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異世界レンタル放浪記  作者: 黒野犬千代
第三章 奴隷
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第39話 マサラ変装

 次はマサラ改めミーナの服選びだ。

 男物の店を出て5分ほどの所に女性用の服屋があった。ここも大きな店で品揃えは豊富だ。サイズだけ訊いてマサラには店のベンチで待っていてもらう。

 俺は買い物カゴを持って店内を見て回った。女性の洋服店に一人で入るなんて日本なら恥ずかしくて出来ないが、ここは異世界でしかも俺はコスプレ中だ。俺は俺ではないのだ。全く気にならない。ヘソ出しパンチラのコスプレだが全く違和感がない。なぜならここに来るまでにそんな男は何人もいたからだ。もっとも全員が見事な筋肉の持ち主だったのだけれど、マサラが良いと言うのだからこれで良いのだ。

 さて、自分を納得させるのはこれくらいにして真剣に選ぼう。


 まずは上だ。マサラの日焼けした肌には白が合うと思うのだが、逆に黒も捨てがたい。光沢のあるこれか、柔らかな素材感のあるこっちかだな。しかし、これで落ちてこないのかな。


 「すいません。これって、魔物と戦っている時にポロンしないですかね」


 近くにいた店員に訊いてみた。分からない事は訊くに限る。


 「胸の大きさにもよりますね。その方はどうですか」


 「大きすぎず小さすぎず、いい感じです」


 「はあ、それだと落ちてくるかもしれませんね。でもこれはシルクスパイダーの糸を肩ひもにできるので、心配でしたら糸を付ければいいと思います」


 「シルクスパイダーの糸ですか」


 「はい、森やダンジョンにいるでしょ。透明な糸だから見た目も気になりませんよ」


 「それは別売ですか」


 「いえ、ここにほら、丸めて入ってますから」


 「ホントだ。透明で気付かなかった。ありがとう」


 買い物カゴに投入した。


 よし次は下だ。どれにするかな。予算があるから値段も気にしなければならないと思って値札を見れば金額の上にEとかFとか書いてある。Fはフリーサイズかな。


 「すいません。この記号は何ですか」


 さっきの店員に訊いてみた。


 「これは防御力ですね。Fランクの防御力です」


 そうか、Fはフリーサイズじゃなくて防御力:Fという事か。Fは最低ランクだが無いより全然マシだ。俺は今着ている服を【鑑定】してみた。全てマサラが選んでくれたものだ。


  皮のベスト: 三角バイソンの裏皮製鋲付きベスト。攻撃力:F、防御力:E


  毛皮の腰巻: ホーンウルフの毛皮でできた腰巻。防御力:F


  革のビキニパンツ: アーマーシープの皮でできたビキニパンツ。防御力:E


  毛皮のブーツ: モンラットの毛皮でできたブーツ。防御力:F


  肘パッド: アイスタートルの甲羅の肘パッド。攻撃力:F、防御力:D


  膝パッド: アイスタートルの甲羅の膝パッド。攻撃力:F、防御力:D


 なんと、全てに防御力が付加されていた。中には攻撃力のあるアイテムまである。以前に賊の革鎧を売った時にかなり高かったが、俺のはそんなに高価ではない。安く抑えられているのは皮の部分が少ないからだろう。ビキニパンツなんて面積が小さすぎる。腕も腹も腿もほぼ剥き出しで大丈夫なんだろうか。まあシャツの布一枚あっても防御力は皆無だが。

 攻撃力が付加されているのはベストの肩にある鋲で体当たりしろという事だろう。肘と膝のパッドには亀系魔物の甲羅が入っているから、その部分で肘打ちや膝蹴りをすれば効果的という事だ。

 マサラはちゃんと俺の事を考えてくれていた。俺も彼女を見倣って選ぼう。


 俺がそんな事を考えつつ緑色のパンツを広げていると横から声を掛けられた。


 「それ、買うのか」


 ん、見覚えのある白い制服だ。襟の階級章は少佐だな。げっ、カレンさんだ。もう退院したのか。最悪の所を見られてしまった。相変わらず美しいのだが、目が冷たい。また変態だと思われたのだろうか。


 「それ、買うのか。買わないならいつまでも持っているんじゃない」


 俺だとは気付いていないようだ。そうだ、そのために服も髪も変えたのだから。

 声で気付かれたらいけない。俺は無言でグリーンパンツを差し出した。


 「チッ」


 カレンさんは舌打ちしてパンツをひったくると、そのまま店員に渡して言った。


 「これをもらおう。ただし今すぐにクリーンを掛けてくれ」


 店員と二人で行ってしまった。


 うん、しっかり傷ついた。あんな事やこんな事をした仲だというのに。でもいいや、カレンさんのパンツを見たり触ったりできたのだから。履く前だけど。


 気持ちを切り替えてマサラの服選びを続けた。防御力と変身をテーマにして選び、会計を済ませてベンチで待つマサラと合流した。


 「お待たせ。買ってきたよ。そこの更衣室で着替えてみて」


 「すっごく楽しみ。行ってくるね」


 数分の後、更衣室からマサラが出てきた。何故か顔が赤い。


 上はチューブトップのレザービキニアーマーだ。色は光沢のある黒。一見普通の革のようだがカップに地竜の皮が縫い込んである。防御力はなんとBだ。これで銀貨10枚という超破格値なのはアウトレット品だからだ。片方のカップの中に間違って山羊革を一枚入れてしまい、右胸だけ大きく仕上がっていた。完全品なら銀貨30枚だが作り直す手間を考えて大特価の銀貨10枚になっていた。

 もちろん今のマサラが着ているのは左右同じ大きさだ。なぜなら買ってから邪魔な山羊皮だけをリュックの収納に入れたからだ。俺のリュックは所有物なら自由に収納することができる優れものだ。

 よく見るとマサラの肩にへこみがある。ポロンしないようにシルクスパイダーの透明肩ひもを着けたようだ。


 下は同じように光沢のある黒のレザーミニスカートだ。前が大きく空いていてパンツが丸見えになるという斬新なデザインだ。何故かというと、動き易さが主目的なのは当然だが、男性の目を顔ではなくパンツに向けさせようという考えだ。顔を見られなければマサラだとは気付かれない。銀貨11枚だった。したがってパンツは目立つようにオフホワイトにした。ローライズのレザービキニショーツだ。銀貨2枚。


 靴はひざ下の黒いロングブーツにした。草原を歩くことを考えるとブーツは必需品だ。価格は銀貨11枚。更に平らな鋲が沢山ついた黒いリストバンドとオフホワイトのニーハイソックスも銀貨1枚で購入した。マサラの腕と腿には神殿で縛られた縄の痕がまだ残っている。それを隠すために必要だったのだ。


 合計金額は銀貨35枚だった。


 【鑑定】結果はこうだ。


  革のチューブトップアーマー: アーマーシープと地竜の皮でできた

                 チューブトップビキニアーマー。防御力:B


  革のスカート: アーマーシープの皮でできた前空きミニスカート。

          防御力:E


  革のビキニショーツ: アーマーシープの皮製ローライズビキニショーツ。

             防御力:E


  革のブーツ: アーマーシープの皮でできたロングブーツ。防御力:E


  リストバンド: 鋲打ちの布製リストバンド。防御力:F


  ニーハイソックス: 布製のニーハイソックス



 リストバンドの鋲は尖っていないので攻撃力付加は無い。ニーハイソックスはただの布で防御力の付加は無い。魔物の毛を縫い込んだものもあったが予算オーバーだった。


 「ミーナ、とても似合ってる。最高のコーデだ」


 「そ、そうかなあ。露出が激しすぎる気がするんだけど」


 「そんな事ないさ。これなら誰に会っても分からないだろ。むしろまだ隠しすぎてるくらいだぞ。何ならスカートは外そうか」


 「いや、これでいいです」


 「よし、昼飯だ」


 俺たちは商店街の路上に出ていた屋台で昼食を取ることにした。残金は銅貨65枚しかない。食堂のランチだと資金不足だったので屋台にしたのだ。

 屋台では鉄板の上で焼いた肉をパンに挟んで売っていた。いわゆるハンバーガーだが牛肉ではない。ラットだ。といっても魔物ではなくネズミだ。町にいるネズミではなくて野ネズミだそうだ。濃い目のソースで味付けしてあって喉が渇いたがオレンジ水がサービスで付いていた。二人分で銅貨30枚だった。これで残金は銅貨35枚だ。

 宿の料金は数日分を前払いしてあるが、所持金が無いのは辛い。稼がなくてはならない。


 「なあミーナ、午後は薬草でも探しに行ってくるから、ミーナは宿で休んでいてくれ」


 「アタシならもう大丈夫だよ。一緒に行くよ。一人で留守番なんて絶対に嫌だからね」


 ソースが付いた頬を膨らませてマサラが言った。俺は親指でソースを取ってやりながら念を押した。


 「そうか、無理するなよ。きつくなったらすぐに言うんだぞ」


 「ゴ、サツキはギルドには登録してないの。ギルドの依頼をやったほうが割が良いんだよ。薬草を採るにしても、薬草代と成功報酬をくれるからね」


 「そうなのか。知らなかった。ギルドって冒険者ギルドの事だよな。登録してない」


 「じゃあ登録して仕事を探そうよ。アタシも一緒に登録する。ミーナでね」


 「そんな事ができるのか」


 「大丈夫だよ。色んな事情の人がいるからね。でも新規登録だと冒険者ランクは最初からだけどね」


 「前はどのランクだったんだ」


 「Dだよ」


 「それはどの程度なんだ」


 「初心者がFだから、その2つ上だね。ギルドに行ったら説明してくれるよ。行こ」


 俺たちは冒険者ギルドに行くことにした。

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