リア充(仮)②
美紅ちゃんとの初めての帰り道。やはり俺の予想通り、俺の身長(175cm)と美紅ちゃんの(152cm)という、身長差が丁度いい。
俺がより高く見えて、壁ドンがかっこよくなる。顎クイをして上を向かせた時や、ギュッと抱きしめたときに俺の胸元に顔が当たるのもいい感じだ。
………でもまぁ、俺らは所詮、明日で終わるリア充なんだ。そんな理想を妄想したってなんの意味もない………。はぁ………。より一層、俺の理性が乱れてしまう。
だめだめ俺!いくら好きでもただの片思いのやつが変なこと思ってはだめだ。平常心平常心。
「ねぇ、蒼汰くん。」
「うん?あぁ、明日のために俺らの設定きちんとキメないとだね。」
「設定………か……。」
「ん?何か言った?」
「ううん、なんでもないよ。」
なにかボソッと美紅ちゃんが呟いたがよく聞き取れなかった。まぁ、そんな大したことじゃないだろ。
さぁ、明日のことを決めよう、と思ったらいつの間にか駅に着いてしまった。俺はバス通で美紅ちゃんは電車だ。ここで別れなくてはいけない。
結局なにも決めないまま別れることになった。
「じゃあ、明日のことについてはLIMEで言うね。電車の時間近いから急ぐね!また明日〜。」
「ばいばーい。」
と言って足早に美紅ちゃんはホームに向かっていった。その、小走りした後ろ姿はなぜか、昔好きだった人を思い出させた。美紅ちゃんのことを知れば知るほど好きになってしまう。明日1日限定の彼氏だという事が悔しくなってくる。
俺が美紅ちゃんの中の1番になれたら良いのに……と心の中で思いながらバスに乗って家に帰った。
その30分もしない内に美紅ちゃんからLIMEが届いた。ん、なになに?………
………なるほど。美紅ちゃんが言ってきた設定は全部わかった。
その1.俺は「美紅ちゃん」ではなく「美紅」と呼ぶ。美紅も俺のことを「蒼汰」と呼んでくれるらしい。まぁ、その方がいかにも付き合ってるぽくていいからな。
その2.俺らは付き合って7ヶ月という事らしい。それは、やはり美紅の負けず嫌いな性格から来ていて、相手が今付き合い始めて6ヶ月だからだそうだ。
……7ヶ月って学生にしては結構長めじゃね?俺は1回もリア充になった事がないからよくわからんが。なんか7ヶ月って長いイメージがある。
その3.←これが最後だ。だか、これだけよく意味がわからない。「ちょっとイレギュラーなことがあっても驚かないで欲しい。」………うん、何度読んでもわからん。要は何があっても動揺するなってことだろ?
まあ、そのくらいなら余裕だろう。
そして、美紅からのLIMEの最後に
「よろしくねー♪(*≧∀≦)」
という顔文字があった。なんというか、とてもよく美紅に似ていた。このような些細なものも全て美紅と被せてしまう。
ダメだダメだ!しっかりしないと!俺!明日は美紅のために失敗する訳にはいかない。こういうところでさっきの「その3」に繋がるのかなと思った。
さあ、勉強をしようと思ったその時、俺のスマホが騒ぎ出した!なんだ!?ハッキングされたか!?と思って恐る恐るスマホを開くと…………
なんということでしょう!LIMEの通知が200を超えているではありませんか!
確かに俺にはそこそこ友達はいる方だが、こんなに一気に来たことは初めてだ!嬉し半分、驚き半分で見てみると、それは全て美紅と俺のことについてだった!!!
今日の帰り道に何人かが俺らを見たらしく、すぐさま俺らが付き合っているという噂が流れたらしい…………。今の情報社会って怖ぇぇぇぇ!!
んで、実際俺は20人程度から聞かれていた。どうやら、友達の1人が俺らの関係を知りたくてスタ爆をしてきたらしい。迷惑な話だ。
俺はLIMEが来ていた全員に同じ言葉で返した。
「たまたまだよ。」
俺は明日限定の彼氏なんて事バレたくないので誤魔化した。
気づいたらもう日付が変わっていた。俺は勉強しなければと思ったが、明日遅れてはいけない、という気持ちの方が強く、電気を消した。
はぁ……明日どうなるか本気で心配だ。で、その次の追試も心配だ。なんか心配事だらけで辛いなぁ。まぁ、なるようになるんだから気にしないようにしよう。
おやすみなさい………。