壱.イケメンと癒し要員
目を覚ますと、壮大な草原が広がっていた。
そよそよと暖かい風が、草を揺らして、それにつれて草もなびく。
とても幻想的な光景だ。————とある二点を除けば。
まず一つ。謎のイケメンが俺の隣に立って俺を見つめてくること。
そんな見つめられると、なんもしてねーのに照れんだけど・・・てか見つめてくるのやめてくんねェかな。
二つ、透き通った水色の、スライム状の生物・・・だと思われるもの。
そいつが俺の手に触れ、すりすりとすり寄ってくるではないか。
・・・スライムってたしか、ゲームあるあるの序盤の序盤。雑魚伽羅だったよな。
俺の手にすり寄り、みゅっみゅっ!と鳴くスライムはなんだか可愛かった。
両手でスライムを持ち上げてみる。
「みゅっ・・・?」
・・・おぉ、すごい。プルプルしてる・・・本物のスライムみたいだな
そんでもって、不思議そうに見つめてくるのがほんっとうに可愛い。心底可愛い。
あーダメだペットにしたいぃぃぃっ
「ペットになんて、できませんよ」
「・・・っは?」
突然、俺を見つめていたイケメン野郎が話しかけてきた。
・・・どっかで聞いたことある声だな。忘れたけど
やけに透き通った声で、眼で、俺を見つめてくる。
離した言葉なんてさっきの一言だ。
・・・何がしたいんだ、こいつ
喋らないイケメン野郎に少々のいら立ちが募る。
「・・・・・・なにがしてェんだよ」
「・・・なに、と言われても。・・・・・・あぁそうだ、自己紹介を忘れていましたね。私はアルム=ランツと申します。碧ヰ 巳影様のナビゲーター及びサポーターでございます。」
「ナビ、ゲーター・・・?」
なんだこいつ。電波くん?
「電波ではございません。正真正銘の魔能力でございます。」
「・・・やっぱ電波だ」
魔能力ってなんだよ、電波ちゃんの言うセリフだろそれ。
なんとなくこいつは危ない気がして、一歩後ずさる。
「こいつ、ではなくアルム=ランツです。」
「待て、お前もしかして心読める系か?」
さっきから口に出してないことを突いてくるし。
「はい。中級魔法《以心伝心》を使用し、巳影様の心情を覗いております。」
あーこれダメなやつだなんだ此奴怖い
[怖い、と言われましても。この世界では常識ですゆえ]
っだから・・・もういいわ疲れるこれ
「とりあえず、信じる。このスライムも生きてるみたいだしな・・・」
「みゅっ!」
スライムの頭?を撫でると嬉しそうに一つ鳴く。
やっぱかわいい・・・癒し要員決定だな。
・・・視線がうざい。
なに、アルムも撫でられたいわけ
[はい。]
いや素直か。
「はぁ、屈め。手ェ届かねェから」
「はい。」
少し背中を丸め、俺の手が届く位置まで屈んだアルムの頭をやさしく撫でてやる。
うおっ、髪サラサラ・・・撫で心地最高じゃんかこれ
アルムもどことなく嬉しそうだし、何かあるたび撫でてやるか。(決して俺が撫でたいわけじゃない)
詳しい話はあとにして、俺はアルムともっとなでろと鳴くスライムをしばらく撫で続けた。