なな。再びの千晶さん
短いです。
千晶さんは家庭科部に所属している。萌さんも一緒だ。今日は部活はお休みである。ではどこにいるかと言えばだね。
なんとダブルデートしていたりする。しかも萌さんと! お友だち歴長い千晶さんにしても、デートしてる萌さんを見るのが初めてなら、萌さんとダブルデートするのも初めてだった。
そしてそれは萌さんも同じである。つまり、緊張した萌さんと颯太くんという、ふたりの初々しい初デートを至近距離で鑑賞中ナウなんである。やばい、にまにましそう。
軽くお茶して美味しいケーキを食べた後は、お買い物である。王道のデートコースではないか、うむうむ。
かわいらしいアクセサリーも置いてる雑貨屋さんは、萌さんのお気に入りだ。事前リサーチを万全に、と颯太くんは頑張った。
今もあれこれと見てはかわいいね、と笑う萌さんにくっついて、こっちも似合うよ、なんてやってる。
「千晶、顔くずれてるよ」
「これがにやけずにおれようか。萌がデート! 初めてのデートだよ!? 思わずおばさんにちくっちゃったよ!」
「今夜はごちそうだね」
「あたしもそう思う」
ほんとにもう、それくらい嬉しかったのだ。千晶さんより、萌さんのお母さんとお姉さんの方が喜んでいた。そらもう、泣くくらいに。おのれクズ、お前のせいで高山家が大変なことになってるぞ。ちなみに、萌さんのお父さんは元々蓮くんとの交際は反対だった。今では奴が大嫌いである。だよねー。
そんなだったので、千晶さんはとても微笑ましく隣で堂々と出歯亀していた時だった。
カラン、と入り口から音がして集団がなだれこんできたのは。女子の中に野郎がひとり。お呼びでない奴らだった。きゃあきゃあがぎゃあぎゃに聞こえる。うるさい。
「あ」
蓮くんと颯太くんはすぐ気づいた。萌さんは後ろを振り向かなかったので気づかない。千晶さんはヤクザも顔負けのお怒り顔で睨んでいる。あ、助走体勢に入った。
手負いの獣をどうどう、となだめる陽平くんは冷静だった。蓮くんに飛び蹴りをかまそうとした千晶さんを羽交い締めにすると(さりげなく千晶さんの柔らかい部分なんかさわさわしちゃう、だって男の子だもん)どうしたものかと思案顔。
「陽ちゃん、手」
「ん? ああ、ごめんね」
後で、誰もいない時にね。耳元でささやかれた千晶さんはわかりやすく真っ赤になった。ボンっと音もしたかもしれない。このバカップルめ。
颯太くん頑張れ。