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ネコVSウサギ

「ニャムニャム。スピピ~スピピ~」


 ぼくは、気持ちよく眠っていると、

突然、はっと目が覚めた。

夢の中で、ウサギのみうにシッポを踏まれたからだ。


「う~ん……。目覚めが悪いにゃん」


 昨日、突然、みうのご主人様、あいちゃんがやってきて、


「今日から一週間、北海道に旅行することにしたから、みうを預かって欲しいの」


 と言って、みうをうちに置いていった。


 ご主人様は、「突然きて、預かって欲しいと言われても困るでしょ」って顔をしていたけれど、あいちゃんならしょうがないと思ったらしく、預かることになった。

それにしても昨日は大変だった。


「お外に出て遊びたい!」


 とずっと言っていたから。あいちゃんは、みうをお外に出して遊ばせるということはしない。けれど、ぼくはお外で遊んでいるから、ぼくのおうちに来たらお外に出て遊べると思ったらしい。みうみたいな好奇心の塊がお外に行ったら危ないにゃん。車が走っている道路に飛び出したりしそう。


 昨日はなんとかみうのワガママをなだめることができたけど

今日は大丈夫かなぁ。外へ出たいなんて言われたらどうしよう……。

そんなことを考えていたら、


「肉まん。肉まん」


 ぼくを呼ぶ声がした。

目を開け声のする方向を見ると、ミーコがいた。

ミーコは裕福なおうちに住んでいるネコで、よくうちに遊びに来る。


「ねえ、おうちに入ってもいい? お外、寒いから」


 いつもはリビングの窓は閉まっているんだけど、

ご主人様が、お洗濯ものを干しにお外に出たときに窓を閉め忘れたらしい。

ご主人様は、みうがおうちでおとなしくしていられると思ったらしく、


「少しの時間なら」


 とお出かけをしてしまった。

 

外はサムサムだし、ミーコをおうちに入れてあげよう。


「いいよ。入って」


 ぼくは、ミーコをリビングに入るように言った。


「さっきまで、お散歩でもしていたの?」


 ぼくがそう言うと、


「お散歩していたんだけど、疲れたから少し休もうかと思って」


 疲れたって、うちの三軒隣に住んでいるのに?


"ぼくも人のことは言えないけれど、それって運動不足でしょ"


 と言ったら怒られそうだから言わないでおいた。


「そ、そうなんだ」


 ぼくはそう言うしかなかった。

 

「ん?」


 ミーコはあることに気がついた。


「肉まん、この子は誰?」

「んにゃ? ぼくの後ろに誰かいるのかにゃ?」


 ぼくは振り返ると、ウサギのみうがお部屋に入ってきた。


「紹介するね。みうだよ」


 ミーコは、


「何でウサギがここにいるの?」って顔をしてみうを見ている。

 みうには、


「ぼくのお友達のミーコだよ」


 と紹介した。


「初めまして。私はみうよ。ご主人様のあいちゃんが、美しいうさぎだからってつけてくれたの」

"あっ! ミーコの前で言っちゃったよ!!"


 とぼくは心の中で言ったけど、そんなことを知るはずもないみうはニコニコしている。

一方、ミーコを恐る恐る見たら、「はぁ? あんた、よくそんなこと言えるわね」って顔をしながらみうを見ている。予想通りの結果だった。


「あなた、自分に相当自信があるのね」


 ミーコは皮肉っぽく言った。


「だってそうでしょ? みうはかわいいもん」


 ミーコはニコニコしながら言った。


「はぁ? かわいいってあなたねぇ……」

 

 ミーコはイライラしているオーラ全開だった。それがぼくにも伝わってきて怖い。


「あなたの名前はミーコだったっけ? みうは、あなたって名前じゃないの。

覚えてくれないかしら?」


 みうは、ミーコを小バカにするような言い方をした。


「まぁ!!」


 ミーコはみうの言い方が気に食わなかったらしく、込み上げていた思いがとうとう爆発してこう言った。


「あなたねぇ、さっきから言いたいこと言って、だいたい自分のことを

名前を言うなんて単なるぶりっこしているだけじゃない。そんなのかわいくもなんとも

ないわよ! このぶりっこウサギ!!」


 ミーコは「言ってやったわよ」って顔をしてみうを見ている。


「ぶりっこですって? ミーコは自分に自信がないからそんなことを言うんでしょ。

みうのこと本当はうらやましいでしょ。みうがかわいいから~」


 みうはミーコにいやみったらしく言い返した。


「私が、ぶりっこウサギのことうらやましいなんて思わないわよ。その逆よ。

こうなりたくないって思うわ!」


 ミーコは負けじと言い返す。


「二人とも、その辺で仲直りしてにゃん」


 ぼくはこの二人のやり取りを聞いていてくたびれてしまった。


「仲直りですって? 私、ちっとも悪くないもん。悪いのはこのぶりっこウサギよっ!」


 ミーコはみうを見て言った。


「なんですって? ヒステリーネコ!」


 今度はみうがミーコを見て言った。


「にゃん……」


ぼくは言葉に詰まってしまった。だって、ぼくからしたらどっちもどっちだよ。

みうはぶりっこウサギだし、ミーコはヒステリーネコだし……。

ある意味、お互いのことを分かり合っているとしか言いようがない。


「まぁまぁ二人とも落ち着いてにゃん」


ぼくはあわててその場を取りつくろうと二匹をなだめようとしたけど、

それは無駄なことだったらしい。


「肉まんは、口をはさまないで!!」


二匹ともすごい剣幕で口をそろえてぼくにこう言った。

そして、


「肉まんはあっちに行っていて!」


ミーコとみうは、ぼくを強い力で押し出し、その場を追い出されてしまった。


 仕方がないので、しぶしぶ隣のお部屋に行った。ぼくには二匹をどうすることもできないし、リビングにも戻れない。ぼくのおうちなのに……。

やることがないから、


「スピピ~。スピピ~」


 と隣の部屋で眠った。

一時間くらいたったころ、ぼくは目が覚めた。

そして、二匹の声が静かになったことに気づいた。


「もしかして、仲直りしたのかも!」


 ぼくはリビングに戻ると、

 

「あれ?」


 なんと、あれだけ激しく言い合いをしていたのに、二匹が楽しそうにお話をしている。

まるで何ごともなかったかのように、仲よくなっていた。

それはそれで不思議に思ったぼくは、


「仲直りしたの……?」


 と聞いてみた。

 すると、


「何を言っているの肉まん! 私たちはさっきから仲良くしていたわよね。みう」


 ミーコが言うと、


「そうよね。ミーコ」


 みうは言った。

 にゃ!? 何を言っているかさっぱり理解できない!


「だって、さっき、大ケンカしていたでしょ!?」


 ぼくがそう言うと、


「ケンカなんてしていないわよ~!」

「もう、うるさいから、あっちに行っていて!」


 また二匹に追い出されてしまった……。


 さっきはあんなに言い合いをしていたのに、まるそんなことがなかったことになっている。いったいこの短時間に何があったのだろう!?


「女心は複雑怪奇にゃ……」


 それにしても、ここがぼくのおうちってこと忘れていないかなぁ。

あの様子だと、帰る気がないっぽいよ~。ぼくはポツンと残された。


「ご主人様~。早く帰ってきて~」


 と心から願った。



《終わり》


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