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十五話 虎と虎

「「クロエさんは魔法研究所に侵入したタイプビッテンフェルト三名と戦った。煙幕と魔法を扱えなくする薬を投げつけてきた相手だったが、薬に対する防護機能が働いて事なきを得たクロエさんは三名を倒した。なんて苦しい戦いだったのかしら……」」


 ムルシエラ先輩の研究室まで来た私の耳に、チヅルちゃんの通信が聞こえた。

 これがアニメだったら、今頃チヅルちゃんのお尻がドアップになっていそうだ。


「何言ってるのさ」


 研究室の扉を開きながら、私は中にいるチヅルちゃんに声をかける。

 チヅルちゃんがイタズラっぽい表情を浮かべて、私に振り返った。


「お疲れ様です」

「無事みたいね」


 チヅルちゃんが労ってくれて、私を見たアードラーがホッと息を吐く。

 次いで、先輩が口を開く。


「タイプビッテンフェルトの着用者達は?」

「両手足の関節を外して倉庫に転がしてあります」

「縄で縛って、国衛院に引き渡しましょう。それから、回収した水晶を受け取っておきましょうか」


 私はベルトについていたウエストポーチから水晶を取り出して渡す。

 そろそろパンパンになってきていた所だったんだ。


 ポーチの中がパンパンだぜ。


「じゃあ、私は引き続き町へ出ます。イノス先輩を早く見つける必要がありそうなので」

「わかりました」


 イノス先輩があの復讐者に連れて行かれたとするならば、一刻も早く見つけなくてはならない。

 悠長にしている時間は無い。


「気をつけてね」

「気をつけて」


 アードラーとチヅルちゃんが言葉を送ってくれる。


「うん。大丈夫だよ。行ってくる」


 研究所から出て、私はまた夜の町をバイクで駆け出した。




「「それにしても、どうして連中はいつもスリーマンセルなんでしょうね?」」

「さぁ……」


 チヅルちゃんの通信に答える。


 確かに、言われて見れば今までの連中は三人で行動しているのが目立った。

 国衛院本部には六人の着用者がいたが、それだって三の倍数だ。

 彼らが三人一組を基本として行動している事は明らかだった。


 忍者かなー?


「「恐らく、クロエさんの戦闘能力を指針としたからではないでしょうか?」」


 先輩が答える。


「どういう意味です?」

「「ルクスくんを救出した時、三人のタイプビッテンフェルト着用者と戦ったと言いましたね。クロエさんは、その三人と互角だった。つまり、三人一組で行動させれば少なくともクロエさんと遭遇した際に負ける事はないという事です」」

「「クロエと互角なら、だいたいの相手には負けないわね」」


 先輩が説明し、アードラーが補足する。


「なるほど。だから三人なんだ」


 でも、私より強い人間だってこの国にはいる。

 どっかの半神的ヒロインだ。


 ただ、彼女は普段領地にいるから王都にいないだろう。

 なら、三人で組めば遭遇の可能性がある脅威には十分対応できる。


 ふと、心配になる。


「父上は大丈夫でしょうか」


 父上は私と互角か……それ以上だ。

 でも、もう歳だ。

 歳のわりに若く見えるが、それでも肉体はピークを過ぎている。

 緩やかに力も失われつつあるだろう。


 そんな今の父上は、徒党を組んだタイプビッテンフェルトに勝てるだろうか?


「「大丈夫であろう」」


 これまで通信機越しでは耳にしなかった声が聞こえた。


「「これは陛下。如何致しましたか?」」


 ムルシエラ先輩が声の主に答える。


「「うむ。アルディリア将軍に渡されたので、一度試験運用を兼ねてこちらの状況を伝えておこうと思ってな」」

「「そうでしたか」」


 先輩が返すと、私は口を開く。


「あの、大丈夫とはどういった意味でしょう?」

「「今、王都の兵力は王城に総動員されている。そなたの父上だけではないという事だ」」

「あ、そういう事ですか」


 そうだ。

 父上は一人じゃない。

 自分の部隊の人間もいれば、他の隊の人間も一緒にいるのだ。

 なら、安心か。

 流石にタイプビッテンフェルトが強くても、数の暴力には勝てないだろう。


「「それより、王都はどうなっている? 民達は?」」

「残念ながら、暴動は未だに治まっていないと思われます。詳しい話は、アルマール公にお聞きください」

「「そうか……。暴動の鎮圧が長引けば、それだけ被害を受ける人間も増えような……」」


 陛下は重い口調で言った。

 心を痛めているのだろう。


「「よし、少しばかり兵力を回すとしようか」」

「え、大丈夫なんですか?」

「「身を守れる程度には兵力を残す」」

「そうですか……」


 王様の身が危うくなるが、それでも確かに嬉しい申し出だ。

 今も被害は広がっているだろうから。


「ありがとうございます」

「「住まう者を安心させるのが王の仕事ゆえな。……それとこれは個人的な頼みなのだが」」


 王様は声を潜めて言葉を続ける。


「「アクイラの行方がわからん」」

「え?」


 アクイラはリーオーの本名だ。

 王女の行方がわからないというのは一大事じゃないだろうか?


「「状況が許す限り、探してもらえぬだろうか?」」

「それはもちろんです。最優先じゃなくていいのですか?」

「「今は暴動の鎮圧で人手が必要だ。公私混同で人を割くわけにもいかぬだろう。だから、そなたに頼む」」

「わかりました。探します」


 通信が切れた。


 どこもかしこも、子供が夜遊びしているわけか……。


 でも、彼女が捕まるのはまずいな。

 人質にされてしまいそうだ。


 けれど、未だにそういった宣言も取引の要求もないというのなら、まだ無事って事だろう。


「「大変な状況ですね。でも暴動の方は、これで早く沈静化しそうです」」

「そうですね」


 先輩の言葉に私は答えた。




 それから私は、時折チンピラに襲われる住民達を助けながら町をバイクで疾走した。


 優先目的はイノス先輩の救出だが、今の所手がかりは無い。

 だから、町中を駆け回って情報を収集するほかないわけである。


 ヤタとエミユちゃんの行方もわからない。


 わからない事だらけで、正直焦りがある。

 みんな無事でいてほしい。


 私はハンドルを回し、バイクを加速させた。


 その時だ。

 私は争うような音を耳にした。

 そちらへ向かう。


 通りで、男女が十名を超えるチンピラに襲われていた。

 助けなくては……。


 そう思って高速機動装甲を脚部へ装着した瞬間。

 一人のチンピラが襲われている男に殴り飛ばされ、私の横を通り過ぎていった。

 よく見れば、単純に襲われているわけでなく、戦っているようだ。


 さらによく見れば、戦っている男女は知人だった。


 アルエットちゃんとレオだ。

 二人は、十名を超えるチンピラから囲まれながら、上手く立ち回って戦っていた。


「このっ!」


 アルエットちゃんに殴りかかっていくチンピラ。

 そんなチンピラの動きに合わせ、中段突きを放つ。

 腹部を拳に穿たれたチンピラは体をくの字に曲げる。

 アルエットちゃんは下りてきた相手の襟首に手をかけると、そのまま投げて背中から地面へ叩きつけた。


 レオへ三人一斉に襲い掛かるチンピラ達。

 レオは後ろから放たれた蹴りを避けた上に、腕に抱え掴む。

 上体を後ろへ捻りながら肘を後ろのチンピラへ見舞うと、前方から殴りかかってきたチンピラ二人へ向けて、チンピラの体を振り回した。

 二人のチンピラを巻き込みながら、その体を投げる。


 助けなくてもいい気がしてきた……。


 そういうわけにもいかんけど。


 私は乱戦の中に飛び込んだ。


 最初こそ、謎の人物の乱入に驚いた二人だったが、私がチンピラを相手にしている事を知ると共闘してくれる。


 そうして力を合わせて戦うと、一分経たずにチンピラ達を全員倒した。

 倒れたチンピラ達の関節を外す。


「助かりました。あなたは?」


 レオパルドがお礼を言い、訊ねてくる。


「アイアム サブミッションデーモン(私は妖怪・関節外しです)」

「えっ」


 アルエットちゃんが「あなたが、あの?」という様子で驚く。

 そうだ。

 君が子供の頃に憧れていた妖怪・関節外しだ。

 だから、断じてクロエ・ビッテンフェルトではない。


 なんてね。


「冗談だ」


 答えると、何だこいつという顔でレオに見られた。

 お姉ちゃんをそんな目で見ないで……。


 私は印章を見せる。


「国衛院の者だ。町の治安活動を行なっている。君達は国衛院の本部へ行きなさい。そこが避難所になっている」

「は、はい。でも……」


 アルエットちゃんが返事をし、けれど言いよどむ。


「何か?」

「家族を探しているんです。こんな状況になってしまって、安否が心配で……」

「ティグリス先生か……」

「え? どうして?」

「あ、いや……」


 おっと、失言だった。


「知り合いだ。国衛院という仕事柄、将軍とその身内の知識はある。君達の事も当然知っている。だからそちらは任せて、君達は避難しなさい」

「でも……」

「大丈夫だ。必ず見つけて国衛院へ向かうように伝える」

「……わかりました。お願いします」


 二人は私に頭を下げて、国衛院へ向かった。


 さて、ティグリス先生とマリノーとゲパルドくんか……。

 探す人間が増えた。


 先生なら大丈夫だと思うけれどね。


 二人のいた場所から考えて、恐らくティグリス先生の家へ向かっている途中だったのだろう。

 両家の家の丁度真ん中あたりの位置だ。

 そんな二人の道程を継ぐように、私はグラン家へ向けてバイクを走らせる。

 それからほどなくしての事。


 また誰かが戦っているような音を聞いた。

 そちらへ向かう。


 どうやら、現場は路地の奥らしい。

 私はバイクを脚部装甲へ変形装着する。

 家屋の屋根へ魔力縄クロエクローを引っ掛けて上へ登った。

 屋根の上を走って、音のする方向へ向かう。


 すると、家屋の建ち並ぶ一角。

 建物に囲まれてできた空間で、一人の男性がタイプビッテンフェルト着用者三人と戦っていた。


 戦っている男性は、ティグリス先生だった。

 近くには、マリノーとゲパルドくんの姿があった。

 ゲパルドくんは、マリノーを庇うようにして戦いの場から少し離れた所で立っていた。


 ハイスピード解決である。

 恐らく、ティグリス先生もアルエットちゃん達が心配で家のある方向へ向かっていたのだろう。

 互いに両者の家へ向かっていたから、こんなに近い場所で見つける事ができたというわけだ。


 先生はタイプビッテンフェルト着用者を相手に苦戦しているようだ。

 善戦はしているが、押されている。


 それを見ているゲパルドくんの表情は険しい。

 いつものトロンとした可愛い彼ではなく、怒っている時の顔だ。


 それでも戦いに参加しないのは、マリノーを守らなければならないという気持ちがあるからか……。

 もしくは、先生に守るよう言いつけられたからかもしれない。


 腹を殴られ、先生は膝を折った。


「ふん。こんな所でティグリス・グランを見つけられるとはな」


 タイプビッテンフェルト着用者の一人が独り言のように言う。


「テメェら、何者だ?」


 苦痛に顔を歪ませながらも、ティグリス先生は相手を見上げて睨みつける。


「お前があの時、クロエ・ビッテンフェルトを助け出さなければ我々は国より放逐される事もなかったのだ」

「なんだと?」

「お前にも恨みがあるって事だ」


 言って、タイプビッテンフェルト着用者は、拳を振り下ろした。

 先生は両腕でガードする。


「くっ」


 だが、受けるだけで精一杯のようだった。


 助けなければ……。


 そう思った時だった。

 路地の影から、誰かが飛び出した。

 ティグリス先生に拳を振り下ろした相手をその人物は殴りつけた。


 その人物はロングコートを着て、口元をマフラーで隠していた。


「ぐっ、何者だ?」


 殴られてよろめきながらも、その乱入者に訊ね返す。


「まったく、何してるんだよ。お前は」


 その人物は答えずに、ティグリス先生へ声をかける。

 声を聞き、ティグリス先生が顔を上げる。


「お前は……ふっ」


 先生は小さく笑う。


「これから巻き返すつもりだったんだよ」

「そうかい。なら、悪い事しちまったな。はは」


 その人物も笑った。


 私は、その人物の正体に思い至る。

 彼は、ナミル・レントラント。

 先生の義兄弟だ。


 私は先生に彼が生きている事を聞いていた。

 確か、国衛院の第二部隊に配属されたのだったか。

 彼も、暴動の鎮圧に回されたって事か。


「一人増えたくらいでどうにかできると思うのか?」


 タイプビッテンフェルト着用者が、嘲るように訊ねる。


「テメェらこそいいのか?」

「何?」


 先生の言葉に、タイプビッテンフェルト着用者は聞き返す。


「数の有利はもうないぜ」


 静かな声で、先生は凄んだ。


「数はまだ、こちらの方が上だ。お前は計算ができないらしいな」

「生憎と、二人共頭は悪い方でな。これでも、十分だと思えちまうのさ」


 そう言いながら、先生は手の指をゴキゴキと鳴らした。


「いや、俺はそいつほど頭は悪くねぇよ。少なくとも計算はできる。俺達はお前ら一人一人の倍は強いんだ。頭数が足りないのはむしろそっちだぜ」


 ナミルさんが先生の言葉に反論する。

 何そのエミユ理論。

 まさか、ここにもあの高度な学問の使い手がいるとは……。


「お前ら、この馬鹿共を黙らせてやれ」


 一人が言うと、他のタイプビッテンフェルト着用者達がゆっくりと先生とナミルさんの方へ歩いていく。


 両者が構えた。


 これは……多分私の出る幕がないな。

 二人とも少し楽しそうだ。

 邪魔すると逆に怒られてしまうかもしれない。


 そう思い、私はその戦いを静観する事にした。

 それからすぐに、私の判断が正しかった事を改めて認識する事となった。


 ガードを固めた相手に掴みかかって強引に膝蹴りをかます、壁に押し付けて滅多打ちにする、倒れた相手の頭が潰れんばかりの強かな踏み付けで追撃する、互いの後ろ回し蹴りで相手の頭を挟み込むように蹴る、などどれもこれも無慈悲なまでの暴力がタイプビッテンフェルト着用者へと降りかかっていた。


 どれもこれも痛そうな技ばかりである。


 ほんまもんのごついおとこ二人に全力で蹴散らされた彼らは、見ていると可哀想に思えるほどの有様となって倒れ伏していた。


 誰もが痣と涎と鼻血と吐血で誰が誰か判別できない。


 最初に計算うんぬん言ってたのはどれだっただろうか?


「少し動きが鈍ってるんじゃねぇか? 攻撃を避けそこなってたじゃねぇか。俺が相手を殴り倒さなきゃ、当たってたぜ」


 ナミルさんが先生に言う。


「お前のために隙を作ってやったんだよ。気持ちよく殴り飛ばせただろうが」


 先生も減らず口を返す。


 そんなやり取りを交し合いながらも、二人は楽しそうだった。


 私はそのタイミングで、二人の前に下り立った。


 二人が私に気付き、構えを取った。


 私は攻撃を仕掛けられる前に、先手を取って印章を見せる。


「国衛院の者だ」


 答えると、二人が警戒を解く。


「どこの隊のもんだ?」


 ナミルさんが訊ねてくる。


「どの隊にも属していない。臨時の人員だ」


 答えると、ナミルさんは眉根を寄せた。

 警戒しているのだろう。


「タイミングからして、俺達が戦っている所をのんびり見てやがっただろう?」

「二人ならば容易く倒せると判断した。楽しんでいるのを邪魔するのは野暮だろう?」


 口元を笑みに歪めて答える。

 すると、ナミルさんも笑った。


「おもしれぇ奴だな。トマスみてぇだ」


 そうか。

 私はチヅルちゃんだけでなく、トマスさんにも似てるのか。

 まさかトマスさんも転生者?


 違うと思うけど。


「あの、もう大丈夫でしょうか?」


 そう言って、マリノーが近付いてくる。

 ゲパルドくんも一緒だ。

 表情がトロンとしている。

 いつものおっきくて可愛いゲパルドくんだ。


 先生がそちらに振り返る。


「ああ。一応は、な。もう、安心だ。ゲパルドも良く母さんを守ったな」

「僕は、何もできなかったよ」

「いや、逃げずにずっと母さんの前にいたじゃないか」


 そう言って、ティグリス先生はゲパルドくんの頭をくしゃくしゃと撫でた。

 ゲパルドくんの顔がほんのりと赤くなる。

 照れているんだろう。

 本当にこの子は可愛らしい子だな。


「とりあえず、国衛院の本部が避難所になっている。そちらに向かってくれ。ナミルさん。送っていってくれるか?」

「俺の事を知ってるのか?」


 おっと、また失言だ。


「国衛院の人間が情報に詳しくてはいけないか?」

「本当に臨時の人間なのか? まぁいい。引き受けたぜ」


 と、そんな時ティグリス先生が口を挟んでくる。


「ちょっと待ってくれ。俺は娘夫婦を探している。その安否がわからないから、俺だけでも捜索を続けちゃいけないか?」


 やっぱり、先生も探していたんだな。


「それなら問題ない。レオパルドとアルエット。ビッテンフェルト夫婦は二人共先に国衛院へ向かってもらった」

「そうなのか。無事なんだな」

「ああ」

「ありがとう」


 先生は頭を下げた。


 それから、タイプビッテンフェルト着用者から水晶と関節を外した。

 そしてすぐに移動する事になった。

 とりあえず、路地を抜けるまで私もついていく。


 ナミルさんと先生が先頭、その次にマリノーとゲパルドくん、そして殿しんがりに私が配置された列を作り、路地を歩く。


 ふと、先頭の二人がヒソヒソと何か話しているのが見えた。

 距離があり、しかも声を潜めているので何を言っているのかわからない。


 そんな時、ジ・アバターが私の耳元に囁く。


「見るのは初めてだが……。お前、犯罪だろ」

「何が?」


 そんなやり取りをジ・アバターは伝えた。

 どうやら、前の会話が聞こえるらしい。


「歳が違い過ぎるじゃねぇか」

「そうだな。それは言い訳のしようがない」

「それにあのボリューム……。コトヴィアと一緒になったお前の事だから、特殊な趣味があるんだと思っていたが……。違ったんだな」

「そんな事を思っていたのか。お前」


 先生もこんな話するんだね。


 それにしても……。


 私は先生とナミルさんの背中を見る。


 一度袂をわかった二人が、こうしてまた同じ方向を向いて並び歩いている。

 それを見ると、少し嬉しかった。


 路地を出る。


「じゃあ、あとは頼む」

「ああ。任せろ」


 私が言うと、ナミルさんが答えてくれる。


「あなた方も、気をつけて」

「ああ。ありがたい」

「ありがとうございます」

「ありがとうございました」


 グラン家の感謝を受けると、私は脚部装甲を肩部装甲へ変形させる。

 家屋の屋根へ魔力縄クロエクローを引っかける。

 魔力縄を腕のタイヤに巻き付ける事で、高速で巻き取る。

 その勢いを借りて、空高く舞い上がった。


 マントを広げ、夜空を飛ぶ。


 きっとこの暴動は影が扇動したものだろう。

 そして、数名のタイプビッテンフェルト着用者が町に出て活動している可能性がある。


 そのため、思うように暴動が収束しないのだ。


 この暴動を治めるためには、町に出ているタイプビッテンフェルト着用者も倒す必要がありそうだった。




 タイプビッテンフェルトの数、残り13着。

 エミユ理論で考えれば、先生とナミルはだいたい2ビッテンフェルトくらいでしょうか。

 合わせて4ビッテンフェルトなので、1ビッテンフェルト×3では勝てません。

 あ、でも補助機能が馴染んでいるので、今のタイプビッテンフェルト着用者は1.5ビッテンフェルトくらいあるかもしれません。

 だったら、先生達も3ビッテンフェルトくらいあるのかも……。

 今のタイプビッテンフェルト着用者を軽く蹴散らせるクロエは、7、8ビッテンフェルト以上ありそうですね。

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