表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界レンタル放浪記  作者: 黒野犬千代
第一章 異世界入門
2/99

第2話 初魔物

 目的地は南にある村だ。俺は丘をゆっくりと下っていく。とにかく食料と情報が必要だ。【語学】があるから言葉は通じるはずだ。


 歩きながら一面に生えている20cmくらいの草を【鑑定】してみる。


  ペン草: 一般的な草


 少し丈のある40cmほどの草を【鑑定】する。


  ストロー草: 一般的な草


 これもただの雑草か。ペン草とストロー草の草原を歩いていると色の違う草が群生していた。他は総じて緑色なのだがこの草は黄色だ。早速【鑑定】してみよう。


  美肌草: 薬草の一種


 なんとなく価値のありそうな草が出てきた。根絶やしにしないように全部は採らずに採取していく。集めた美肌草はリュックに入れた。


 更に草原を歩いていく。注意して見ているとペン草の中に形状の違う草が混ざっていることがある。ペン草は線形二葉なのだが、たまに三葉のものがあるのだ。足を止めて【鑑定】してみる。


  カムイ草: 薬草の一種


 また薬草を見つけた。とりあえず採取だ。その後も見つけたカムイ草を採取してリュックに入れていく。今の俺は一文無しだ。薬草ならひょっとして売れるかもしれない。貨幣が無い世界なら物々交換でもいい。何かの役に立てば。そんな思いでリュックに入れた。


 岩でも木でも目に付くものを手当たり次第に【鑑定】していくと脳内にメッセージが流れた。


 >>>【鑑定 レベル1】がレベルアップし【鑑定 レベル2】になりました。

     情報量が増えました。


 やった。やはりスキルは使えば伸びてくれるようだ。レベルアップした【鑑定】で足元の草を再度調べてみる。


  ストロー草: 広く分布する一般的な草。茎の中が空洞になっている。


 さっきよりも詳しく表示された。ストローのようだからストロー草なんだな。でもストローって藁のことなんだけどね。


 またカムイ草を見つけた。これも再鑑定する。


  カムイ草: MP回復薬の原料となる薬草の一種


 やはり価値があるもののようだ。もちろん採取する。カムイ草をリュックに入れた時にふと気が付いた。手応えがないのだ。結構沢山入れたはずなのに、リュックの中がスカスカなのだ。


 リュックの口を大きく広げて中を見る。

 空っぽだった。


 何故だ。まだ新しいリュックだぞ。穴が開いているわけがない。何度見ても完全に空だった。


 「せっかく集めたのにふざけるな!俺のカムイ草はどこだよ」


 そう喚いて逆さにして振ると バサッと大量のカムイ草が落ちた。どういうことだ。改めてリュックを確認するが、やはり空だ。それならと落ちたカムイ草を入れてみると、どうだろう、入れたそばからリュックの中にフッと消えてゆく。


 何もない空間に放り込んでいるような感覚だ。大量のカムイ草は全てリュックに収まってしまった。レベルの上がった【鑑定】でリュックを再度鑑定する。


  リュック: 専用収納空間を持つ多機能リュック


 収納空間、よくわからないがネコ型ロボットのポケットのようなものなのか。そういえばさっきはカムイ草と言ったらそれだけが出た。中には美肌草も沢山入っているはずなのだが。よし、試してみよう。リュックに手を入れイメージする。


 「美肌草 3株」


 すると手に美肌草が3つ現れた。そういう事か。指定したものを指定した数だけ取り出すことができるのだ。どういう仕組みになっているのかサッパリわからないが便利な機能だ。鑑定レベルを上げればもっと詳しい事が分かるかもしれない。そう考えて次々に【鑑定】していると変わった名前が出てきた。


  昼草夜虫: 昼は草に擬態する夜行性の昆虫。カムイ草を好む。


 ペン草に似ているが少し太く色も深緑だ。冬虫夏草と名前が似ているから、もしかするとこれも薬の原料になるかもしれない。一応ゲットしておくか。虫を手で触るのは怖いのでストロー草を2本抜いて箸のようにつまんでリュックに入れる。

 ん、消えない。リュックの底に普通に落ちただけだ。「収納」と呟きながら入れてみるがやはり消えない。もう一度、今度は箸に使ったストロー草も一緒に放り込む。するとストロー草だけが消えた。

 なるほど、動物は入らないのか。収納空間で動物が動き回るのは怖いものな。排泄だってするだろうし、無理なのも納得できる。虫を持ち歩くのは怖いので諦めてリュックから振り落とした。

 すると草の間からザザザッと音を立てて30cmほどの動物が走り寄り昼草夜虫にガブリと噛みついた。


 全身が褐色の短毛で覆われ二十日鼠のような尻尾を生やし、尖った口からは鋭い歯がいくつも生えている。赤い目でこちらを牽制しながら虫を食べ始める。俺はビビりながら後退しつつ【鑑定】する。


  モンラット: 草原に住む小型の魔物。昆虫などの小動物を捕食する


 魔物……ついに遭遇してしまった。動物ではなく魔物と表示されるくらいだから危険なのかもしれない。あの歯はどう考えても危ない。逃げよう。

 こちらがビビりまくっているのに気付いたのか、モンラットは歯を剥きながら近づいてくる。

 やばい、武器なんて何もない。女神の加護があるから即死にはならないが、飛び掛かられてあの歯で首でも噛まれたら悲惨な事になる。いや、あの短い脚では飛び掛かるなんてできないんじゃないか。

 考えているのを油断と取ったのか、虫を完食したモンラットが突っ込んで来た。


 無我夢中で右足で蹴り飛ばす。

 奇跡的にジャストミートしたモンラットは数メートル先の木に当たって倒れピクリとも動かない。ヤバかった。空振りしたら殺されてたな。倒れたモンラットを【鑑定】する。


  モンラットの死骸: 肉は食用に、毛皮は衣料に利用される


 死骸と表示された。どうやら倒せたようだ。初めての獲物だ。肉や毛皮も価値があるようだ。動物でも死骸なら収納できるかもしれない。尻尾をつまんでリュックに落とす。消えた。ちゃんと収納できた。なんとなくルールが分かってきた。多機能バッグというくらいだから他にも機能があるはずだ。試しながら歩こう。


 リュックの中身が知りたい。そう思うと脳内にリストが表示された。


  美肌草24株

  カムイ草97株

  ストロー草2本

  モンラットの死骸1匹


 これは分かりやすい。他にもできるかもしれない。ダメ元でやってみる。「モンラットの肉」そう呟きながらリュックを開けると肉の塊があった。なんと、こんな事までできるとは。死骸の解体なんて嫌だと思っていたので有難い。

 肉を収納空間に戻し再びリスト表示する。


  美肌草24株

  カムイ草97株

  ストロー草2本

  モンラットの肉1塊

  モンラットの毛皮1枚

  モンラットの魔石1個

  廃棄物


 素晴らしい、必要部位だけ解体されて不要部位は廃棄物としてまとめられている。木の根元に小さな穴を掘ってその上でバッグを逆さまにして「廃棄物」と呟く。リュックから廃棄物が落下して穴に入った。

 凄い。これは凄いリュックだ。地面に置いたり、廃棄物を出したりしたのに全く汚れていない。新品のままだ。日本に居た時は新品だとちょっと気恥ずかしく思ったが、今は全然そんな気はしない。ただただ有難い。


 魔石というのも気になって取り出してみる。パチンコ玉くらいの大きさをした紫色の石だった。【鑑定】しても モンラットの魔石 としか表示されない。宝石的なやつかもしれない。

 そういえばモンラットを倒したのだが。レベルアップは無いのだろうか。

 ステータスを表示する。


  ステータス

  名前:宮辺 豪太 年齢:16 性別:男 種族:人族 職業:なし

  レベル:1

  HP:10/10 MP:90/90 SP:0

  体力:F

  魔力:F

  知力:F

  状態:‐

  罪科:‐

  称号:未設定

  スキル:【鑑定 レベル2】【マップ レベル1】【語学】【雷無効】


 【鑑定 レベル2】以外は変動が無い。あれだけ凶暴な魔物を倒したというのにレベルは上がらなかった。レベルの上げ方が分からない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ