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十六話 再会

 修正致しました。

 ご指摘、ありがとうございます。

「ザクルス公爵は、典型的な貴族主義者だ。彼は平民出身のグラン子爵とビッテンフェルト公爵を嫌っていた。まぁ、そういう人間は珍しくないのだが……」

「父上が嫌われているのは、ティグリス先生と親しくしているから?」

「いや。ザクルス公爵の場合は、それ以前からビッテンフェルト公を嫌っていたよ。何せ、魔法を貴族の権威の象徴として認識している方だったからね」


 魔法とは一部の例外こそあれど、本来は貴族だけが使える技術だ。

 平民と貴族の明確な差と言ってもいいものである。


 それを誇りに思うという貴族は多そうだ。


「魔法主義だから、父上を嫌うのですか? どうして?」

「ビッテンフェルト公が、闘技を戦の技術として確立させたからだ」

「闘技の技術?」

「闘技とは、元来平民が使う技術だからな。ビッテンフェルト公はその技術の有用性を実戦で証明した。その活躍は、それまで戦の主役だった純粋な魔法使いの戦い方を過去の物にしてしまったのだ」


 父上が闘技の有用性を実証した事で、アールネスの戦略は変わった。

 それまで放出系の魔法を撃ち合う戦争が主流だったが、父上の活躍を知った王様は闘技を主流とするように軍の様相を改革したのだ。


 その後に起こった南部との戦争で闘技者の部隊は戦果を挙げ、その地位は確固たる物となった。

 それに比例して、放出系魔法使いの部隊は縮小している。

 とはいっても、比率は闘技系軍人の方が少し多いくらいなのだが。

 今までが、放出系魔術師ばかりだったので大規模な縮小に思えるだけだ。


「今では、宮廷魔術師よりも軍部の予算の方が勝っているしな。それも気に入らんのだろうさ」

「財務担当なのでしたら、好き勝手に予算を回せるのでは?」

「フェルディウスがそのような事を許すとでも?」


 お義父とうさんか……。

 実利ではなく、私的な理由で予算を動かす事を許しそうにないな。


 各部門から上がってくる報告書を隅々までチェックし、おかしな数字がちょっとでもあればその都度呼び出して追及するという噂があるけど本当だろうか?


「そして、今回の事は軍部の権威を失墜させる事も目的とされているのだろう」

「父上も先生も、軍の中では有名ですからね」


 父上が、目をかけていた平民の軍人に殺される。

 それは大きなスキャンダルとなるだろう。


「そうなれば、予算配分の見直しや平民の管理職就任禁止法も堂々と陛下へ提言できる。そうなれば、彼にとって目障りなものはすべて消える。まぁ、正体が知れた以上、もうそんな事はさせぬがね」


 アルマール公の表情が悪辣な笑顔に変わる。


 その表情を柔和な笑みに変え、話を続けた。


「まぁ、とにかく。これであとは、証拠を確保してザクルス公爵を捕らえるだけだ。グラン子爵には、容疑が晴れるまでここにいてもらう事となるが……。それが済めば、全て解決だ」


 なら、もう全部終わったって事なんだろうか。

 先生の無実は証明されて、逃げる必要もないって事なのか。


「ちょっと待ってくれ。まだ聞いてない事がある」


 先生が口を挟む。


「何だね?」

「俺の家族は、どこだ?」


 先生はアルマール公に訊ねた。


「そうだな。そろそろだ」


 けれど、アルマール公はそれに答えず、そんな言葉を呟く。

 ほどなくして、入り口の扉がノックされた。


「入りたまえ」


 アルマール公が答えると、扉が開かれて数人の男女が入って来た。

 先頭にいたのは、イノス先輩だ。

 そしてその後ろに連れられていたのは……。


 先生が大きく目を見開く。


 部屋に入って来たのは、マリノー……。

 それだけじゃなく、アルエットちゃん、レオパルド、ゲパルドくん。

 先生の家族達だった。


「マリノー!」

「あなた!」


 ティグリス先生がソファーから立ち上がり、マリノーが走り寄る。


 互いに近寄り、そして抱き合った。


「よかった……。無事で……」

「あなたこそ……」


 私はアルマール公を見る。


「人質にされると困るので、一足先に保護させてもらっていたんだ」

「そうだったのか……。ありがとう。本当に……。俺の家族を守ってくれて」


 先生がアルマール公に礼を言う。


 実際、先生の家は虎牙会の人間に荒らされていた。

 人質にする意図はあったのだろう。


 そうして、先生に罪の自白を迫る算段だったのだろう。

 いや、それだけじゃないかもしれない。


 先生に聞いた話だが、虎牙会の当初の目的は先生を捕まえる事だったらしい。

 しかし、その後事情が変わったからと命を狙われるようになった。


 タイミング的には、父上が死んだという話を聞かされた後だ。

 あれは、家族を人質にとって実際にティグリス先生を父上への暗殺者へ仕立て上げる意図があったのかもしれない。


 だから、ティグリス先生が父上暗殺の容疑者とされた時点で用済みになった。


 多分、そういう事だろう。


 どうであれ、アルマール公が保護してくれていなければ、先生の家族は危険な目に合っていただろう。


 でも、本当によかったよ。

 先生。

 家族と再会できて。




「そういえば、肝心の偽装はどうやったのです? マリノーの指輪は本人から借りたとして。ルクスは父上の死体を見たはずです」


 私はアルマール公に訊ねた。

 疑問に思っていた事だ。


「ルクスが見たのは死体の化粧を施し、死んだふりをしたビッテンフェルト公だ。死体のふりをしてもらって、ここへ運び込まれてもらったからね」


 ルクス……。


 私がルクスを見ると、目をそらされた。


 父上渾身の死んだふり、か。

 もしかして、かなりリアルだったのかもしれない。


「念のために、暗殺計画の時に捕らえた暗殺者の名前を使ってダストンに情報を流した。

 暗殺の成功と、グラン子爵に罪を着せるためグラン子爵の名が入った夫人の指輪を現場に置いた、という旨の内容の手紙を送っておいた。

 身柄を要求されては困るので、夫人当人は殺してしまった事にしてね」


 裏で本当にいろいろ動いていたんだなぁ、アルマール公。


「それで、俺達はいつまでここでじっとしていればいいんですか?」


 先生がアルマール公に訊ねる。

 アルマール公は顎髭あごひげを撫でる。


「念のため、ザクルス公爵の罪を公にするまでいてもらいたいね。なかなか手ごわい相手だから、ざっと一ヶ月は見積もってほしい所だ」

「一ヶ月……。長いな……」


 ティグリス先生は顔を顰める。


「何で、そんな連中のために俺の家族がここでじっと耐えなきゃならねぇんだ」

「あなた……」


 先生の言葉を聞き、マリノーが呟く。


 確かに、先生の気持ちはもっともだ。

 悪いのは向こうなのに、どうしてそんな連中のために家族が割りを食わなければならないのか。


 不公平な気がしてならない。


「申し訳ないね。彼が関与した、という証拠品があまりにも揃わないんだ。身分も高いから、無理やり屋敷へ踏み込む事も難しくてね……」


 踏み込めればいいの?


「一つ聞いていいですか?」


 私はアルマール公に訊ねる。


「いいとも。何だね?」

「今の私達はまだ、おおやけには容疑者なんですよね?」

「そうだな」

「なら、私達がそのザクルス公爵の家で暴れれば、それを捕まえる名目で踏み込めませんか?」


 かつて、私がある貴族の汚職を暴くために漆黒の闇(略)として屋敷へ侵入した時と同じように。


 提案すると、アルマール公は笑う。

 もしかしたら、私がこう申し出る事を見越していたんじゃないだろうか?


「可能だ」


 私は先生を見る。

 先生もまた、私を見た。


「私は行きますけど。先生はどうします?」

「行くに決まってるだろ?」


 私と先生は互いに笑い合った。


 今まで、私達は逃げ回る事しかできなかった。

 でも、次はこちらから攻め込む番だ!

 一応、裏側に関しては全部書いたつもりです。

 ただ、書いていて混乱したので書き損じなどがあるかもしれません。

 何かおかしな所があればご指摘いただけるとうれしいです。

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