格はその時からだったのね…」
とため息を着くクレア
「そんな兄さんがまさしく鬼になったときがあったんです。」
その時の咲良の目は怯えている様な、懐かしむような…そんな目をしていた。
~~
「お休み。」
「お休みなさい、星乃さん。」
その日の夜、私は彼の目の前で意識を手放した。
「______」
その後の出来事にも知らずに。
「…………」
星乃は分かっていた、彼女は狙われている、だから引き取ったと言うことを、だから引き取り、ここで暮らせたら良いのだと思ったのだが…
「……狙わせてたまるかよ。」
星乃は布団から立ち上がり、隠してあった真刀を取り出し、寝室から出ていった。
「_____」
私は、ついていくことにした、バレないように。
「」
ゆっくり、ゆっくり…と近づき、後ろをついていく、妖術を使いながら。
「??」
「っっ!!?」
「……気のせいか?」
星乃さんは後ろを振り向いたのだ、私の使った妖術は誰も見れない、気配も遮断した筈…だが振り向いたのだ、確かに、確実に振り向いた。
「今はそんなことは良い、今は…前の敵だ………!!」
星乃さんは玄関に着き、一呼吸し、玄関を開ける。
「………お前ら…だよな、俺等の家を見回ってたのは。」
そこにいたのは、大量の亜人種だった、しかも私は見たことがある、あの人達は…
「我等が神『桜様』を返せ!」
私のことを崇拝した狂信者だった、
「…だからあいつはホームステイをしたのか…良ぉく分かった。」
星乃さんは刀を抜き、刀を狂信者に向けて、こう言った。
「あいつは神なんかじゃねぇ!あいつは俺の大切な家族の一人なんだ!!」
「っっ……家族…」
その言葉は私の心に刺さった、星乃さんは…あの人は…私のことを、今確かに家族…家族と言ってくれた、全く知らない赤の他人の私を、あの人は…あの人は!!
「家族に手を出す奴は、一人残らず殺してやる、どんな汚れ仕事でも引き付けてやる、嫌われても俺は守り続けてやる、もう失うのは嫌なんだ!!」
その言葉に私は感じた、この人も…私みたいに一人だったんだ…と。
~~
「星乃も言うねぇ…」
「言ったときどう思ったの?」
「正直言ってドキッとしました。」
「その後は全員?」
「えぇ、」
~~
「はぁ…はぁ…はぁ…」
……鬼だった、あの人は恐ろしい速さと攻撃力を有していたのだ、初日の症状がまるで演技でもしているのかの様に感じてしまう程だった…
「………居るんだろ、来なさい。」
「」
やはり気付いていた様だ、私は妖術を解き、星乃さんの前に姿を表した。
「うわっ!?本当に居た!」
「今その反応はおかしくないですか?」
言動と行動が噛み合ってない星乃さんに正直、呆れることしかできない私だったが
「どうして?」
「ん?どうして…とは?」
「どうして…家族と呼んでくれたんですか?」
「えっ!聞いてたの?恥ずかしいなぁ…」
下を向き、恥ずかしそうにする星乃さんだが、優しい顔でこう言った。
「一緒に暮らして、飯食って、笑顔を交わすことが出来れば、それはもう家族なんじゃねぇ…かな?」
「っ!!星乃……さん……」
今までにない感情だった、私の中の何かがこみ上げ、目から何かが溢れ落ちる、それを涙と言うのだろう。
「約束……してやる、俺は、お前よりも……先に…死な……ねぇ…お前…を、一人に……しな………い……」
「っっっ!兄さん!!」
彼は倒れた、笑顔のまま、私は兄さんと呼びながらあわてて駆け寄るが、彼は笑顔で眠っていた、そして気付く。
____嗚呼、家族とはこう言うものなのか……
~2~
「っはは、星乃も星乃だな。」
「笑顔で寝るなんて、全く、どれだけ嬉しかったのかしら。」
「その後から私は兄さんと呼ぶことにしました。」
「なる程、じゃああと『世界の覇者』と言う称号のことだけど、一つ疑問が出たわ、何故星乃唯一は名を馳せなかったのか、よ。」
一つの疑問、確かに咲良は強い覇者と呼ばれてもおかしくないだろう、だがその覇者よりも遥か上に居るであろう星乃、学園で初めて聞く名前だった、何故星乃唯一は名を馳せなかったのか、それがクレアの一つの疑問だった。
「そうですね………恐らくあんなことが起きなければ、兄さんが『世界の覇者』と呼ばれていたのかもですね…話します、すべてを。」
~~
「おい咲良、これ出てみないか?」
「世界剣豪決定戦……ですか?」
その日の稽古を終えた後、星乃唯一もとい兄さんは、一枚の書類を渡して来た、内容としては東京体育館が行われる剣豪の世界大会である。
「内容としては真剣に稽古をしているもの、礼儀作法ができる者だからな、腕試しといこうぜ、今何処まで行けるのか、やってみないか?」
「で、ですが今は流派を学んでいるでは…」
「え?こんなのは流派じゃないただの基礎と基本だ。」
「………へ?」
私は驚いた、内容は本当に辛く苦しい物だった…が、これを基礎基本と言った瞬間、私は兄さんのただならぬ努力をしてしたのだろう感じられた。
「だがそれを全て習得出来た所は評価する点だな、お前の今の実力によっては家の流派を教える人材か、見せてくれ。」
「………勿論、兄さんも出ますよね?」
「……………んん?」
正直私は兄さんと本気で戦いたい、本気で戦って本当の実力を知りたい、絶対出場させてやる!
「出ますよね?」
「え?俺は」
「出ますよね?」
「出ないよ」
「出・ま・す・よ・ね・?」
「………出てやるよ。」
~~
「まさかの脅迫と来たか」
「あなた、手を選ばないタイプね?」
「何を言いますか、私は誘っただけですよ。」
「誘った…ねぇ?」
「だが、星乃の実力ががあれば決勝処か、『最優秀賞』だってなれたはずだ、何故星乃は決勝にでれなかったんだ?何か理由があるんだろ?」
「『最優秀賞』にも入っていないのだから…大会で何があったの?」
「………今でも忘れない、あいつだけはあの世に行っても許さない」
~~
「勝負あり、勝者、星乃咲良!」
『期待の大物星乃咲良!決勝戦進出です!!』
1回戦から準決勝まで、着々と勝ち進んできた私、後は兄さんが勝ってくれれば兄さんと!
『おっと?第二コートでは…星乃さんが居ませんね…』
「……え?」
隣の試合会場を見ると、そこには、一人の男が立っていただけであって、兄さんは居なかった。
『おっと…星乃さんが…どうやら階段から転落し、戦えないようです!』
「勝負あり、勝者、山風空牙!」
『惜しい終わり方!星乃咲良の兄に当たる星乃唯一、準決勝で敗退!そして三位決定戦も出場出来ない程重症と言うことなので、星乃選手は四位になってしまいました。』
「……兄さん!!」
私は急いで医務室へ向かった、星乃さんは私に約束した、先に死なないと、家族でいると。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!失いたくない、失いたくない失いたくない失いたくない!
「兄さん!!」
私は医務室に付き、扉を開けると。
「あ゛っ…咲……良?」
「に…兄さん……その腕……」
兄さんの左腕は、真っ青になっており、身体中包帯が巻かれており……正直見たくなかった。
「っははは…情けない所を見せちまったな…この通り、俺の左腕は複雑骨折しちまってやがる………もう、戦えないそうだ。」
「っっっ………」
「決勝の相手は勝ちを求めてる、言わば廃人だ、咲良…お前だけは、絶対に飲み込まれるなよ。」
その時、私は悔しかった。
あの強い兄さんが?誰よりも努力して、努力して、努力し続けて今を生きてる私の誇りの兄さんが?戦えない?
不正行為何かで収まる話なんかじゃない…最愛の人の、未来に語り継がれるであろう人生もぶっ壊されたのだから。
私のなかでねっとりとしたどす黒い何かが体の中でぐるぐると回っている、恐らく『怒り』と言うものなのだろうか…いや、それとまた別の『何か』なのだろう
「………悔しくないの?」
…………誰だ
「……悔しいねそりゃあ、咲良と戦えないし、まさか不正行為でやられちまうとはな。」
「恨まないの?憎まないの?怒らないの?」
……………………誰だよ
「憎まないし恨まないし怒らないさ、だって現に俺は生きてるんだから、もう武の道を歩めないかもしれないけど、俺は生きている、素晴らしいことじゃないか。」
「……どうして?どうしてそんなに優しくできるの?」
…………………………………誰なんだよ!!!
「簡単な話だ…俺が弱かった、だから負けたんだ。」
「っっっっっ!!!?」
……………弱………かった…………?
「」
「……咲良?どうした?」
「…なんでもありません、決勝…勝ちます。」
「咲良、おいで。」
兄さんは私を招集する、なので私は兄さんに従うことにした。
「どうしました…っきゃっ!」
兄さんは私を撫でて来た。
「」
体格、身長、身体能力…全てにおいて私は勝っている…が、兄さんには、努力量、純粋な鍛練、優しさ…これだけは勝てる気がしない…私はそう思いながら撫でられるのを堪能する。
「………抱っこ。」
「へ?」
私は撫でられることだけでは満足出来ず、兄さんにハグを要請する。
「……はぁ、甘えん坊だな。」
「へ、へへへぇ…」
そう言いながらも右腕だけで優しく抱きしてめくれる兄さん。
「良し!咲良!やってこい!」
そう言い、兄さんは私の頭をポンと置き、笑顔で私に応援をしてくれた…負けるわけには行かない…。
『さぁ、遂に決勝戦。双方準備が出来たようです。』
真ん中にある舞台の西門と東門の扉が開く、そこから咲良と空牙が現れた。
『まずは西門、山風空牙選手、こちらは剣の天才と呼ばれ、その実腕は確か、一撃で確実に仕留めに行きます。』
西門から、一人の男性が入ってくる、体格は良くも悪くもない体付きをして、腰には八十センチ程はあろう、とても長い木刀が納刀されていた。
『続いては東門、星乃咲良選手、こちらは、兄の唯一選手がいたのですが、何者かによって大怪我を負い、現在捜査中です。』
そして私が入る、周りは真剣な顔をしているように見えるが、内心は当時、殺意しかなかったのだろう、私はその当時、その男を殺すことしか考えていなかったのだから。
「双方定位置へ。」
審判が指示を出す、私とその男は定位置へと歩き、互いに向き合う。
「では、構えて…」
指示が出され、私と男は木刀を出し、構える。
「…………始め!!」
火蓋が落とされる、直ぐ様私は仕留めようと攻撃を仕けてみるが、受け止められる。
「」
「っ!」
咲良は察した、この男は強い、そう確信し、
「っ、へぇ…」
空牙も察した、この人は一筋縄では行かない…と。
「「」」
二人は距離を作る、そしてまた、見つめ会う時間が作られ、周りは、しん…と静まり返り、空気は息が詰まりそうになる程重く、苦しい空間と化していた。
「……!!!」
その近郊を破ったのは私だった、兄さんは言っていた。
「こう言う相手には、威圧感を!!」
「っっ!?」
相手は驚き、戸惑いながらも守りを固め、咲良の攻撃を受け止める。
「っ!へぇ、君…強いね。」
「当たり前です、これも兄さんのお陰なんですから。」
木刀を交えながら咲良はこう言った。
「星乃…………ぁあ、あの唯一って人か。」
「そうだ、兄さんは」
「まさか挨拶って言ったら、まるで馬鹿と対面しているようだったよ、重症を負わせるのも容易だったさ。」
「……は?」
「っっっっっ!!!?」
『おっと空牙選手、距離を置きました。』
『何かに怯えているのでしょうか?』
「」
空牙はビビっていた、正直言って、星乃唯一の妹なのだから、きっと彼女も手加減するのだろう、と…だが違った、彼女は全力だった、確実に自分を殺そうと襲い掛かる猛獣のように見えたのだから。
「っ!!」
咲良はぶちギレていた、実のところ、咲良は始め、少しばかり手加減をしていたが、対面した相手は武を修練している身の筈なのに、不正行為に手を出す…そして
『弱かった』と言う、目標であり最愛(家族的な意味)の人に、一番聞きたくなかった言葉を言わせたのだから。
『おっと咲良選手、動きを止めました』
『何かあったのでしょうか?』
「っ!!貰った!」
空牙は構え、咲良に攻撃を仕掛ける為床を蹴り、咲良に近付くが…空牙は知らない、咲良の本気を。
空牙は知らない、咲良の逆鱗に触れたことを。
「」
咲良は怒り狂った…一人で呆然と立ち、一人で自分の理性と怒りをぶつけ合っていたが…
「てめぇかぁああああああああああああ!!!!」
怒り、殺意、憎しみ等の混ざった物が、理性をぶっ壊した。
「っがぁっ!?」
その咲良の一撃は、空牙のがら空きの横腹に急所直撃。
『咲良選手の一撃!強烈だぁあ!』
「ぐ…かはっ…何が…」
空牙は急な出来事で全く理解できなかったが、分かったことは一つだけ
「うぅ…うぅ…うぅ…うぅ…」
立ち会っていた少女の背景なく、ただのバケモノと対面しているようだった。
「っ!彼を殺す気か……!」
審判が気付いたとき既に遅し、空牙は数メートル吹き飛び、その場に悶え込んでいた、恐らく肋骨を三、四本折ったのだろう。
「殺す…殺す!貴様だけは!殺してやる!」
咲良は確実に殺すつもりだった…が、とある人間に渾身と言える一撃を受け止められてしまった。
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
「っ!兄…さん…?」
『おっと!兄が妹の一撃を止めたぁ!』
『しかも逆手持ちですね。』
兄さん唯一本人である、星乃は利き手ではない右腕を使い逆手持ちで木刀を持っており、咲良の攻撃を受け止めていた。
「辞めろ咲良…!武道は人を殺すための物じゃない!」
「けどその男は!兄さんの人生をぶち壊したんだよ!!良いのそれで兄さんは!!」
咲良は兄さんに攻撃を受け止められながら話続ける、周りはしんと静まり返り、負傷した空牙を見ていた。
「え? マジで?」「確かに、あいつがあの人と会ってる所見たぞ俺」「信じられない…」「非人道的だ…」「武人辞めちまえ!」
「そうだそうだ!」「やっちまえ!!」「咲良の兄貴さんの代わりに復讐してやれぇえ!」「止めなくて良いぞお!」
周りの野次は咲良が空牙に処刑コールが会場内を飛ぶ。
「ほら、皆兄さんの味方です…ね?兄さん…だから、そこを退いてください。」
木刀を強く握り、下を向いている…とても憎んでいるのだろう…だが、兄さんは退くことはなかった。
「駄目だ、俺はお前も、あいつも守らないといけない、今後の人生に汚れなんて要らないから。」
「……納得…出来ません。」
「」
咲良は今暴走している、理由は明白だった、俺と戦えないこと…俺が怪我をおってしまったこと…そして、俺が自身を『弱い』と言ったこと…ならば、その一つを解消してやれば…あるいは。
「成る程、じゃあ…」
右手で木刀を持ち、握り具合を確認し、咲良にこう言う、
「咲良…勝負しよう。」
「っ!!?」
驚くのも無理はない、基本的に咲良が申し出るのだから、兄さんが来るのはとてもではないが、珍しいことなのだ。
「俺が勝ったら殺すのは辞めろ、手を出すな…勝ったら好きにしても構わない。」
「………条件は?」
「双方、攻撃を入るか否か…だ、寸止めも良しとする。」
兄さんは振り向き、空牙を連れ出した審判員に近づき、一礼する。
「審判…申し訳ない、勝手な試合をすることになって…だが!ここで武道の道を2つも途絶えるのは、いけないことだから…どうか…どうかこの、落ちぶれた武人の我儘を聞いてくれ…頼む!」
沈黙が広がる、審判員は、真面目に考えているようで、下を向いて考えたり、他の審判員や、特等席で見ていた人達にも話かけていた…結果は。
「良いだろう、私は君のその敬意を評する、双方、定位置へ。」
『おっと指示が出ました、試合を行うようです!』
周りからは
「がんばれぇ!」「負けんじゃねぇぞ兄貴!」「おい!テメぇの兄貴じゃねぇだろ!」「咲良さんもがんばれぇ!」
など、周りは盛り上がっていた時、兄さんは語り始め。
「さぁ皆の衆!ここからは一人の勇敢な女剣士対、一人の薄汚れた道化の戦いにございます!」
張られた声に、周りは少しどよめくも、兄さんのその発言で会場はさらに盛り上がる、そして語り続ける。
「武道とは!『己の身体と心を磨きあげ、弱き者を守り、救うものなり!』」
「「「然り!然り!然りぃいいいいい!」」」
その通り_という意味の『然り』のコールが飛ぶ。
「流派とは!『流儀の差から現れるもの!しかし!流派は伝承する最大の歴史であり、宝なり!』」
「「「然り!然り!然りぃいいいいい!」」」
「ではこの戦いはなんだ!?簡単だ!正義と正義のぶつかり合いだ!どうか見届けて欲しい!戦いの…最後を!!」
「「「…………ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
盛り上がる、周りは感動と歓声に包まれた。
「双方構えて!」
「兄さん…私はあなたを倒します!」
「……いや、俺が勝つ。」
「__始め!」
それはまさにゼロコンマ、私は、硬直し、その場にじっ…と立っていた。
「なっ…」
目の前から兄さんが消えていた…いや違う…左だ!
「ぐっ!?ぅうう!!!」
「流石に守れるか…」
正直危なかった、もう少し反応に遅くなったら、私は負けていただろう。
「成長したな咲良…だが負けないぞ俺は!」
再び兄さんは直進、木刀の間合いに入った直後だった。
「っ___???」
木刀が…消えた?違う、手離しただけ!
「っ!!」
私はこの間合いは守れないと直感的に察し、後に下がる、と同時に、兄さんは鋭い切り上げを空振るが、攻撃を見て分かったことがある。
今まで本気を出していなかったことが直ぐに分かった。
今までの一太刀はこれ程鋭い攻撃は無かった、威圧感も、動きも、全て桁外れに速くなっていた。
「流石だ咲良…基礎基本を身に付けただけあるな。」
だが兄さんは元々左利き、右手のみを使って互角………その時、私と兄さんとの実力の差が…
だが負けるわけにはいかない!兄さんは絶対苦しい思いをする筈、後悔する…無念は…私が晴らす!
「私は負けない!!!」
「っ!!?」
兄さんが怯んだ!?
「っ__」
兄さんが私との真剣勝負を嫌がった?もしかして兄さん………気迫に押された?
もしかしたら………勝てるかもしれない!!
「っ_」
油断した…気迫で負けてしまった…まだまだ咲良は未熟だと思っていた…そんなことはなかった。
もう既に強くなってるじゃないか、もう自立できているじゃないか、俺の手は不必要じゃないか。
未熟だったのは……『自分自身』だったのか………
____咲良が急接近して来る、仕留めに来た様だ…受け入れるのが良いのかな…………
___いや駄目だ!ここで咲良に負けたら俺は!俺は家族の人生を壊してしまう!勝つんだ!勝つんだ!!
「」
『おっと唯一選手、片手居合いの構えだ!』
___________勝つんだ!!!
「…………『居合・抜刀』!!!」
その一閃は、誰もが驚愕した…その一閃は
「っ………負け………ました。」
一瞬で離れた間合いを無くし、咲良の首に木刀を当てていたのだから。
「____俺の…勝だ。」
「___俺の…勝だ。」
兄さんは私の首に木刀を当てていた、速すぎる…私は何も見えなかった、その時、兄さんは渡しに近づき、こういった。
「咲良…本当に、強くなったな…未熟だったのは…俺だった様だ。」
「そ、そんなことありません!兄さんは、私の尊敬に値する人です!」
そんな弟子と師匠の会話を交わした後、兄さんは私にとあることを言い出した。
「……咲良、俺さ…まだ続けてみようと思う…武道。」
「っ!!」
その言葉は、遠回しの感謝だった…兄さんは基本的に感謝を表すことが苦手で、何時も言い回して伝えるのだ
「じゃあ…」
「………うん、その…なんだ………ありがと……な?」
「っっっ!!! 兄さん!!!」
私はとても嬉しく、兄さんに飛び掛かり抱きついた。
「待って!ちょ!死ぬ死ぬ死ぬ!!!」
「嫌!!私は離しません!」
「まっ!?ちょ!も、もう…………」
余りの力の強さに、唯一はピクリと痙攣して止まった後、泡を吹いて気絶してしまった。
「兄さん!!!!!?」
その後、救急搬送された兄さんは病院の診断で、左腕の粉砕骨折と、肺の破裂と言う、普通なら死んでいるような状態だったと言う。
~~
「とまぁ、こんな…………って寝てますし。」
咲良が話し終わっている頃には、武瑠は静かに熟睡していた。
「良いのよ、あいつが一番頑張ってたんだからね。」
そう言いながらクレアは武瑠に布団を掛けてやる。
「そうだ、クレア様…私は二つ、大きな嘘をついています。」
「え? 嘘?」
急に話を吹っ掛けてきた、しかも嘘をついていると…だがあの話をしている時、彼女は新建そのものだった、嘘をついていると思えない…
「……嘘をついているっていう嘘?」
「私はそこまでひねくれたことはしません…」
と、苦笑いしながら良い、星乃の頭を撫でながら言った。
「私…実は今も妖術を使っているんです。」
「………え?」
「不思議に思いませんでしたか?どうして私が今まで狐神族とバレなかったのか。」
苑言葉に「あっ…」と言葉が溢れる。
確かに良く良く考えて見れば、彼女は何故我々に気付かれずに居た?狂信者、あいつらは恐らく何かを見たからなのだろう…ではなんだ?何を見た?
「お考えの様ですね、では答えをお見せしましょう。」
「え?あっ、嘘?」
『これが、私の本来の姿です、クレア様。』
「………咲良あなた、その姿は………」
その姿は正しく狐、それも尾は九本、狐神の中の最強クラスの戦闘力を持つ『九尾族』その中の更に上、つまり頂点に立つ者…その名前は
「あなたまさか……『玉藻之前』と言うの?」
『はい、その通りです。』
玉藻之前、玉藻御前とも呼ばれるそれは、凶悪な力を持ち、妖術で人を操ることすら可能と言う、周りから恐れられている存在である。
彼女、星乃咲良から出るものは恐ろしい程の霊力と威圧感であり、姿は白い毛でおおわれた巨大な狐である。
『そしてもう一つ、私は名前も偽名です、本名は御魂と言います。』
巨大な狐の姿から語られる物は端から見ればたいしたことないものだが、実際はお目にかかれない姿で話を聞くクレアにとってとても貴重な時間だったと言う。
「とまぁ、こんな感じです。」
そしめ軽い爆発と共に、狐は居なくなり、元の咲良に戻っていた。
「クレア様約束してください、これは誰にも言わないでください、余り知られたくないので。」
咲良が念押しする、当たり前だ、消滅した家系がまだ残っていたましてや神格クラスが居るとしったら確実に引き離されてしまうのだろう。
「もちろん、約束するわ。」
「ありがとうございますクレア様、そろそろ寝ましょうか。」
「そうね、ふわぁ~あ…お休みなさい。」
「お休みなさいです。」
そう言い、四人は結果的に十時三十分頃に就寝できたのであった。




