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ネコと子イヌ2【後編】

~ネコと小イヌ2(前編)のあらすじ~



ご主人様のお友達のつとむ君は、

最近元気がない飼い犬のえりかを肉まんのおうちに連れてきます。

肉まんのご主人様とつとむ君にはえりかが元気がない理由が分かっていたのですが、

肉まんにはわかりませんでした。


そこで、えりか本人に聞くことにしました。

すると、元気のない理由は、つとむ君が結婚することになり、自分のことをおいて家をでいくのではないかと心配しているからでした。


つとむ君のお姉さんが結婚した時のことを思い出し、えりかは心配で仕方ないのです。


 もしかして、えりかはつとむ君が結婚したら、

おうちからいなくなっちゃうんじゃないかって心配をしているんだにゃん。

つとむ君のお姉さんは結婚して、弟イヌのさくたろうを連れておうちを出て行ったし。


「でも、結婚するからと言って、おうちを出ていくとは限らないでしょ?」

「そうだけど、その可能性は高いわ。お兄ちゃんが結婚したらこの先どうするのか考えてみたの」

「なになに。教えて」

 

 ぼくはえりかの話を聞いた。


「お兄ちゃんには選択肢が三つあるの。その一。お兄ちゃんはおうちを出て、お嫁さんになってくれるゆいちゃんといっしょに暮らす。その二。私を連れて、ゆいちゃんといっしょに暮らす。

その三。ゆいちゃんがおうちに来ていっしょに住む」

「その三が、えりかにって一番理想の暮らし方じゃない」


 えりかは複雑そうな顔をした。


「私はどうしても、お兄ちゃんとお母さんといっしょに暮らしたいの。

だけど、簡単にはいかないのよ」

「どうして? 」

「お嫁さんと旦那さんのお母さんといっしょに暮らすのって大変みたいよ」

「あっ。そうだった。テレビのドラマを見ていると、大変みたいだにゃん」

 この前、ぼくがご主人様といっしょに見ていたドラマは、お嫁さんとおばあちゃん。つまり旦那さんのお母さんが大ゲンカしていた。「こんないえにはいられません。姑とは暮らしたくないって!」


 って言っていたにゃん。ドラマの話だけどね。


「しかも、イヌ付きのおうちだよ? 私って他のイヌに比べて手のかかるイヌらしいし、よく鳴いちゃうし、ゆいちゃんは今までイヌと暮らしたことがないのに、いきなり私の面倒も見ないといけなくなるかもしれない。それっていやがられない?」


 ぼくも人のことは言えないけれど、えりかはかなり手がかかるイヌだと思う。


「えりか、よくわかっているね。自分のこと……」


 ぼくは、えりかは周りの人のことなんて気にしていたいと思っていた。

一応、迷惑をかけているとは思っているのね。


「それに、私の住んでいるところは、すごい田舎なのよ? ゆいちゃんは、金沢の市内に住んでいるみたいだから、わざわざこんなところに来るかしら?」


 確かに、えりかが住んでいるところはぼくが住んでいるところよりもずっと田舎。えりかのおうちの周りには山か畑しかない。おうちもあんまりないし、スーパーやコンビニみたいなお店もない。駅は歩いたら三十分くらいかかる場所にあるらしい。

しかも、電車は一時間に一本。

 ぼくも田舎の方に住んでいると思っていたけれど、ぼくの住んでいるところが田舎なら、えりかの住んでいるところはど田舎だにゃん。


「ゆいちゃんは私に会うと優しくしてくれるけど、たまに会うから優しくしてくれるんじゃないのかしら。ゆいちゃんともし、いっしょに暮らしたらこれまで通り、私と仲よくしれくれるかなぁ」

「たぶん、仲よくしれくれるよ。つとむ君が選んだ人なんでしょ?」

 

 えりかはみんなで住みたいけど、住めるかどうかも分からないし、もし、いっしょに住めても、つとむ君のお嫁さんとうまくやっていけるかどうかも気にしているみたい。

えりかが心配する気持ちが分かった。


「私は、お兄ちゃんとも離れたくないし、お母さんとも離れたくない!」


 えりかは強い口調で言った。


「きっと、つとむ君だって、えりかのことをちゃんと考えてくれているから、あとのことはつとむ君に任せよう。ねっ」


ぼくはえりかにこう言って励ました。すると、少しは元気になってくれたみたいで、このあとぼくたちは仲よく遊んだ。


 夕方になると、


「えりか、帰るよ」


 そう言って、つとむ君はえりかを抱っこした。


「いや。肉まんとまだ遊ぶ~。ワンワンワン」


 えりかは鳴いた。


「また遊びに来るから今日は、帰ろう」


 つとむ君はえりかに言った。

えりかは、ムッとした顔をした。まだ帰りたくないらしい。


「またおいでにゃん。えりかがだだをこねたら、もう来られなくなっちゃうかもしれないよ!」


 ぼくはきつめに言ったけど、「私はまだ遊ぶ」と言わんばかりにワンワン鳴いている。


「えりかっ! 帰るよ。いっしょに来ないのなら、もう勝手にしなさい。置いていきます!」


 つとむ君はいつになく強い口調で言った。


「分かった~。私を置いてかないで~」


 えりかは鳴くのをやめて、つとむ君の所へ行った。つとむ君が本気で怒ったのが分かったらしく、あきらめたらしい。


「バイバイ」


 ぼくはえりかを見送った。

 えりか、大丈夫かなぁ。ぼくは心配になった。


「ご主人様~。えりかどうなっちゃうの?」


 ぼくはご主人様を見つめた。


「きみも、心配になっちゃったの? 実はね……」


 ご主人様はぼくに言った。



三日後、


「ピンポーン」


 お兄ちゃんがドアを開けると、


「こんにちは」


 私が玄関に行くと、ゆいちゃんがいた。


「いらっしゃーい」


 ん? いっぱい荷物を持ってきている。お兄ちゃんと旅行に行くのかな?

ゆいちゃんは私を見てこう言った。


「今日からいっしょに暮らすことになったからよろしくね。えりか。私、ずっとイヌを飼ってみたかったの。えりかみたいな元気いっぱいのイヌといっしょに暮らせるなんてうれしいわ」


 ゆいちゃんはニッコリ笑った。

 えっ!? 暮らしてくれるの?


「ワーイワーイ」


 私はうれしくてゆいちゃんに向かって行きピョンピョン飛び跳ねた。


「えりか! うれしいのは分かったから落ちついて」


 つとむ君は言った。

近づいてきたえりかを見て、ゆいちゃんはうれしそうな顔をしている。



 三日前。


「つとむ君はえりかといっしょに暮らすんだよ」


 じゃぁ……お母さんは? ぼくはご主人様を見つめた。 


「もちろん。つとむ君のお母さんもいっしょ。お嫁さんがつとむ君のおうちに来ていっしょに暮らすんだって」


 えー。本当? えりか。よかったね!!


「つとむ君のお嫁さん、えりかのことが好きだし、お母さんともうまくやっていけそうだと思ったみたい」


 これでひと安心。でも、ぼくは急に不安になった。ご主人様がもし、結婚したら、ぼくはどうなっちゃうのかにゃ?


「今度は、きみのことを心配しているの?」


 どうやら、ぼくの思っていることが伝わったらしい。


「もちろん、いっしょく暮らすよ」


 ご主人様はニッコリとぼくを見て笑った。


「ご主人様。大好き~」


 ぼくはご主人様に抱きついた。


「うれしいのは分かったけど、きみはえりかと違って重いんだから、離れて」

「にゃーん」


 ご主人様は苦しそうだったけど、ぼくはしっかりとご主人様にしがみついた。



《終わり》

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