表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/143

ネコと小イヌ(後編)

~ネコと小イヌ(前編)のあらすじ~


肉まんは、ご主人様に連れられ、お友達のつとむ君のおうちにやってきました。

そこのおうちでは、えりかという小イヌがいました。

このえりかは、とてもやんちゃで、肉まんのおもちゃを勝手に持って行ってしまったり、

ごはんの時間でもないのに、肉まんのご主人様にごはんをねだったり、みんなを困らせていました。


こんな調子だったので、「最近えりかの元気がない」

と聞いても、とてもそうゆう風には見えませんでした。


けど、その理由がこのあと、知ることになるのです。



 十二時半を過ぎたころ、みんなでお昼ごごはんを食べることになった。

ご主人様たちは、つとむ君のお母さんが作ってくれたサンドウィッチ。

えりかはドッグフード。

ぼくはご主人様が持ってきてくれたキャットフードを食べていた。

ごはんをねだっていただけあって、えりかはお腹がすいていたのか、ガツガツガツガツと勢いよく食べている。


しばらくぼくがごはんを食べていると、


「んにゃ?」


 後ろから気配を感じた。振り向くとえりかがいた。


「どうしたの?」

「ねえ。私にもちょうだい!」


 ぼくはその言葉にビックリした。もしかして、もうなくなっちゃったの?

確か、ぼくよりも多くの量をもらっていたはずだけど。

えりかのお皿を見たら、ドックフードはきれいになくなっていた。どうやら大食いらしい。


「えっ。これはネコのごはんだよ? 食べられなくもないかもしれないけれど、

食べないほうがいいんじゃないのかなぁ」


 まさか、ぼくのごはんを狙っているとは……。

 

 えりかは、食いしん坊みたい。たくさん鳴いたり、ピョンピョン

 して体力を使っているから太らないでいられるのかも。


 えりかはぼくのお皿に近づき食べようとした。


 それに気づいたつとむ君は、


「えりか! こうたろうにしていたようなことしているんじゃないの! こっちへ来なさい!!」


「こうたろう?」


 誰だろう。


「こうたろう……。ワーンワーン」


 えりかは思い出したかのように鳴き出した。


「ごめんごめん。えりか」


 つとむ君はえりかをなだめた


「こうたろうって誰ですか?」


 ご主人様は聞いた。


「こうたろうは、えりかの弟で、身体はえりかよりも大きかったのだけ、気の強いえりかとは違い、気の弱くて優しいイヌ。 えりかにおもちゃを取られても許してしまうし、

ごはんを食べているときも、こうたろうのごはんを食べてしまうことよくあってね。

それさえも許してしまうイヌだったんだ。

ぼくには姉がいるのだけど、結婚することが決まって、ここを出て引っ越すことになってから、二匹の生活が変わってしまった。姉は、えりかとこうたろうの両方を連れて行きたかったんだけど、姉の旦那さんから、『一匹だけでも大変なのに、二匹なんてとても面倒が見られないっ』と言われてね。おとなしい、こうたろうだけを連れて行っちゃって……」

「そうだったんだね」


 ご主人様は言った。


「それ以来、えりかは元気がなくなっちゃったし、ぼくたちの姿が見えなくなると

心配になるみたいで、突然鳴き始めるようになった。

たまに姉がこうたろうを連れてくるけど、帰るときになると毎回激しく鳴いて大変なんだ。連れて行かないでって」


 元気がなくなっちゃった理由ってそうゆう理由だったのね。


 しばらくすると、えりかは落着き、ぼくとえりかは遊んだ。



 夕方になり、


「きみー。そろそろ……」

 

 ご主人様は立ち上がると、


「ちょっと待って」


 つとむ君はご主人様を止めた。


「もしかして、帰る気でしょ! ワンワン!!」


 えりかは強く鳴き始めた。


「あー。気づかれちゃった。実は、えりかは、人間の言葉が

少し分かるから、少しでも帰るそぶりをするとさみしくなって鳴いてしまうんだ」


「帰っちゃダメー。ワンワン!!」


 えりかはこっち鋭い目つきで鳴いている。


「困っちゃったね」


 ぼくとご主人様はまたもや目を合わせた。


 すると、つとむ君がこう言った。


「えりかにおやつをあげるからその隙にこっそり出てもらえるかな?

あの戸棚に、おやつが入っているのだけど、えりかはそこにおやつがあることを

知っているから、開けると音で、おやつがもらえるんだって気づく。その隙に

出て行ってもらえれば……」


「分かった」


「じゃあまたね。つとむ君」

「またおいで。肉まん」


 こそっと挨拶をした。


「ワンワン!」


 えりかは依然として鳴き続けている。


「えりか。おやつあげるよ。こっちへおいで」


 つとむ君は、戸棚を開けた。それを合図にぼくらはこっそり動き始めた。


「おやつ?」


 えりかは鳴き止み、つとむ君の元へ行った。

 ぼくたちはその隙に部屋を抜け出した。


「おやつ♪ おやつ♪」


 えりかはすっかりご機嫌でシッポを振って座って待っていた。


 玄関のドアを開けぼくは心の中で、


「おじゃましました」


 と言った。


 こうして、えりかのおうちを出た。


 えりかのおうちから少し離れると、


「ワンワン!」


 えりかの鳴き声が聞こえた。

 きっと、ぼくたちがいなくなったことに気づいたに違いない。


「大丈夫だよ。また、えりかに会えるから」


 ご主人様はそう言った。

 ぼくはうなずいた。


「また会おうね。えりか」


 ぼくはそう思いながらご主人様の車に乗り込んだ。

えりかの鳴き声を聞きながら。



《終わり》 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ