ネコと赤ちゃん3
ぼくがごはんを食べていると、ご主人様が電話で話をしていた。
「そうなんだ~。気になるね~。じゃあ今日は、お家においでよ」
ご主人様は、ぼくをチラリと見た。
「分かった。気をつけて来てね」
そう言うと、ご主人様は電話を切った。
どうやら誰かが来るらしい。
ぼくのことを見たくらいだからぼくに会いたがっている人?
あの様子だと、いつもの子どもたちじゃなさそう。
まぁいいにゃん。いずれにしても今日は来るんだから。
そのときに分かるはずにゃん。
そう思いつつ。お腹が膨れたぼくは
「スピピ~。スピピ~」
と眠ってしまった。
しばらくすると、
「肉まん。肉まん」
とぼくを呼ぶ声が聞こえた。その声は女の子で、今までに聞いたことがない声だった。
けれど、眠かったぼくは目を開けることなく眠ることにした。
すると、
「肉まん。肉まん!」
突然、ぼくの身体をユサユサと揺らした。
「痛いにゃん!」
突然のことで悲鳴を上げた。
どうやら、ぼくをどうしても起こしたいらしい。
手の大きさからして、子どもであることには間違いないけど、
いつもの子どもたちじゃない。もっと小さい子。
しかもあの声からして女の子。
そんな子どもいたっけ?
いつも来る親戚の子どもはみんな男の子だし、
それ以外に子どもって……。
あっ! もしかして。
「パチッ」
ぼくは目を開けた。
すると、目の前にいたのは思った通り、カナちゃんだった。
カナちゃんは、ご主人様のお友だちのリカちゃんの子ども。
たまに遊びに来てくれる。
そしてよく、シッポをかじられたり、握られたりされたことがあったから
よーく覚えている。
目を覚ましたぼくを見て、
「肉まん。肉まん」
ニコニコしながらぼくの名前を呼んだ。
「もしかして、カナちゃんがぼくの名前を呼んだの?
カナちゃんがしゃべってる!!」
これまでのカナちゃんは言葉を話すことができないくらいの
赤ちゃんだった。
驚くことはまだあった。
ふと、カナちゃんの足元を見たときにソレに気がついた。
「カナちゃんが立っている!」
今まで立ったことなんて一度もなかった。
「きみも驚いた?」
ご主人様がぼくを見て言った。
「リカちゃんから電話があって、カナちゃんが”肉まん”って言うようになったってね。
それで、きみに会いたくなったんじゃないかって思って来てくれたんだよ」
「最近は、お話もするようになったし、一人で立つこともできるようになったの」
リカちゃんは嬉しそうに言った。
へ~え~。そう言われたら、カナちゃんは前よりも大きくなっていた。
「カナちゃん。コッチヘおいで。ゼリーを食べよう」
リカちゃんがカナちゃんにおいでおいでと手招きすと、
嬉しそうにカナちゃんの方へ歩いて行った。
どうやら、カナちゃんは言葉が分かるようになったらしい。
イスに座ると、リカちゃんはカナちゃんにスプーンを持たせた。
スプーンでゼリーをすくって食べている。
以前は、スプーンがうまく使えなくて、手づかみで食べていたにゃん。
エライにゃん。一人で食べられるようになったにゃん。
どうやら、着実に成長しているらしい。
ゼリーを食べ終わると、
「肉まんー」
ぼくの名前を呼んだ。そして、カナちゃんはぼくのところに来て、
ニコニコしながら、
「バシバシッ」
と叩いた。
「痛いにゃん」
悪気はないのだろうけど、愛情表現はもっと優しくして欲しい。
「カナちゃん。叩いちゃダメだよ。優しく触るんだよ。こうやってそーっと」
リカちゃんはぼくの背中をソッとなでた。
リカちゃんのなでかたはゆっくりとで気持ちよかった。
するとカナちゃんは、
「バシバシっ」
と叩いてきた。
「痛いにゃん」
ぼくは鳴いた。
「カナちゃんにはまだ難しかったかなぁ」
リカちゃんはカナちゃんの手を優しく握り、カナちゃんの手でぼくの背中をそーっとなでた。
「ソレにゃん。力加減は。カナちゃん。分かった分かったかにゃ?」
リカちゃんがカナちゃんの手を離すと、
「バシバシっ」
また叩いてきた。
「痛いにゃん」
まだ加減が分からないみたいだにゃん。
けれど、カナちゃんはご機嫌がよいのかニコニコしている。
悪気がないのは分かるけど、痛いのはニガテだにゃん。
これがいつもの子どもたちなら起こるけど、カナちゃんなら仕方ない。
まだ赤ちゃんだし。叩いているんじゃなくて、
力の加減ができないだけなのだろうから。
「まだ、カナちゃんには難しいのかもしれないね。加減の仕方が」
ご主人様は言った。
カナちゃんは疲れたのか、しばらくすると眠ってしまった。
カナちゃんは暖かくて、隣にいるだけでぼくもつられて
「スピピ~。スピピ~」
と眠ってしまった。
しばらくすると、
「ガブッ」
ぼくはシッポに違和感を感じ、ハッと目が覚めた。
シッポを誰かにかじられたっぽい。
「ギュ~」
今度は、シッポを握りしめられた。
「痛いにゃん」
シッポを握っているのはニコニコしているカナちゃんだった。
やっぱりまだカナちゃんは赤ちゃんだにゃん。
まだ成長の途中。
ぼくのシッポをかじるのも握りしめるのも、
いつになったらやめてくれるかにゃ~。
「ギュ~」
「痛いにゃんっ」
《終わり》




