ネコとドライブ
「きみー。起きて。ドライブに行くよ」
ぼくは眠い目をこすった。
お外を見ると、見るとまだ薄暗い。
「もしかして、ぼくは寝過ごしてしまい、もう夕方になっちゃったの??」
時計を見ると、朝の4時だった。こんな早い時間に起きてドライブ?
遠いところに行くのかなぁ、それにしても早い気がするにゃん。
当然のごとく、ぼくはまだ寝たかった。
「ぼくはまだ眠たいです。って顔をしているね。行ったら分かるから、車に乗って」
ぼくはご主人様に抱っこされ、車に乗せられた。
いつものように
「スピピ~」
と眠った。
「着いたよ」
ご主人様がぼくに声をかけた。
「もう着いたの?」
ぼくは眠い目をうっすらとあけた。まだ、外は薄暗いままだった。こんなに早く着くなら、もっと遅い時間に来てもよかったのにと思った。
標識には、『千里浜なぎさドライブ』と書いてある。
車は坂道を下り、浜辺に着いた。そして、海が見えてきた。
「にゃ?」
ぼくはあることに気づいた。
「浜辺を走っているにゃん!」
ぼくは目をパチクリさせたけど、間違いなく、車は浜辺を走っている。
「浜辺に入っちゃったけど大丈夫? 車のタイヤ、埋まっちゃうんじゃないの??」
ぼくは心配になった。
けれど、タイヤが砂に埋まることもなく、車はスムーズに走っている。どうなっているのか、ぼくにはサッパリわからなかった。
もしかして、タイヤが頑丈なタイヤに変えたのかなぁ、それとも、砂ではなく、砂っぽい道路とか? それか、あまりにもぼくが眠くて夢とか。
ぼくが慌てていることに気づいたご主人様はこう言った。
「ここは、砂浜の上を車で走ることができる所なんだよ。世界で3か所しかなくて、日本ではここだけ」
そうゆうことだったんだね。うちからこんなに近い所にあるなんて。
と言っても、車で来たらの話だけど。
「きみ、砂、見てみる?」
「にゃ~」
ぼくは返事をした。
車を止めて、降りた。砂を触ると、すごく細かい砂だった。
「海水が含まれているから、固くて、しまっているんだよ。だから、車がその上を走っていても大丈夫なんだ。本当は、先週、来ようと思ったのだけど、強風で、車が走れなかったんだよね。それにいいでしょ、朝焼けを見ながらドライブって」
確かに、キレイだった。夕焼けもいいけど、朝焼けもいいにゃん。だから早い時間に来たんだね。
「まだきみに見せたいものがあるんだ。さっ。乗って」
と言われたから、ぼくは車に乗った。
ご主人様は車の窓ガラスを開けてくれて、風が入ってきた。潮風は気持ちよかった。
しばらく走ると、前には茶色っぽいお城が見えてきた。
お城のほかにも、大きなイカ。ぼくが毎週楽しみにしているネコアニメ。にゃんにゃんプリンセスのたまひめがあった。どれも茶色っぽくて、固そうだった。建物でもなく、置物?っぽい。
「あっ。コレは……」
だんだん近づいたから分かったけど、全て、砂でできているっぽい。アッチには人魚姫。コッチには雪だるまがある。
「サンドアートって言ってね、全部、砂で作っているんだよ」
「へ~え~。スゴイにゃん」
一通り、サンドアートを見終わると、反対側から、バイクが走ってきた。バイクも気持ちよさそう。
「さあ帰ろうか」
ご主人様はそう言った。
今度は、バイクで来ようよ。潮風が当たって気持ちよさそう。ぼくは、ご主人様がバイクに乗ることを知っている。だからぼくはキラキラした目をしてご主人様にアピールした。
「ぼくをバイクに乗せてって顔をしているね。嫌です。きみを乗せるとなると、背負わないといけないでしょ? 重いから嫌です。それに、エンジン音が大きいから、きみのようなビビリネコが乗ったらパニックを起こしちゃうよ」
そうなの? 「乗ってみないとわからないじゃないっ」と言いたかったけど、ビビリネコのぼくはやめておいた方がいいかもしれない。
「じゃあ砂浜を走ったら。いい運動になるよ。走れば、潮風が当たるし」
ご主人様はニヤニヤした顔をした。じゃあ、さっそく今からどう?
「ブルブルブルブル」
ぼくは全力で拒否をした。どうして毎回、この手のオチになるのかにゃ~。ぼくは、ぷっくりしたお腹を見た。
《終わり》