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刀使いは、今日ものんびり学園生活を楽しみながら修行します。  作者: 永怛 みなと
1幕 最弱と呼ばれる男
5/6

4月26日 午後 星乃の真の強さ

「と、止めないと…」

 直ぐに何かを理解したのか、星乃は木刀を杖代わりにして、玄関へと向かった。

「ごっ…ぐっぅううぅ…」

 クレアには何が起きたのか、さっぱり分からなかった、気付いたときには玄関から遠い所に飛ばされ、背中と腹部に今までに感じたことの無い強烈な痛みが身体を襲っていた。

「な…何…が……」

 しかし、()()()()()、一瞬の出来事過ぎて全く分からなかったが、一瞬、ほんの僅かな視界に移ったものが見えた。

「はぁ、はぁ、今の動き……()()()か!?」

 間違いない、今の動きは人の動きが出来るものではない、確実に亜人種の動きだった。

「だが何故だ、何故この家に…まさか!」

 身体の激痛が和らいだのを確認すると、血の鎌を造り上げ、体制を整え付近を確認する…が

「……何処に居る、」

 何処にも居ない、攻撃を考えるに確実に近くに居るはず、だが何処にも居ないし気配もない。

「………。」

 だからこそ()()になる、落ち着いて()()を感知することを優先する。

「っ………そこか!」

 クレアが察知した流れ、それは()()である。

「………何のようだ?」

 クレアは鎌を構えて相手を見る、相手はクレアよりも小さく、歳もクレアよりも若いように見える。

「へぇ…気配を消してたつもりだったんだけどねぇ」

 彼女はニヤリと口角を上げて見下すようにクレアを見る。

「当たり前よ、あなたの殺気、直ぐにわかるもの。」

 こちらのクレアもニヤリと笑い、見下す彼女を見つめる。

「………」

「………………」

「………殺るのか?」

「本性出したわね、『世界の覇者(ワールド・ワン)』」

 二人の瞳と瞳が見つめ会い、まるで龍と虎が、あるいは下克上を申し込むかの様……

「「っっっっ!!!!」」

 そして二人が急接近し力と力のぶつかりが始まるっ!!と誰もが思う直後だった。

「さぁああああくらぁああああああああああ!!!」

「「っっっっっっ!!!??!?」」

 クレアと彼女は二人が直撃する直前で今まで聞いたことの無い声が聞こえ、振り向いたところには、武瑠におぶられた星乃がいた、そして再び怒鳴り始めた。

咲良(さくら)ぁああ!!何やってんだ!いつも言ってんだろうが!人を見た目で手を出すなっつってんだろうがぁああ!」

「ご、ごめんなさぁああああああああい!!!!」

 彼女はボロボロと涙を流しながら土下座する、先程の恐ろしい殺気は感じなくなり、親に怒られる子供の様に見えた。

「クレアさん、申し訳無い(うち)の妹が急に手ぇ出すような真似して、今日咲良が修学旅行から帰ってくる日だったんだ。」

「そう、私は大丈夫よ、今回は許してあげるなんたってあの『世界の覇者(ワールド・ワン)』と手合わせ出来たんだから。」

「其れは良かった、まぁ立ち話もあれだ、居間で話をしよう。」

 器が広いな、優しい性格で助かった、と思う星乃であった。





×××××






「クレア様、先程は申し訳ありません、どうぞ。」

「ありがとう、いただくわ……これが緑茶(グリーン・ティー)?中々良い味をしてるじゃない。」

「武瑠、助かったよ、お前に合鍵渡して無かったら今頃ここがラグナログやラグナログになる所だったよ。」

「実際に起きそうで怖い。」

 現在午後4時頃、四人は雑談をしていた。

「と言うか、クレアさん、門限は大丈夫なんですか?」

 星乃がクレアに質問すると、クレアはこう言った。

「ふんっ!本当は帰りたい所だけど、あなたには悪いことをしたもの、今日はここに居るわ。」

「俺も。」

 実際武瑠は星乃の家に来る=お泊まりする、的な癖が出来てしまった。

「あ、そうなのか…はぁ…咲良、布団用意してくれないか?」

「分かりました。」

 咲良は一言そう言い、居間から出ていった。

「……本当に咲良ちゃんって星乃が居るとしおらしいと言うか、可愛くなると言うか…」

 武瑠は星乃にそう言うと、星乃は「そうなんだよなぁ…」とため息をしながら色々話始めた。

「実際の所今現状で止められるのは咲良自身、俺、そして学校の友達と数少ない…正直俺も不安なんだ、俺の病気で数度死にかけたこともある、正直言って何時(いつ)死ぬか分からない。」

「星乃……」

 星乃の今まで見たことの無い表情、弱々しい発言に、あの武瑠は少したじろぐ。

「だから、今は…今だけでもいい、最後の、そして最愛の妹の願い事を叶えてやりたいんだ。」

「」

「おいクレア…まさかお前()()()()()()?」

「ばっ!そんなわけなじゃない!」

 クレアは案外良い奴なのか…と星乃は心の中で呟き。

「妹のために心配してくれてありがとうございます。」

 星乃はクレアに礼をした。



「兄さん、布団終わりました。」

 会話が終わった後数分して咲良が居間に来た。

「咲良ありがと…っと、輸血も終わったみたいだな、武瑠輸血パックは後幾つある?」

「5つはあるぞ、何でそんなことを聞く、ってお前……()()やるのか?」

「久々にやらないとな、身体もなまっちゃうよ…咲良、木刀を2本持ってきてくれ、俺は着替えて道場に行ってる、()()()()やるぞ。」

 そう言った瞬間、咲良の目はまるで好奇心旺盛な子犬のような感じで反応しながら。

「分かりました!私も着替えてすぐ行きます!」

 と言い、咲良はダッシュで居間から出ていった。

「さ、いくぞ道場。」

 机に引っ掻けてあった袋を持ち、星乃は立ち上がった。

「面白いもんが見れるから俺もいくけど、クレアさんはどうすんだ?」

 武瑠も立ち上がり、クレアに質問すると。

「『世界の覇者(ワールド・ワン)』の実力を見たわね、見取り稽古と言うやつよ。」

 と言いながら立ち上がるクレアさん。

((素直じゃないなぁ))


「うしっと…後は準備体操をっと…」

 道着に着替えた星乃はその服装のまま準備体操を始めた。

「そう言えば、一本稽古(いっぽんげいこ)って何?」

 座布団に正座してるクレアが胡座をかく武瑠に質問した。

「ルールみたいなのがあってな、まず相手に技の本数を事前に教えるんだ、勿論多段攻撃だったらその攻撃は1になるぞ。」

「つまり、一つの技が6回攻撃で、6回って言ったら、」

「うん、36回攻撃になるってことだな。」

 うわえぐいなぁ…と顔に反応が見えるクレア。

「後は何処から攻撃しても大丈夫だ、範囲はこの道場内だけど、木刀だから関係無いね、ちなみに、攻める側の説明はしたけど受ける側も説明しておくね。」

「どうせあれでしょ?攻撃を全て避ける様に木刀で自分を守って当たった回数を確認、次に攻め側と受け側を変えて当てた数が多い人の勝ち………みたいな感じてしょ?」

「…………お前心読めるの?」

「まさか、ただの勘よ。」

 などと話していると、外からドタドタと聞こえ、道場の中へ入ってきた。

「失礼します!!」

「うん、元気でよろしい。」

 一礼し、元気よく入ってきた咲良も同様に、道着になり、二本の木刀を持っていた。

「うし、じゃあまずは咲良から、何本で仕留める?」

「はい!6本でお願いします!」

「仕留めるって、」

 仕留めると言う言葉に思わずツッコミをいれそうになるクレアだったが、なんとなく分かってしまった。

「もしかして本気で()りあうってこと?」

「ん?そうだよ。」

 何で武瑠(こいつ)当たり前だろ?見たいに言ってるんだ、唯一無二の友達死ぬよ?と、思うクレアだったが、その考えは直ぐに崩壊されるのであった。

「6本ね、来い!」

「はい!星乃咲良!行きます!」

 咲良は両手で木刀を掴み、臨戦態勢に入るが、圧巻の一言だった。

「っ……圧が伝わってくる…」

「あぁ、あれが星乃の実力だ、見ておけよ。」

「」

 あまりの圧巻に自身の(プライド)を完全放棄したクレアは無言でジッ…と見ていた。

「っ!!!」

「」

 それは(まばた)きするほどのゼロコンマ、一瞬にして間合いが詰まり、咲良は星乃に木刀を振るっていたが

「甘い、速さだけで一本とれると思うな。」

 しかし星乃は咲良の攻撃を木刀で止める、それも()()()()の状態で。

「まだです!行きます!『氷狼(ひょうろう)』!!」

 咲良は距離を取り、(かすみ)と言う構えを取る。

「あの技、詠唱が無い…」

「当たり前だ、あれは自己技(オリジナル)なんだから。」

 霞の構えをした咲良の木刀は徐々に凍りつき、白い冷気を纏い始め、背後に氷の狼が現れた。

「なる程、氷の狼で…良い技じゃないか…」

 星乃は始めてみる技に評価する、そして木刀を両手で持ち、型をとる。

「星乃は…下段か。」

 武瑠の言葉にある疑問が芽生えたクレアは、武瑠にある質問をした。

「下段に何か意味があるの?」

 構えとして、剣道でも、中段が主であり、攻撃特化であり、攻めて攻めて攻めまくる上段が主なのだが、基本的に下段を使うことは少ないと言えるだろう。

「星乃の主な型は中段でな、上段は見たこと無いんだが、下段になった星乃も大概だぞ。」

 クレアは武瑠の真剣な顔で言う言葉を信じ、稽古を見ることにした。

「「」」

 二人の間に無音の空間が広がる、咲良は霞の構えのまま、星乃をじっ…と見つめ、星乃は下段を維持し、目を瞑る。

「っ!!!」

 先に動いたのは咲良だった、咲良は霞の型を維持したまま星乃に接近を仕掛ける。

「…すぅ…はぁ…すぅ…はぁ……すぅぅううううううう…」

 しかし星乃はそれでも目を瞑り、下段を構え、大きく息を吸い込む。

「………!!」

 咲良が攻撃する瞬間だった、星乃は目を見開き、咲良の攻撃に備えるかの如く、木刀を軽く握りしめ、八相の構えをとる。

「あの構えは…武瑠?」

「…っ!!まずいクレア!今すぐ防御に徹しろ!!()()()()ぞ!!」

 クレアは武瑠の発言に対して理解が出来なかったが、武瑠は大掛かりな防御である超合金硬盾(ライオット・シェル)を構える。

「っ!!『我が眷族よ!其身を呈して我を守れ!!』」

 武瑠の本気(ガチ)防御に危機を感じ、指を噛みちぎり、血を出して眷族を召喚し、大量の蝙蝠(コウモリ)で壁を造りあげる。

「『氷狼(ひょうろう)吹鬼(ふぶき)』!!!」

 咲良は星乃の間合に入った直後、冷気の纏った木刀を星乃に突き付け、咲良の背後に居る氷狼(ひょうろう)も襲いかかる瞬間だった。

「『蛍火・爆炎』!!!」

 八相の構えから繰り出された木刀を振り下ろした、その木刀は

「………綺麗。」

「馬鹿野郎!しっかり構えろ!!」

 武瑠の忠告は遅かったかもしれない、道場の床に木刀を叩き付けた直後、薄緑の光は強力な光を発し、超爆発を起こした。

「どわぁああああああ!!?」

「ぐっ!!ぅぅぅううううううう!!」

 強力な光の輝きと、爆発が襲うのだが、何故か熱だけは全く()()()()、むしろ暖かく、心地よい温もりが駆け巡った。

「おさまったの?」

「あぁ、そして目の前にあるのがその現状だ。」

「こ、これは……」

 目の前にある光景、それは、尻もちを付く咲良に星乃が木刀を突き付けている状態だった。

「…………私の敗けです、兄さん。」

「危ない危ない…もう少し反応に遅れてたら俺は負けてたよ、着々と成長していく妹を見ると俺は誇らしいな、この調子で精進することだ。」

「はい!!」

 その光景と発言をボロボロになった超合金硬盾(ライオット・シェル)越しで見ていた武瑠と影へと変わっていく眷族を見守るクレア。

「……もしかしてこの家族頭おかしいの?」

「まだ星乃の攻撃を見てからにしろそれは。」

 超合金硬盾(ライオット・シェル)を外へ放り投げ、ふたたび道場に、座る。

「さて、次は俺の番だが……()()()()()()、これが最後だから頑張れよ。」

「っ、はい!!」

 星乃はそう言うと、下段の構えてはなく、中段の構えをとる。

「次の攻撃見たければ瞬き厳禁だ、気を付けな。」

「は?嫌々無理に決まっているであろう。」

 と、会話をしていた二人を無視し、星乃は集中した。

「………っっっ!!!!」

 その集中力は、殺意にも捉えられ、会話をしていた二人は星乃を見る、星乃は集中していた。

「「」」

 道場はしん…と静まる、聞こえるのは風の音と呼吸と。

「っ!!!」

 木刀を()()()()だけだった。

「ぁ…あっ…」

 咲良も警戒していた、だが捉えられなかった、なにも見えなかった。

「ふぅ…我、神風の如く…」

 星乃は静かにそう呟き、木刀を構え、納刀し、咲良の頬を軽くペチペチ叩く、

「おい、咲良、咲良ぁ~?おーい。」

 咲良を我に戻す。

「………さ、流石です兄さん!!」

 咲良は全く悔しがらず、尊敬の目を星乃に飛ばす。

「す、すっげぇ……」

「………悔しいけれどなにも見えなかったわ……」

 武瑠とクレアからは驚愕と屈辱感が涌き上がった。

「っとと、そろそろ夕餉(ゆうげ)の時間だ、俺は外の井戸で身体を洗う、咲良は風呂で身体を流してくれ、すまないが武瑠、材料買ってきてくれ、クレアさんももし大丈夫だったら咲良と一緒に風呂に入ってくれないか?」

「わかった、パパっと買ってくるわ。」

 武瑠はそう言い、道場から出ていった。

「私も構わないわ、咲良も大丈夫かしら?」

「…はい。」

 そう言い咲良はクレア一緒に風呂へ向かった。


「全く…星乃唯一は本当に何なのよ!!」

「…クレア様、今の稽古を見てどう思いましたか?」

「そうねぇ…どうしてあれだけの強さがあるのに戦わないのかって思ったわ。」

「……クレア様は…兄さんの真の強さを知らないのですね……()()()()()()()()()、兄さんがどうしてあれだけ強いのか…見ればわかると思います。」

 クレアと咲良は引き返し、道場の入り口からちらっと中を覗く。

「っ!…っ!…っ!…っ!…っ!…っ!」

 星乃は木刀を振っていた、呼吸の音は聞こえない代わりに、木刀を振る音がする。

「兄さんは誰よりも努力する人なんです…誰にもばれないように負けない様に…一人で努力してるんです。」

「」

 クレアは星乃の真剣な顔を見る、だが、クレアも真剣に見つめている。

「クレア様?」

「……じゃない…」

「え?」

 クレアは手をギュッ…と握り、手から血がポタポタと床へ垂れ落ちていた。

「馬鹿にしていた私がばっかみたいじゃない…馬鹿にしていた私が情けなく感じるわ。」

「……クレア様…」

 その当時のクレアの顔は悔しそうな顔でもあり、羨ましそうにも見えた。

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