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ネコのお正月5


「シンシンシンシン」


お外に雪が降っているせいか、いつも以上に寒い。


「こんなときは、いつものようにリビングにあるストーブの前に陣取ってあたたまるのが一番にゃ」


ぼくは定位置であるストーブの前に行った。


「あったかいにゃ~♪」


ぼくはぬくぬくとしていた。

今日はお正月、そろそろご主人様の親戚が来る。

ただでさえ親戚の子どもたちはぼくにイタズラをするから、

寝ていたら確実にイタズラされてしまう。

だから、ストーブのあたたかさでウトウトしながらも、我慢して起きていることにした。


けど、


「うっつらうっつら……」


ぼくは眠くて仕方なかった。


「ピンポーン」


玄関チャイムが鳴った。


「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」


テレビを見ながらあたたかいお茶を飲んでくつろいでいたご主人様が、

ゆっくり立ち上がり、玄関に向かって歩いて行った。


「ガチャ」


玄関を開けると、


「あけましておめでとうございます」


子どもたちが新年の挨拶をする声が聞こえてきた。

どうやら子どもたちが来たみたい。

子どもたちはいつものようにワイワイ騒ぎながらリビングに入って来た。


「んにゃ?」

 

子どもの一人がマスクしていることに気がついた。


「風邪でも引いたのかにゃ~。」


 子ども一人おうちに置いていくわけにはいかないから連れてきたっぽい。

マスクをした子どもを見ていると、


「ゴホンゴホン」

 

と咳きこんでいる。


「風邪を引いている、大人しく寝ているのが一番にゃん。風邪っぴき子どもは、ご主人様のお部屋で寝ていたらいいのに……」


と思っていたけど、他の子どもたちとトランプをして遊んでいた。


「まぁいいにゃん。子どもたちが遊びに夢中になっている間はぼくにイタズラをしないはずにゃん」

 

ぼくは寝ることにした。


「スピピ~スピピ~」


と気持ちよく寝ていると、


「コトン」


 ぼくの目の前に何かが置かれる音で目が覚めた。

どうやら、ご主人様がぼくのごはんを運んできてくれたらしい。


 前はいくらねだってもくれなかったけど、

去年からご主人様は、お正月のときにお刺身をくれるようになった。

くれるお刺身は見栄えの悪い端っこだけど、大トロやタイだからうれしい。


 けど、今日のお皿には、端っこだけじゃなくて、みんなが食べているような切り身もくれた。


「どうしたのかにゃ~」


と不思議に思っていた。

 もしかして、ぼくのことを少しは考えてくれたのかもしれない。

一人。じゃなくて、一匹だけあげないのはかわいそうと思ってくれたのかもしれない。

それとも、いつもねだっているからぼくが欲しがっていることに気づいてくれたのかもしれない。

あっ。分かった。

実はご主人様はダイエットしようと思って自分の食べる分をぼくにくれたのかもしれない。


と色々と考えていたら、

ふと、マスクをした子どもが目に入った。


テーブルの上には、

豪華なおせち料理やお刺身などが並べられていて、

みんなおいしそうに食べているけど、風邪っぴき子どもだけはおかゆを食べている。


「もしかして、この子の分なのかにゃ?」


 風邪を引いているときは、消化にいいものを食べた方がいいから、

おせちを食べられないみたい。


 風邪っぴき子どもがおせちに手を伸ばそうとすると、お母さんに


「ダメダメ!」


 と怒られている。

子どもはシュンとして渋々おかゆを食べていた。

かわいそうだけど仕方がないよね。


 しばらくすると食事は終わり、子ども達はお庭で雪合戦を始めた。

風邪っぴき子どもはいっしょに遊べず、羨ましそうに外を眺めている。


「お外でみんなと遊びたそうにゃん。でも風邪を引いているからそれはダメにゃん。大人しく寝ているのが一番だけど……」


 ぼくはこの風邪っぴき子どもが気になって見ていた。ずっと窓から離れず

他の子どもたちが雪合戦をしているのをながめている。

いつもはぼくにイタズラばかりしているけど、今日はそんな元気もないみたい。


 ふと、子どもたちが遊ぶために持ってきたボールが目に入った。


「それなら静かにお部屋でボールで遊んだらいいにゃん」


 と思い、ボールを風邪っぴき子どもに届くように転がすことにした。


「コロコロコロ」


子どもはボールに気がづき、ぼくを見た。

そしてぼくに向かって思いっきりボールを蹴った。そのボールはぼくにみごと命中。


「痛いにゃ! 八つ当たりしないでにゃ~」


 気を巻まぎらわせてあげようと思ったのに……。


「ひどいにゃ~」


 と思ったけど、


「子どもだから仕方ないにゃん。自分だけ遊べないから気が立っているだけにゃん」


 と言い聞かせ、ぼくはボールを転がしてあげた。

 すると今度は優しく転がし返してきた。


「ぼくの思いが通じたのかにゃ?」


 またぼくはボールを転がす。子どもはニコニコしながら、ぼくに向かってボールを転がしてきた。


「にゃん♪ 楽しいにゃん。かわいそうだから、特別にぼくが遊んであげるにゃん」


 しばらく遊んでいたけど、

そのうちぼくらは疲れて、いっしょに眠ってしまった。


「ガサガサガサガサ」


 と慌ただしい気配でぼくは目が覚めた。


「うにゃ? 寝てしまったみたいにゃ……」


周りを見渡してみると、子どもたちが帰る支度をしていた。


 目を覚ましたぼくに気づいた風邪っぴき子どもは、ぼくの元に

トコトコと近寄ってきて優しくなでてくれた。


「にゃ~♪ すっかり子どもと打ち解けて仲良くなったにゃん。

これで今度からはイタズラされないはずにゃん」


 そんなことを思っていると、


「グシャグシャ!」


 風邪っぴき子どもはぼくの整った毛並みを思いっきりかき立てた。


「にゃー! ぼくの毛並みが乱れたにゃん!」


 その姿を見ていた他の子どもたちは大笑いをしている。

「まったく、油断も隙もないにゃん! けど、イタズラするくらい元気になったのだから、今日は特別に許してあげるにゃ~」


「子どもといっしょに遊んだときはとても楽しかった。イタズラしないのなら、また来てもいいにゃん。けどそんなことってあるのかにゃ?」


 と疑問が頭をよぎったけど、


「まぁいいにゃん」


 ぼくはまた眠ることにした。 



《終わり》


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