ネコと神社
「いざ、出陣!」
掛け声とともに、鎧を着て馬に乗ったの人たちがたくさん野原を走っている。
その中で一番前にいるのは、前田利家。槍を持った姿は勇ましく、敵陣に向かっている。
※前田利家とは、安土・桃山時代の武将。加賀藩の基礎を作った人物。
「前田利家カッコいいにゃん」
ぼくは、この歴史ドラマを見ながらいつも思う。そして、前田利家役を演じている猫坂なおはやっぱりカッコいい。
参照。https://ncode.syosetu.com/n2168cy/79/
「きみー。本当に前田利家が好きだね。このドラマ、『前田利家の華麗なる物語』は5回目だよ。よく、同じドラマ見て飽きないよね」
少し、呆れ気味のご主人様。でも、気にしないにゃん。
カッコいいものは何度見てもカッコいい。ぼくはテレビをじーっと見ていた。
すると、ご主人様は意外なことを言った。
「そんなに好きなら、見に行く?」
「えっ。見られるの?」
ぼくはビックリした。けど、すぐにおかしいと思った。
「そんなわけないじゃん。歴史上の人物でしょ?って顔をしているね」
だって、そうじゃない。歴史上の人物だもん。どこにいるというのかにゃ。
さては、博物館にゆかりの品があるから、それを見に行くってこと?
それとも美術館に前田利家の絵があるの?
それとも、前田利家に似ている人がいるから、その人に会いに行くってことだったりして……。
ぼくの顔を見て、行くことを判断したらしく、
「じゃあ行くよ」
ぼくは、ご主人様の車に乗った。
車は近江町市場を通り、香林坊の近くまで来た。
「こんな町中にいるなんて、やっぱり、誰かと待ち合わせしているのかも」
そんなことを考えていたら、車を止め、少し歩くと、
「着いたよ」
足を止めると、目の前には鳥居があって、その中をのぞくと3階建ての洋風の建物が見えた。
「鳥居があるから神社なのかなぁ」
と思いつつ、
鳥居をくぐり、石畳の階段を上ると
1階は、入口が3つのアーチ形になっていて、3階には、キレイなガラスがはめられている。
「あのガラス、キレイでしょ。ステンドグラスっていうんだよ」
赤とか青とか色々な色があってキレイだった。
「ココは、なんていうところなの?」
ぼくはご主人様の顔を見ると、理解してくれたみたいで、
「尾山神社っていう神社なんだよ」
ご主人様は言った。
やっぱり神社なんだね。
神社なのに、洋風っぽいにゃん。レンガの所もあれば、木材のところもある。
不思議な感じがした。
「尾山神社は、前田利家を祀っている神社で、重要文化財に指定されていんだよ。3階のてっぺんに細長い棒が立っているでしょ。
あれはね、“避雷針”と言って、落雷から建物を守てくれるものだんだけど、
日本国内では最も古いものなんだって」
「へ~え~」
すごいものが金沢にあるんだね。
知らなかったにゃん。しかも、こんな町中に。
境内を歩いていると、
「ココにいるよ。きみが大好きな前田利家が」
そこには、今にも走り出しそうな馬に乗った
槍を持った前田利家の彫刻があった。
確かに、前田利家はいるにゃん。
ご主人様はこのことを言っていたんだね。
ドラマとは違う感じだけど、この像もかっこいいね。
ぼくたちは、神社をあとにした。
車に戻り、市内をブラブラしていたら、夕方になった。
すっかり、日も落ちたころ、ご主人様は車を止めた。
車ら降りて歩くと、着いた先は尾山神社だった。
「どうしたの。忘れ物でもしたの?」
けど、こんなに暗かったから、落としたものは分からないかもしれないにゃん。
ご主人様を見ると、忘れ物を取りに来たって雰囲気ではなさそうだった。
じゃぁどんな用があるのかなぁ。
すると……。
「さぁ。そろそろかな」
ご主人様は腕時計を見た。
「どうしたのかにゃ。何かあるの?」
「アレを見て」
ぼくはご主人様が見ている方向を見ると、
「わー。キレイ」
ステンドガラスがライトアップして、さっき見たときよりも光っている。
「夜になると、ライトアップされるんだよ」
昼間は自然な光がステンドグラスを照らし、夜は幻想的な光がステンドグラスを照らしている。
不思議でステキがいっしょに見られる神社。
また来ようね。
ぼくたちは、尾山神社を後にした。
《終わり》
猫坂なおの話は、ネコと百万石まつりにて書いています。https://ncode.syosetu.com/n2168cy/79/