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ネコとトマト(前編)

 ぼくはリビングでネズミのおもちゃと遊んでいたら、


「ピンポーン」


玄関チャイムの音が鳴った。


「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」


 ジグソーパズルをして遊んでいたご主人様が、玄関に向かって歩いて行った。

 玄関には女の人が立っていた。 


「ん? この声は中村のおばさんの声だにゃ」


どうやら近所に住んでいる中村のおばちゃんがぼくのおうちを訪ねてきて、おすそわけを持って来てくれたみたい。

もらったのはいいけれど、中村のおばちゃんがいつもの長話をし出して、話が止まらない。

一度、話をすると、話が止まらないくらいお話好きらしい。

当然、今日も……。


一時間後、やっと話が終わってご主人様はリビングに戻って来た。


 リビングに戻ってくると、ご主人様は大きなスーパーのお買い物袋を持っていた。

袋から中身を出すと、トマトがいくつも出てきた。


「トマトだにゃん。けど、こんなにトマトをもらって食べ切れるのかにゃ~」


そう思っていたら、 ご主人様はトマトを持ってキッチンに行った。

 

「ガチャ」


 冷蔵庫を開けている音がする。

早速トマト料理を作るみたい。ご主人様が作る料理で、

ぼくが食べても大丈夫なものもあるけれど、そう多くはない。

けど、何を作るのかはいつも楽しみにしている。料理上手だから見ているだけでも楽しい。

冷蔵庫の中をのぞいていたご主人様は「何をつくろうかなぁ」って顔をしていた。

とりあえず、食べ物をいくつかテーブルの上に出してみたみたい。


 しばらく食べ物とにらめっこして、


「ジャージャージャージャー」


 ご主人様は野菜を洗って、


「ザクザクザクザク」


 包丁で切っている音がした。

どうやら作るお料理が決まったらしい。

トマトをミキサーにかけたり、ベーコンを切っている。


 それから五分後には、


「ボッ」


 と火をつける音がした。

ぼくは何を作っているのか気になってこっそりとキッチンをのぞいていた。

大きなお鍋みたいなものでお湯を沸かしているっぽい。

あの中に何かを入れて茹でるのかも。


最初は、


「フツ、フツ」


とゆっくり音がしたけど、

次第に


「フツフツフツフツ~」


 という音がいっぱい聞こえてきた。

 すると、ご主人様は、スプーンでお塩を入れた。

テーブルの上に置いてあった袋を開けた。どうやらパスタを茹でるらしい。

両手でパスタの麺を持って軽くひねって手を離すと、


「ザザザ」


 と音がして、パスタはきれいに広がっていた。

お箸でお湯の中にしずめてしばらく茹でると、パスタがしんなりと曲がっていった。


 パスタを茹でている間、戸棚を開けて深いお皿や中くらいのお皿を出していた。あと、深くてまるいマグカップみたいなお皿とプリンが入っているような容器を出した。


次第に、おいしそうなにおいがしてきて仕方なかったけど、ぼくはリビングに戻って待っていることにした。


台所に立ってから三十分後。ご主人様はおぼんを持って、リビングに戻ってきた。

おぼんの上には、ご主人様が作った料理とぼくのごはんも用意してくれた。

今回は、ぼくは食べられるものはないらしく、いつものキャットフードだった。


「コトン」


 ぼくの目の前にキャットフードが入ったお皿を置いてくれて、ご主人様の分はテーブルの上に置いた。


「今日の料理は何を作ったのかにゃ?」


 ぼくはご主人様を見つめた。

なになに。


「“ナスとベーコンのトマトソースパスタ”“トマトとキュウリのサラダ”“セロリとトマトのスープ”“トマトジュース”」だよ。


 だって。どれもトマトづくしだね。


「いただきまーす」


 ぼくは食べ始めた。

ご主人様をチラリと見たけど、おいしそうに食べている。ぼくが食べられないことは残念だけど、今回は仕方ない。


 

「ごちそうさまー」


 ぼくもお腹がいっぱいになった。

一方、ご主人様は、キッチンに行った。リビングに戻ってくると、何か持って来たみたい。テーブルの上を見ると、「トマトゼリー」だった。

どうやら、デザートも作ったみたい。プリンが入っているような容器を取り出したのは、このトマトゼリーを作る為だったんだね。ご主人様は、トマト料理を満喫したみたいだった


トマトは身体によい食べものらしく、

「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言う言葉があるんだって。トマトを食べると、健康になる。健康になれば、お医者さんに行かなくなる。

そうなると、お医者さん商売にならなないから、お医者さんは青くなる。と言う意味らしい。

たくさん食べられてよかったね。ご主人様。

 さて、ぼくはお腹がいっぱいになったから、ひと眠りするとしよう。


「スピピ~。スピピ~」


ぼくはいつものように眠った。


しばらく寝ていると、


「ピンポーン」


玄関チャイムの音で目を覚ました。


「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」


 けど、ご主人様は、すぐに玄関には行かなかった。


「ピンポーン」


 玄関チャムが鳴った。

ご主人様はここにいるはずなのに、一向に玄関に行く気配がない。


「あれっ。ご主人様? 玄関チャイムが鳴っているよ。行かないのかにゃ?」


辺りを見渡すと、ご主人様はテーブルの近くで横になっていた。


「ね~。ご主人様~。起きてにゃん」


 ぼくはご主人様を起こそうとしたら、ぼくはビックリした。

ご主人様の口の周りには血がついていた。


「ご主人様~!」


 ぼくは、ご主人様の身に何かが起こったのかと思い、


「どうしよう……」


 ぼくは真っ青になった。

ご主人様の服にはあちこち赤く染まっているし、

カーペットも赤く染まっている。

テーブルの上から


「ピチャン。ピチャン」


と赤いものが落ちてきた。

どうやらテーブルの上にもご主人様の血があるのかも?


「ご主人様!!!」


 ぼくは心配になった。

 けど、


「んにゃ?」


 ぼくはこの様子を見て疑問に思った。



《続く》

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