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異世界レンタル放浪記  作者: 黒野犬千代
第一章 異世界入門
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第11話 キャラバン

 アルル村を出発したキャラバンは南に向かっている。


 今日は隣町で宿泊する予定だ。この世界には魔物や盗賊がいる。商人や市民にとって夜間の移動や野営は危険なため、朝出発して日没前に到着できる距離には必ず町や村が配置されているらしい。この世界の人間が「馬車で1日の距離」といえば隣町(村)のことであり、「馬車で2日の距離」といえばそのまた隣町(村)のことである。


 一度死に、この世界で復活した俺はアルル村の生活でなんとか生きていけるだけの基礎を身に着けた。俺の次の目標は魔法を覚えることだ。魔法を授けてもらえる神殿はグラリガという都市にある。グラリガはアルル村から馬車で3日の距離にある。すなわち、グラリガに行く前に2か所で宿泊する事になる訳だ。


 街道をゆく3台の馬車は1列縦隊となり、前後に護衛の騎馬が2騎ずつ並んでいる。前衛の2騎は皮の鎧を着た戦士で一人は長剣を、一人は十文字槍を携えている。後衛の2騎は弓を持つハンターとローブを着てスタッフを持つ魔法使いだ。スタッフとは、魔法を効率よく使うための杖のようなものだ。生まれて初めて見る魔法使いだ。コスプレに見えてしまうのはまだこちらの世界に慣れていないせいだろう。もちろん本人は至って真剣な顔だ。


 護衛の4人はルイージ商会の所属ではなく冒険者だった。4人でパーティーを組み、今回のような護衛を請け負って報酬を得ている。リーダーは長剣の戦士のゴヤルだ。仕事の仲介は冒険者ギルドが行っているそうで、依頼人はギルドに報酬を預けて仕事を依頼する。ギルドはその仕事ができる冒険者を募集して、仕事が完了したら報酬を支払う。仕事内容は様々で護衛や魔物討伐など武力の必要なものから掃除やペット探しなど何でも屋的なものまであるらしい。俺も機会があれば冒険者ギルドに行ってみようと思う。


 俺の隣で馬を御すのはブラウンさんという30代の男性だ。茶色の布ズボンに濃茶のスウェードのカウボーイジャケットを着ている。名前の通りだと思ったがもちろん口には出さない。靴だけが黒だったのが残念だ。


 ロランゾさんに貰った剣を見ているとブラウンさんが話しかけてきた。


 「カットラスだね。無駄な装飾が無くて使い易そうだ」


 「まだ使ったことはないんです」


 「突くのではなく叩きつけるようにするといい」


 「詳しいんですね」


 「キャラバンに入ったときに一通りの訓練を受けたからね」


 「やはり襲われたりするんですか」


 「この辺りは魔物は少ないからね。出るとしたら盗賊だな」


 「盗賊ですか。怖いですね」


 「うちの馬車を見れば積み荷が農作物だとわかるからね、まず襲ってこないよ。逆に森や林だと緊張するね。食料は魔物に狙われやすいんだよ。人がイモ持ってやって来るって言うだろ」


 それを言うなら鴨が葱を背負ってくる、だと思うのだが。ギャグなのか、この世界の諺なのかは分からない。


 昼過ぎになると並木裏の木陰に馬を停めて休ませた。昼食にするようだ。並木にはこういう使用目的もあったのか。ブラウンさんが生活魔法で火を起こして缶詰のポークアンドビーンズを温めた。この世界にも缶詰はあるんだな。皆マグカップを持って料理を入れてもらっている。俺もパンを食べようとソラーラさんが持たせてくれた包みを開けていると、


 「ゴータも食べなさい」


 と呼んでくれた。


 容器はどうしようかと包みを見るとマグカップとスプーンが入っていた。さすがだよ、ソラーランさん。ポークアンドビーンズは豆が柔らかくてよく味が染みていた。トマトの酸味も効いている。肉は申し訳程度にしか入っていないが熱々の食事はとても美味しかった。

 隣に隊長のポータードさんが来て言った。


 「どうだね。馬車の乗り心地は」


 「はい、お尻が痛くなりますね」


 「そうだろ、私もだ。だからズボンの後ろに綿を入れているんだよ」


 ポータードさんは立ち上がってズボンのお尻を見せてくれた。ズボンのお尻と内股の部分がキルティングになっている。馬車でも乗馬でも痛くならないように工夫されているようだ。


 「それはいいですね。私も買いたいです」


 「うちの商会でも扱っているから買うといい。アルル村は大事な得意先だからね。安くするよ」


 食事のあとはコーヒーを入れてくれた。やはり生活魔法は便利だ。絶対に身につけたい。

 馬車に乗り込み、ポータードさんの号令で出発する。


 馬車に揺られながら俺はステータスを確認する。


  ステータス

  名前:宮辺 豪太 年齢:16 性別:男 種族:人族 職業:なし

  レベル:2

  HP:15/15 MP:120/120 SP:1

  体力:E

  魔力:F

  知力:E

  状態:‐

  罪科:‐

  称号:未設定

  スキル:【鑑定 レベル2】【マップ レベル1】【語学】【雷無効】


  シークレットステータス

  魔法:‐

  固有スキル:【レンタル レベル1】

  固有アイテム:神様印ショルダーバッグ

  称号:女神の加護、復活者、ラットハンター


 おや、ラットハンターという称号が増えている。【鑑定】する。


  ラットハンター: ラット系魔物討伐優秀者に与えられる称号。

           対ラット系攻撃力・防御力上昇効果


 モンラット釣りが評価されたのだろう。役立ちそうな称号だ。次回は何の称号を獲得するのか楽しみである。


 キャラバンは順調に進み、隣町アルガ、更に隣の町グルジと経由していよいよ明日は神殿のある都市グラリガだ。

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