ネコとおばあちゃん2(前編)
リビングにいると、
「ガタガタ」
ご主人様は、細長くて赤い箱を持ってきた。
「なになに?」
ぼくはご主人様に近づいた。その箱は少し重そうで、留め金でしっかり閉められていた。
箱を開けると、金づち、くぎ、ドライバー、ペンチが入っている。
「あっ。のこぎりもある」
ギザギザした刃が見えた。
これってもしかして、大工道具のセット? どこか直すのかな。でも、なにか壊れたものってあったっけ? ぼくは思いつかなかった。
「きみー。これからお出かけするよ」
うちのなかのものが壊れたわけではないんだね。でも。どこに行くのだろう。この大工道具を持って。ぼくは分からなかった。
「きみが行きたがっていたところだよ。行ったら分かるから」
ご主人様はわざとぼくをじらした。
「えっ。そこまで言うのなら教えてよ!!」
ぼくは気になって仕方なかった。その大工道具が必要な場所ってどこ?
「あっ。そうそう。お泊りだからね」
ぼくが行きたがっていたところ? しかもお泊り??
気にはなっていたものの、車に乗り込むとすぐに、
「スピピ~」
いつものように眠ってしまった。
さあ着いたよ。
ぼくは目の前のおうちを見て思い出した。
「あっ。ここは!」
おばあちゃんのおうちにゃん!!
前回、おばあちゃんのおうちに来たときは、ご主人様がお友達と旅行へ行くために、ぼくをおばあちゃんに預けた。おばあちゃんと過ごしたときは楽しかったけど、ぼくをいっしょに連れて行ってくれなかったことに対しては悲しかった。もしかして、今回もそうなの?
ぼくはご主人様を見た。
「そんな顔しないで。今日はきみを預けに来たんじゃないから。いっしょに泊まるんだよ」
それを聞いたぼくは安心した。
玄関のドアを開け、おばあちゃんおうちに入ると、
「いらっしゃい」
おばあちゃんが出迎えてくれた。
「肉まん、また丸くなったんじゃないの? ますますおいしそうだね」
え? きょうこそ、ぼくのこと食べようとしているの??
「ブルブル」
思わず寒気がしてぼくは身の危険を感じた。今回も、いやな感じがするにゃ。
「きみはおばあちゃんとおとなしくいっしょにいるんだよ。じゃあね」
そう言うと、ご主人様はドアを閉めて出て行ってしまった。
「ご主人様? どこへ行くの??」
ぼくが追いかけようとすると、後ろからガッシリとつかまれた。
「肉まんはこっちへおいで」
ぼくは連れて行かれた。
きょうこそ、本当に食べられちゃうのかもしれない。ぼくはジタバタと動いてみたものの、
おばあちゃんの力は強くて身動きできなかった。
「ジタバタするんじゃないよ!」
おばあちゃんの低い声がひびく。
「ビクッ」
ぼくはその声を聞いて毎度のことながらとても怖かった。
「そんなに怖がらないで。肉まんのこと食べたりしないから」
そんなわけないにゃん。きょうこそ食べる気にゃん!!
ぼくは震え止まらなかった。
「この子はどうして毎回毎回自分のことを食べられそうになるって顔をするかね。私は食べないよ」
おばあちゃんは言った。
「そんなに怖がるなら、ご主人様は庭にいるから見ておいで」
おばあちゃんはぼくをそっと離すと、一目散にぼくは廊下を走り、ガラス越しに裏庭を見た。
すると……。