ネコと静電気
ホットカーペットの上でゴロゴロとしていたら、
子どもたちが部屋に入ってきた。
そして、近づいてきた。ぼくはいやな予感がした。
いつものようにちょっかいを出してくるに違いない。
そして、子どもの一人がぼくの毛並みに触ると、
「バチッ」
と音がして、
「痛い!」
子どもが声を上げた。
「どうしたのかにゃ?」
子どもが痛がっている。ぼくにはどうして痛がっているのか分からなかった。
さっき、ぼくに触ろうとしたよね。
けど、ぼくには何もなくて、子どもだけが痛がっている。
それにバチッと音がした。あの音は何?
「静電気だよ」
ご主人様が言った。
静電気は、乾燥しているところで起こる現象で、触ったり、こすったりすると静電気が起きやすいらしい。
特に、今の時季は起きやすいんだって。
ネコは、静電気を溜めやすいらしい。
へ~え~。それなら、これに懲りて、ぼくに触ったりすることは控えるはず。
しかも、ネコは静電気を感じずらくて、痛くないんだって。
だから、痛くなかったんだ。
「よかった~」
と、安心していたら、子どもの一人とご主人様は何か話をしていた。
すると、二人はリビングを出て行った。
リビングに残っている子どもの一人が、何かひらめいたらしく、
「じゃあ直接触らなければ大丈夫だよね」
子どもの一人が持ってきたバッグからノートを取り出し、はさまっていた下敷きを取り出した。
何をするのだろうと思っていたら、ぼくに近づき、ぼくの背中をゴシゴシとこすった。
すると、
「あー。毛が立ったー!!」
ぼくの毛は逆立っていた。
「にゃー。遊ばないでにゃん」
子どもたちぼくの毛を見て面白がっている。
直接ぼくの毛を触らなかったから、静電気は起きなかったみたい。
こうなったら、ぼくから触って、子どもたちにお仕置きするにゃん。
「にゃー」
ぼくは、子どもたちに飛びかかった。
すると、子どもの一人が、バスタオルを持って戻ってきた。
そしてぼくを捕まえた。タオルで包むように。
そのバスタオルは、濡れていて少し気持ち悪かった。
「放してにゃん!」
ぼくは、ブルブルと身体を振るって抵抗した。
すると、バスタオルから解放された。
ただのタオルならまだしも、どうして濡れタオルで捕まえられたのだろう。
ぼく、お外に行ったわけではないから、身体は汚れていないのに。
それに、子どもたちに毛並みをイタズラ書きされたわけでもないのにどうしてかにゃ。
と不思議に思っていた。
すると、子どもたちはタオルを持ってみんなリビングから出て行った。
「あれ? みんな行っちゃった」
けど、すぐに戻ってきて、
「これでもう大丈夫だよ」
子どもの一人が言った。すると、子どもたちがぼくの周りに集まってきた。
「なになに? もしかして、またぼくを触ろうとしているのかにゃ。
それだったら、さっきで懲りたでしょ。また静電気は起きるよ。バチッと痛い目に合うよ」
「ピトピトピトッ」
子どもたちは、いっせいにぼくの身体を触り始めた。
すると、何も起こらなかった。
あれ? バチッて言わない。どうして??
「もうこれで怖くないもんね」
子どもたちはベタベタとぼくを触り始めた。
ぼくにはわけがわからなかった。静電気はどうして起こらないの?
しかも、子どもたちの手は少しベタベタしているみたい。何か塗ったのかな?
さっきよりは気持ち悪くないけれど、みんなの手はしっとりしていた。
「ハンドクリームを塗ったから大丈夫なんだ」
子どもたちにぼくの手のひらを見せた。
ハンドクリームって、乾燥したときに塗るクリームだよね。
「肉まんを触るなら、ハンドクリームを塗った方がいいよって言われたから、塗りに行ったんだ。みんなで。ねっ」
他の子どもたちはうなずいた。きっと、ご主人様に聞いたんだと思う。
「どうしたら、静電気は起こりにくくなるの?」
って
「それに、濡れたタオルで肉まんのことを拭くと静電気は起こりにくくなるって言われたから拭いたんだ」
そうゆうことだったんだ。 だから、タオルは濡れていたんだ。
えっ。じゃあもう、静電気は起こりづらいんじゃない??
もしかして……。ぼくは子どもたちをチラリと見た。ニヤニヤしているにゃん。
ここは逃げるしかないにゃん。
ぼくはリビングから抜け出し逃げた。
「まてまてー」
子どもたちは楽しそうにぼくを追いかけた。
《終わり》