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四十話 乱暴する気でしょう!

 ちょっと修正しました。


 誤字を修正いたしました。

 報告、ありがとうございます。

 その日は、友人達と中庭の木陰で昼食を取る事になった。


 参加するのは、私、アードラー、カナリオ、マリノー、アルエットちゃん、アルディリアの六人だ。

 見事に女子ばっかり(強調)!!

 青空ランチ女子会である。


 アルディリアに場所をとってもらい、私達は後から行く事になった。

 私はアルエットちゃんと手を繋いで、他の女子達とも談笑しながら中庭へ向かった。


 相変わらず、カナリオとアードラーは話をしない。

 カナリオは何度か話しかけようとしていたのだが、アードラーもそれを察してか、その度に私へ話しかけてきた。

 多分、ゲーム補正のせいもあるだろうから、私も無理に仲良くしろとは言わないけれど。

 友達同士が仲悪いとちょっとモヤモヤする。




 そうして向かった先で、アルディリアを見つけた。

 そして彼の他にもう一人、見知った人物がいた。

 ルクスである。


 ルクスはアルディリアに話しかけていた。


「お前、可愛い顔してるな。俺好みだぜ。お前なら、俺の女にしてやってもいいぜ」

「僕、男の子だよ?」


 ウホッ!

 婚約者がV系の男に食われそうになっとる!

 なんて面白……ゲフンゲフン、屈辱的な展開だ。

 薄い本が大量に増刷されてしまう。


「面白い事を言うな。だったら、実際に脱がせて確かめてやろうか?」


 アッー!


「いや、だから本当に男だよ。ていうか、見てないで助けてよクロエ!」


 気付かれていたか。

 もう少し見ていたかったが。


 アルディリアの声に、ルクスがこちらへ向いた。

 一度私へ目を向けると、彼の視線はすぐに私の隣や背後に向けられた。


「へぇ、好みの女が揃っているじゃねぇか。久し振りだな、フェルディウス嬢」

「本当ね。面倒だから避けていたのに」


 アードラーは言って溜息を吐いた。


「それに、フカールエル家の令嬢か。相変わらず、見ているだけで楽しみな女だな。どうだ、今晩俺と過ごさねぇか?」

「お断りします。私はそんなに身持ちの軽い女ではありません」


 マリノーが視線から隠れるように私の後ろへ隠れ、言葉を返す。


「お、この前の平民女か。俺の物になる気にはなったか?」

「いいえ、私には心に決めた方がいますから」


 カナリオは毅然と返す。


「嫌われたもんだな」


 ルクスは肩を竦め、次に私を見た。


 よかった。

 アルエットちゃんに声をかけていたら、国衛院イノスに通報しなければならない所だった。


 しかし、もしかしてこの展開は私もナンパされる? 口説かれちゃう?

 前世から考えても人生初ナンパだ。

 いやー困っちゃうなー。

 私にはアルディリアっていう婚約者がいるのになー。


「それからクロエ・ビッテンフェルト。丁度いい、俺と勝負しろ!」


 何でじゃい!




 おかしな事になった。

 私はルクスと中庭で決闘する事になり、他のみんなは私達を見ながら先にお弁当を食べ始めようとしていた。

 どういうわけか、誰も止めようとしてくれなかった。


「ねぇ、止めようとかしてくれないの? 私、決闘申し込まれたんだけど、のんびり先にお昼とか酷くない? 怪我しちゃうかもしれないよ」

「クロエが負けるわけ無いじゃない。そのアホを説得するより、クロエが直接相手した方が断然早いわよ。さっさとコテンパンにしちゃいなさい」


 私の言葉にアードラーが返す。

 そして他の誰も口を挟まないという事は、異論が無いのか。

 いいのか?

 私、乱暴されちゃうぞ!

 いいのか、アルディリア?

 婚約者がピンチだぞ。


 私が見ると、アルディリアが口を開く。


「大丈夫でしょ。さっき僕を助けてくれなかったのも、僕を信用しての事だろうし。僕もクロエを信じるよ」


 笑顔で言われたけど、目が笑っていなかった。

 あら、ちょっと怒ってらっしゃる。


「お姉ちゃん頑張ってーっ! コテンパンーっ!」


 アルエットちゃんが楽しそうで何よりです。


「さっさと始めようぜ」

「……わかったよ」


 私は諦めて構えを取った。


 さて、ルクスはあれでも結構強い。

 ゲームの設定上でも闘技の心得はあるし、実際に対峙してみても実力がある事は見て取れた。

 今回こそは、戦いらしい戦いができるかもしれないな。



 先に仕掛けたのはルクスだった。

 体を低く落とし、特殊な歩法で近付くと、一転して飛び上がった。

 そのまま跳び蹴りを私へ放つ。


 フェイントだ。


 が、私には通用しない。

 私はその蹴りを腕でロックし、飛び上がった状態のルクスに空中で四の字固めをかけた。

 そのまま、地面に落下。その時になって初めて、完全に関節が極まる。


「ぐぎゃああぁっ!」


 ルクスが悲鳴を上げ、すぐに降参した事で決着となった。


 アードラーの言う通り、本当に早く終ってしまった。

 さ、お弁当たーべよ。


 技を解いて、みんなの方へ向かう。


「待て、まだ終わってない。もう一度勝負しろ!」


 振り返ると、痛みと熱さで汗まみれになったルクスがいた。

 私へ人差し指を突きつけている。

 まだやる気なのか?

 私も人差し指を突きつけ返してやった。


「断る!」

「いや、俺はまだやれる!」


 そんな事は聞いてねぇ。

 何だよ。

 結局長引きそうじゃない。


「コテンパンにしないからよ」


 アードラーが呟く。

 あなたの言うコテンパンは再起不能にしろって事だったの?


 でもどうしよう。

 この調子じゃ、昼休みが終わるまで何度も仕掛けてくるんじゃないか?

 本当に四肢を折ってやろうか。

 白色の魔力を使えるらしいから、折るだけなら大事には至らないだろうし……。


 何て事を考えていると、私達に声がかかった。


「何をもめているのですか?」


 そう言って私達の前に現れたのは、イノスだった。

 彼女もまた、私達と同じ魔法学園の生徒だ。

 学園は三年制で、彼女は二年生である。

 なのでイノス先輩と呼んだ方がいいだろうか。


 イノス先輩は舞踏会の時の制服ではなく、ゴスロリ風の青い服だった。

 スカートではなくパンツではあるが、全体的にフリフリした女性的な可愛らしいデザインの物だ。

 それが彼女の普段着である。ゲームでもこの姿だった。

 ちなみに、国衛院制服の方は格闘ゲームにおける特殊カラーである。


「ちっ、お前かよ」


 ルクスは小さくした打ちして言う。


「ルクス様、何をなさっていたのですか? ビッテンフェルト様へ何やら怒鳴っていたようですが」

「お前にはどうでもいい事だろう?」

「そうはいきません。私は国の秩序を司る者の一人です。それは学園の風紀も同じ事です。それに……」

「何だよ?」


 ルクスは小さく笑みを作って、先を促す。


「私は、ルクス様に仕える者でもあります。その振舞いがどのようなものか知り、間違っていれば正す役目があります」


 ルクスは不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「知ったこっちゃねぇな。俺のやる事に口出しするんじゃねぇよ」


 ルクスは吐き捨てると、その場から去ろうとする。


「どこへ?」

「どこでもいいだろう? 何でもかんでも、余計な詮索してくるんじゃねぇ。婚約者じゃあるまいし」

「……そうですね。出すぎた真似をしました」


 ルクスはその言葉を背中で聞き、振り返る事無く去って行った。

 その背を見送り、イノス先輩は振り返る。

 私へ頭を下げた。


「頭を下げられる理由がわからないのですけど」

「ルクス様がご迷惑をかけたのではないかと思いまして」

「まぁ、少しは」

「お許しください」


 それだけ言うと、イノス先輩もその場から去って行った。


 これでお弁当が食べられる。

 私はみんなの待つ場所へ向かい、ランチ女子会に参加した。

 アルエットちゃんにあーんしてもらったミニハンバーグがとても美味しかった。


 それにしても、ルクスとイノス先輩。

 よくわからない二人だったな。

 先輩には舞踏会で試されるし、ルクスは急に勝負を挑んでくるし。

 私には二人の考えている事がいまいちわからない。


 正直に言えば、ゲームでも二人の考えている事はよくわからなかった。

 いや、ルクスの方はなんとなくわかる。

 確証はないけど。


 イノス先輩は、ルクスシナリオにおけるライバル令嬢である。

 かつて、ルクスとイノス先輩は親同士の決めた許嫁の関係だった。

 だが彼女は幼い頃に、瀕死の重傷を負う。

 そのせいで右足には自力で歩けない程の怪我を負い、体の至る所には無数の傷が残っているという。

 白色の魔力は人の治癒力を高めるものであり、あまりにも深い怪我だった時は完全には治らない。

 治ったとしても不自然に傷が盛り上がったり、跡が残ったりする。

 だから彼女の傷は、もう二度と消える事がないのだ。

 そしてそれが原因で、二人の婚約は解消してしまった。


 それから二人は、ああいう関係だ。

 ルクスはイノスに尊大な態度を取り、それでもイノスはルクスのそばにいる。

 正直、二人の関係に関してはゲームをクリアしても本当によくわからない。


 まぁ、服装の奇抜さだけなら、お似合いの二人だとは思うんだけどね。

 勝手ながら、しばらく更新をストップします。

 次の更新は今月の24日になるでしょう。

 その時にまた、お会いしましょう。

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