青空
「ねぇ、知ってる?」
いつだって僕が見つめていたのは彼女の横顔ばかりだった。
めったに合わないその視線の先に彼女はいったい何を見ていたのだろうか。
「空って年を取っていくたびに見え方が変わっていくんだって」
あの頃、ただ同じ所に立っていられることがうれしくて、どこから来たのか、どこに向かっていくのかなんて、考えたことなかった。
今そばにいるという一点だけがうれしくて、それが世界のすべてだったんだ。
「今、私と君が見ている空はきっとおんなじ色なんだろうね」
理由なんてどうでもよかった。彼女の笑顔が見られるなら、それで。
僕を見ていなくたって、同じ場所に立っているのだから。そう思っていた。
「明日の空はどんな色なんだろうね」
僕は空を見上げている。
大きな大きな雲が遠くに見えた。