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ネコのお正月6

大トロ、タイ、ブリのお刺身も捨てがたいけど、

エビ、数の子、紅白かまぼこ、ハム、鶏照り焼き……

「なんて魅力的なんだろう。おせちはいつみてもおいしそうだにゃ!」


 彩りがきれいでおいしそうだし、おせちが入っている箱は高そうな箱っぽいから、

まるで宝石箱みたいにゃん。


「ジュルジュル」


見ているだけで、よだれが出てしまう。


 普段、煮干しには興味がないけど、

おせちの煮干しは、おしゃれに盛りつけられているから、

そそられてしまう。

おしゃれな煮干しは、田作りとか、ごまめって名前になるらしい。

一品の量は少なくても、たくさんの種類が入っているから、

色々な味が楽しめてうれしい。


見ても満足。食べても満足。

その上、日持ちもするらしいから、

おせちは素晴らしいお料理。


けど、ぼくは食べさせてもらえない……。

人間の食べ物とネコの食べ物は違うからね。

せめてお刺身だけは食べたい!


去年は、大きめのお刺身をくれたけど、今年は、どうだろう。

くれた理由は、風邪を引いて食べられない子どもがいて、

その子の分が回ってきたからだった。


 子どもたちをチラリと見たら、

どの子もお年玉をもらって大喜びをしながら、

元気に部屋を掛け回っている。どの子も病気をしているようには見えない。

「今年はお刺身をもらうのは無理かもしれない。

けど、ぼくはどうしても食べたいにゃ! どうやったらもらえるかにゃ~」


と考えていた。


「今年こそはご主人様がダイエットをがんばるから、自分の分をお刺身をぼくにくれる」


とか


「実は、お刺身を買いすぎて、食べ切れないからぼくにもくれる」


 とか


「子どもたちがぼくに気をつかってお刺身を分けてくれる」


 みたいなことがあればぼくは食べることができるけど……。


「う~ん。どれも現実的ではないにゃ~」


こうなったら、「お刺身ちょうだい!!」

とお祈りしてご主人様に熱い念を送るしかないかも~。



それからほどなくして、ご主人様は、ぼくのお皿を運んできてくれた。


「あっ!」


 はしっこの切り身と大き目のお刺身が入っている。

「今年も、一人前のお刺身が入っているにゃん!」


 ぼくは嬉しかった。

「ありがとう。ご主人様~!」


 去年よりは量が少ないけど、ぼく用に用意してくれたことがとても嬉しかった。

 去年はあげて、今年はあげないのはかわいそうと思ったのかもしれない。


 けど……。

ぼくは、おせちをチラリと見た。


やはり、おせちはくれないみたいにゃ。

お刺身だけじゃなく、おせちも食べたいけど、

ここでダダをこねたら、お刺身すら食べられなくなってしまうかもしれないから、

やめておこう。


 ぼくは定位置である、ストーブの前で、

キャットフードとお刺身を食べて、すっかり満足してしまった。


「スピピ~。スピピ~」

 

ぼくは気持ちよく眠っていた。

すると、

「ギュ~」

「痛いにゃ!」


 ハッと目を覚ますと、子どもがぼくに抱きついて寝ている。

「ぼくは抱き枕じゃないにゃ! いくらぼくのことが好きだからって、

そんなに抱きつかないでにゃ!」


お年玉をもらって、はしゃいでいた疲れと、

おせちを食べてお腹がふくれたせいか、この子どもは眠くなったらしい。

それで、ぼくの隣で寝てしまったみたい。

ここにはストーブが近くにあるから、この場所を選んだっぽい。

「ゴロン」

 

子どもは寝返りをして、抱きしめていた手からぼくから離した。

「よかったにゃん。これで安心して眠れる!」


 ぼくはホッして、

「スピピ~。スピピ~」


と眠った。


 しばらく寝ていたら、


「バシっ」

「痛いにゃ!」


 今度は、反対側にいた別の子どもの手がぼくの顔当たり、痛い。

さっきは気づかなかったけど、どうやらぼくは子どもたちに囲まれていたらしい。


「う~。困ったにゃん」


と悩んでいたら


「バシっ」

「痛いにゃ!」


今度はぼくのお腹に平手打ち。

「寝ているときでもぼくに危害をくわえるなんて、

なんて、おそろしい子どもたちにゃっ!」


モゾモゾと身体を動かして脱出を試み、部屋の隅までなんとか逃げ出した。


「は~。ここなら大丈夫にゃん。いくら寝相が悪くても、

こんなところまで転がってこないはずにゃん」


ぼくは安心して目を閉じた。

しかし……


「んにゃ?」

 背後に人影を感じ、振り向こうとした瞬間!


「ギュ~」

 

 ぼくは身体を掴まれた。


「何ごとにゃ!」


 どうやら、さっき寝ていた子どもとは違う子どもがぼくのことを捕まえたらしい。

まだ他にも子どもがいたことをすっかり忘れていた。

「にゃ!? ぼくも遊びに混ぜてだって?

ぼくは遊んでいたわけじゃないにゃん! 安眠妨害されていたのに~」


そうとは知らない子どもは、目をキラキラ輝かせながら、ぼくを見ている。


まるで、

「ぼくと遊んで!」


 と訴えかけているみたい。


「そんな目で見ないでにゃん……」

 

こうゆうのにぼくは弱い。


「コロコロコロ」

 

子どもは手に持っていたボールをぼくの足元に転がしてきた。

仕方がないから、ぼくもボールを転がし返した。


すると、子どもはニコニコしながらまたぼくにボールを転がしてくる。

「にゃん♪ やっぱりボール転がしは楽しいにゃん! 眠いけど、今日は特別にぼくが遊んであげるにゃん」


しばらく遊んでいたけど、そのうちぼくらは疲れて、いっしょに眠ってしまった。

少し時間がたったくらいに、怪しい笑い声がしてぼくは目を覚ました。


「んにゃ? とても怪しい笑い声に」


 隣にさっきまでいっしょに遊んでいた子ども寝ている。

どうやら声の主はこの子みたい。


「なーんだ。ただの寝言みたいにゃん」


 ぼくは再び眠りについた。


「うにゃ!?」


 今度は怪しい歌声が聞こえてくる。どうやら寝言で歌を歌い始めたみたいにゃ。

「うるさいにゃん!」


 どうやらこの子は寝言が激しい子どもみたい。

「寝相が悪い子も大変だけど、寝言が激しい子どもも困るにゃん。

寝ているときまで、ぼくの邪魔をするなんて~! やはり、子どもは恐ろしいにゃ……」


 寝顔は天使のようにかわいいのに。

「もう、こうなったら、反撃するにゃ!」

「にゃ~!!」


と大きな叫び声を上げた。

 すると、

「ゴツン!」

「痛いにゃ!」


ご主人様にさわがしいと頭を叩かれてしまった。

うぅ~、ぼくは被害者なのに……。

「今年も散々なお正月にゃん」



《終わり》



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