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閑話 三日前

 あとがきを加筆致しました。

 ある休日の事。

 その日はアルディリアが非番で、夫婦三人で町へ繰り出していた。


 デートである。


「こうして、三人揃って出かけるのは久し振りだね」


 アルディリアが言う。


「そうだね。アルディリア、頑張ってるからね。父上も褒めてたよ」

「本当? 嬉しいな」


 言うと、アルディリアは笑う。


「私はむしろ、普段の方がいいけれどね。その方がクロエと二人きりでいられるし」

「酷いや」


 そんなアルディリアに、アードラーが言う。


 そう言いなさんなよ。

 女三人寄ればかしましいっていうじゃない。


 一人はオネエだけどな!


 そうして三人で色々な所へ行って、楽しい時間を過ごしていたのだが……。


「きゃー、ひったくりよーっ!」


 と、そんな悲鳴が上がった。

 見ると、倒れる女性の姿があった。

 女性は手を前に伸ばしており、その手の先に走り去る男の姿があった。


 これは捕まえなければ!


 そう身の内にある正義の心が騒ぎ、颯爽と走り出す私。


「「クロエ!」」

「大丈夫!」


 驚いて叫ぶアルディリアとアードラーに返し、私は男を追った。


 男は私に追われている事に気付くと、路地の中へ逃げていった。

 その路地を進むと奥は壁になっており、行き止まりだった。

 男は身軽で、壁に飛びついてそのまま家屋の屋根へ飛び移った。


 やるな。


 そう思いつつ、私は路地の側面の壁を蹴って某カンフー映画のように壁を上る。

そして同じく家屋の屋根へ飛び移った。


「待てーっ!」

「なっ」


 ここまで追ってくるとは思わなかったのか、男は驚きの声をあげた。

 さらに足を速め、屋根を駆けていく。


 屋根から屋根に飛び移り、私もそれについて追っていく。

 逃げ切れないと思った男は、通りを跨いだ先の屋根へ飛んだ。


 その距離、五メートルほど。

 下には、石畳の通りを歩く人々が見える事だろう。


 落ちれば怪我じゃ済まない高さだ。


 通りを跳び越えて屋根に着地した男はごろりと前転してから起き上がり、再び走り出した。


 私も躊躇いなく通りを跳び越える。

 ごろりと転がってから立ち上がって走る。


「待てーっ!」

「嘘だろっ!」


 驚きの声をあげる男。

 だんだんと、私と男の距離が詰まっていく。


 どうやら逃げ切れないと悟ったのか、男は屋根から下りていった。

 また路地を逃げるつもりかと思ったが、下りてみると男は立ち止まっていた。


 そこは十字路になっており、男はその真ん中にいた。


「観念しろ!」


 男に近寄って言う。


「いや、観念するのはお前の方だぜ!」


 しかし、男はそんな事を言った。

 すると、男の声と同時に四方の路地から十名以上の男達が姿を現した。


「やっちまえ! おまえら!」


 男の合図で、男達が襲いかかってきた。


 私はその男達を相手に構えを取る。


 フライングクロスチョップ。

 フランケンシュタイナー。

 フライングDDT。

 ハリケーンラナ。

 ムーンサルトフットスタンプ。


 と、華麗な技を駆使して男達を倒していった。


 そして、最後に今まで追っていた男一人になる。


「さぁ、観念しろ!」

「くそぉ! 何でこんな事になってんだよ!」


 言いながら男はこちらに突撃してくる。

 その手には、銀色に光るナイフが握られていた。

 私の腹部を狙ってナイフが突き出される。


 危ないっ!


 が、私はそのナイフの腹を指で摘んで止める。


「何ぃ!」


 男を殴り、気絶させた。

 ふぅ、これで終わりだ。


 私は倒した男達の関節を外していくと、国衛院を呼ぶ狼煙を上げた。


 でも、ちょっと疲れたな。

 昔はこれくらいじゃ全然疲れなかったのに……。

 体が重いんだよねぇ。

 私も歳かな?


 なんて思っていると、ルクスがこっちに向かって走ってくるのが見えた。

 私服な所を見ると、多分非番だったんだろうな。

 その後ろには、アルディリアとアードラーの姿も見える。


「おーい、こっちだよ」


 笑顔で手を振る。

 みんながこっちに近付いてくる。


 あれ?

 みんななんでちょっと怖い顔してるの?


「お前! 馬鹿じゃねぇのか!」


 ルクスが怒鳴り、私の頭に拳骨を落とした。


 ホワイッ?

 何で怒られたし?


「何するんだ(のよ)!」


 アルディリアとアードラーが、ルクスの顔を挟むように殴った。


「……すまん、つい。でもなぁ……」


 ルクスが二人に謝る。


「わかってるよ。言いたい事は」


 アルディリアがこちらを向く。


「ルクスが怒るのも当然だよ。何考えてるの?」


 珍しく怒った調子で言うアルディリア。


「そうよ。何考えてるのよ! 馬鹿じゃないの!」


 アードラーも怒る。


 うう……。

 良い事したはずなのに、何でこんなに怒られてるんだろう、私。


 いや、本当はわかっているんだ。

 三人ともなんで起こっているのか。


 私は自分のお腹を見た。

 スイカが丸々一個入っていそうなくらいにそのお腹は大きくなっている。


 太っているわけじゃない。

 中に、赤ちゃんがいるからだ。

 私は、妊娠していた。

 しかも、もうすぐ生まれるのである。


 それは、ヤタが生まれる三日前の出来事だった。

 良い妊婦は真似しないでください。

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