4月24日 初めて助けたあの娘は…
「ってな訳よ!絶対あの子俺に惚れたって!そう思うだろ?」
「どういう訳だよ…テンション高いなら何かと思ったら…また女の子の話か、ストーカーとっ捕まえたぐらいで良い気になるな…」
「いや少しぐらい期待させろよ!」
「させないぞ俺は、させてたまるか。」
二人が話している、一人はテンションが少し高めの男子、もう一人は机にうつ伏せて、その男子に向ってツッコミをするテンションが少し低めの男子、この二人がいる学校『国立亜人種学園』と言う、世にも珍しい共同学校。
星歴____年、世界中に、ある空間が現れた…
その空間には、アニメ、漫画などで良く登場する魔物や亜人種などが暮らしていた、最初は国も敵視したものの、少子化が進むこの国、我々世界はこの亜人種達と子供を育むことを計画した。
結果は___成功した、とあるカップルが、新たな子供を妊娠したとの報告が届いた………らしい、それにより国はその異世界人との『共同生活平等条約』と言う条約を結び、数年後のこの国では、数多くの亜人種が共に暮らしている。
そしてここ『国立亜人種学園』こそ、亜人種が異種間交流として、また我々人間も異種間交流を目的として建てられた学び場である。
「そういやさ…お前何時もだるそうにしてるよな…あれは治らないのか??」
机にうつ伏せている生徒に話しかける。
「ん…俺は赤血球減少症だ、たぶん治らん。」
「魔素でやられたのか…どうして発症するんだろうな?」
『赤血球減少症』とは、名前の通り、血液内の赤血球が人よりも一時的に少なくなり、たまに体調を崩し、貧血気味になることがある、しかし定期的に休憩をしていれば症状は回復する、原因として出されているのは、亜人種世界の空気中に漂う『魔素』と呼ばれる粒子が原因だそうだ。
「はぁ…全く、これじゃあ大会に参加できないよ…」
「剣道部部長が呆れるわ。」
「今は部長じゃない、ただの帰宅部だ。」
「それが一番駄目なやつじゃ…」
と、うつ伏せになっている生徒にダメ出しをすると、彼は何かを思い出したのか「あっ…そう言えば…」と言い、話し始めた。
「前部活の後輩に、『部長!今の部長がやる気無さ過ぎて皆さん困り果ててるんです!お願いです!どうか戻ってきて下さい!』って言われた。」
「確かに今の剣道部は部長がだらだらしすぎて指示が通らなくての悪循環らしいぞ?」
「でも行かないし、人の事を当たり前のように裏切る人間は嫌いだし信じたくもない…作法を知らぬのかあいつらは…」
「でもお前…『防衛武装』は刀なんだな。」
「……それしか取り柄が無いからだ。」
そして我々人類、亜人種にはある義務が告げられている、と言うものの、テロ対策と言うことで一人一つ、自身の身を守る為の武器『防衛武装』を所持することを義務付けられた。
基本的に皆初心者の為か、皆警棒を持つ者ばかりだが、専門経験があり、その分野の武装を許可されたい者は、その証明書を役所に渡し、許可証を貰えば、直ぐにでも武装が出来る。
それでもし無くしたら…等の不安がある人は、警察署へ行き、許可証の保険を取ってもらうことにより、無くしても、警察署で再発行して貰える、どっかのナンバーだが、だからこそセキュリティは固い。
ちなみに二人の場合、テンションが少し高い男子生徒、名前を『帝 武瑠』の場合、何処ぞの南国での銃経験があり、高速射撃から放たれる射撃の精密性は、国も認める人権と言うことで、銃の所持を許されている。
そして、学園の中でもずば抜けてイケメンと言う、男には欲しいステイタスも保持しており、その為か、ラブコールは亜人種の女の子までも引きつけてしまう程だ。
一方もう一人の生徒の場合、名前を『星乃 唯一』の場合、簡単な話である、剣道の経験であるため、刀の許可を貰っているが、周りの人は、星乃が剣術を使っている所を見たことがないと言う。
そこには説があり「楽勝だから」「あまり見せたくないから」そして一番は「弱い、または元々が無いから」の説が濃厚である。
また、武瑠の親友と言う所もあり、女子からは恨まれるも、武瑠に嫌われたくないと言うことで、裏でいじめをするので、武瑠はそれに気付いたり気付かなかったり。
「いつになったらお前の剣術を見れるんだ?俺は。」
「見せたくないな…親友であるお前にも…戦うことは…あんまり好きじゃないんだぜ?」
少し笑いながら星乃は武瑠に微笑みかけ、机から立ち上がり
「さ、今日はもう帰ろう、武瑠はどうする?」
「俺は少し残るよ、銃のメンテしないといけないからさ。」
「そっか…龍子ちゃんに告白するんだな。」
「な、何故それを!?」
龍子ちゃんとは、この学園に居る人間の中でのアイドル的存在であり、武瑠と同じく銃を使う、割とパワフルな女の子、最近の噂だと好きな人が出来たとかどうとか。
「応援してる…助けてくれた恩人として、俺のただ一人の親友として…な。」
「星乃…お前は相変わらずだな…じゃあな!」
「あぁ、またな。」
武瑠は元気よく教室から出て行き、残りは星乃唯一だけとなった。
「さて…っと、帰るかな。」
星乃は立ち上がり、背中に背負ってる刀にバッグをかけて、立ち上がり、教室を出た…が。
「ゔぇっ…」
グンッと引っ張られる感覚と共に、刀が教室の扉に引っかかったのだ、肋骨にめり込み、感じたことの無い痛みに星乃はその場に縮こまる。
「い…だぁぁぁ…」
涙をちょちょ切らせながら立ち上がり、胸を押さえ込みながら立ち、教室から立ち去った。
「う〜ん…背中持ちの方が手もすくし、何よりかっこいいんだが…腰持ちにするかなぁ…」
持ち方を変え、教室から出て、学校から出て、下校した。
「やってしまった…まさか『ミスターバーガー』のモンスターバーガーが半額で買うことができるということで調子に乗って3つ買ってました…しかもよりによって一つは亜人種専用の物ときた…不味くはないんだが血なまぐさいからなぁ…」
一人話をして、周りから不審がられていた時、ふと路地裏に気配を感じ、すぐそこにあったゴミ箱に隠れ様子を見ると。
「あの子は…誰だか分からんけど…言い寄られてるな…」
星乃が見た光景は、大人しそうな女の子が、いかにも柄の悪そうな男や、これもまさに不良に見える男、合計5人が言い寄っていた。
「良いじゃんよぉ…なぁ?」
「一緒に夜を楽しもうぜ?」
「こっちも警察来られるのも困るしさ?」
「こっちにもバレる前に来てくれないかなぁ?」
「お金あげるからさ。」
「こ…困ります…」
言い寄られて困るのかな…と普通の人は思うだろう…星乃もその一人だが、星乃には秘策があった。
「頼むぜ、スマホのポリス!」
そう言い、『警察サイレン mp4』と表示されているボタンをおす、すると再生されるのは、警察のサイレン音だった。
「やべぇ警察だ!」「逃げろ逃げろ!」
と言い、5人のチンピラ共は走り去って行き、残りは星乃と、全く知らない女の子が残った。
「………あなたが、助けてくれたの?」
「………ん。」
声をかけられたのか?と思い、星乃は女の子の前に行きこう言った。
「こ、こう言う所はあんまり寄らない方が良い…つまんない助言かもしれないけど…ね。」
「」
反応が薄いので、直ぐにその場から立ち去ることに決めた星乃である。
「あ、これ……あれ?どっちだっけ…これかな?はい、あげる。」
「あ…ありが…とう?」
「それじゃあね。」
「」
星乃は速足で路地裏を抜けて、家に向かった。
「あ〜焦った…女の子と面向き合うの…得意じゃないんだよね…そうだ、食べちゃおっと…亜人種用だと思うけ……あ、やば、あの子に亜人種用のバーガー渡しちゃった…」
と言い「まぁいっか」と、男では言ってはいけないような発言をして家に無事帰宅した。
「……余計なことを…」
私は今回の獲物を取り逃した、このまま他の人間を捕まえるのも手だが、両親を心配させないように家に帰ることをした。
「帰ったわ。」
「帰ったか、獲物は、どれだけ取った?」
「予定では18だったのだけど、13だったわ。」
そう言うと私の父は「ふむ…」と考えた後、私に追求をした。
「お前の予定が食い違うとは…一体何が起きた?」
「一人の人間に要らぬ心配をかけられ、5人取り逃しました。」
「その人間を獲物にすれば良かっただろう。」
「最初は私もその予定だったのですが…無理でした…その人間の男に勝てる想像が…どんな手を打っても…獲物にすることが…出来ませんでした。」
すると父は「ふぅむ…」と少し考えたあと、真剣な顔で私に
「………その男…危険やもしれん…その男をどんな手を打っても構わない…最善は殺ることだ。」
「…わかっております我々吸血鬼の名にかけて。」
そう……これは我々吸血鬼一族の宿命…そう私は思っていた。
________________次の日
「おはよ、武瑠…と、龍子ちゃん。」
「星乃おはよぉ~!」
「おはようございます。」
楽しそうに挨拶をする武瑠と、よそよそしく挨拶をする龍子ちゃん、どうやら告白は成功したようだ。
「そっかぁ…二人共、おめでと。」
「星乃さんまで言わないでください!」
と、左肩を思いっきり強打される。
「いっだぁ!」
オーバーなリアクションを取りながら、新たな登校メンバーの龍子ちゃんを連れて学園の校門に入った時だった。
「おい、クレア様だ!」「クレア様…いつ見てもお美しい…」「クレア様!」「クレア様!」
と、そこらにいるモブ達(星乃もそこまで変わらない)が一人の女の子に集まり始める。
「ぉお?クレア様じゃあないかあれは!」
武瑠は目を輝かせ。
「武瑠さん?」
武瑠の行動に嫉妬と言う物が芽生えた龍子ちゃんは武瑠の横腹に肘打ちを放ち、「グゴッ!?」と悶える武瑠。
「クレア様って…誰なの?」
素の表情で質問してみる、すると龍子ちゃんが。
「簡単に言えば私のお友達…なのかな?クラスが同じだし、私の隣の席で、こまってたから助けてあげたら…ってのが成り行きでよく登校するようになったの、でもクレアちゃん…誰か待ってるのかな…」
「いや、俺達には関係ない話です…よっと、早く学校で食券も買いたいんで。」
「武瑠さんは泡吹いて気絶してますが、大丈夫ですよね?」
「うん大丈夫じゃないけど…俺的には可愛い龍子ちゃんに対しての反応があれだから食らっても仕方ない。」
「__________ッッ!」
武瑠を背負った星乃と、星乃の無意識に言った口説き言葉により赤くなり、星乃の左肩を叩きながらロッカーへ行こうとした時だった。
「星乃!星乃唯一は何処!」
呼ばれた瞬間、周りはざわめきながら星乃をジロジロ見つめる生徒たち。
「今俺呼ばれた?」
「そうね…でもどうしてかしら…」
『龍子ちゃん…知らないふりしていこう。』
「ふ、腹話術…わかったわ。」
そう言い、他人行儀で通り抜けようとするが、肩をガッと掴まれてしまった。
「……はぁ…何のようです?」
星乃は諦め、クレアと面向き合い、話すことにした。
「あなたにこれを。」
「これは…何なに『私、クレア・ヴラドは…貴殿星乃唯一との決闘を申し込む』は?」
書いていることが全く理解出来ず、クレアをじっと見て
「………ドッキリ?」
「違うわよ!決闘よ決闘!」
「決闘って…俺と?」
「そうよ、学園長からも許可は貰ったわ、後はあなただけよ。」
しかし正直だるい…何故って…朝から『赤血球減少症』の症状が出たのだ、しかも朝食の準備中にである。
そこから更に二人暮らしだが、その一人は修学旅行と言う最悪な展開だった為態々武瑠にSOSのメールを送り、バス停までおぶさって貰ったのだ…その間まで爆睡してたから体力はそれなりに回復したけど…今戦うのは正直無理だ。
「ぇえ…」
「『ぇえ』って言うな!」
「はぁ…」
「『はぁ』って言うな!」
「うわぁ…」
「『うわぁ』って言うな!」
「俺保健室で輸血したいんだけど…」
「後ででも良いだろ!」
「俺は赤血球減少症だ、定期的に輸血か睡眠とかをやらないと…」
「赤血球減少症って…そんなのまだあったんだ。」
一瞬イラッと来たが、その時ふと、入学したときに貰った決闘についてのプリントのある一文字が浮かび上がった。
「あ、確か決闘する場合って…授業無くなるんだっけ?」
「そうね、決闘と言う名の見取り授業になるから授業は無くなるわね。」
「授業がなくなるんなら話は別です…分かりました…承ります…ですがその前に一つ。」
「なにかしら?」
「輸血した後でも良いですか?」
割りと真剣な顔で星乃はクレアに質問した。
「………はぁ…分かったわ、決闘は9時からよ、2時間もあれば大丈夫でしょ?」
「……だるいっすけど…了解です、失礼しますね。」
そう言い星乃は保健室に向かいながらこう呟いた。
「なんで面倒ごとに巻き込まれるんだか…俺は。」