ネコと風邪っぴき
「グ~」
ぼくのお腹が鳴った。リビングの時計を見たらお昼近くだった。
「ご主人様~。お腹すいたにゃ~」
ぼくはあたりを見渡したけど、いなかったから
キッチンにも見に行ったけどいなかった。
「もしかしてまだ寝ているのかにゃ~。お寝坊さんだな。もう~」。
ご主人様の部屋へ行った。
すると、やっぱりベッドの上で寝ていた。
「ご主人様~。もう昼だにゃ~」
ご主人様を起こしに行ったら、ご主人様の唇は真っ青で顔色がとても悪かった。
その上、
「ゴホン。ゴホン」
と咳もしている。
「もしかして、風邪をひいたのかにゃ? ご主人様~。大丈夫?」
ぼくは心配になって鳴いた。
すると、ご主人様はぼくに気づき、ハッとした顔をしてあわてて起きようとしたけど、
ご主人様はブルブルブルブルと振るえていてなかなか起き上がれないみたい。
ぼくに「ごはんをあげなきゃ」って思ったみたい。
いいよ。そんなに体調が悪いなら。ぼく、少しくらい我慢できるから~。
「グ~」
またぼくのお腹が鳴った。
「にゃ!」
ぼくのお腹は正直だった。
ご主人様はゆっくりと上半身を動かし、立ち上がったけど、ヨロヨロしている。
「大丈夫かにゃ~」
ご主人様はキッチンへ行った。ぼくは心配になってついて行った。
棚からぼくのネコ缶を取り出し、プルタブを開けようとしたけど、
なかなか開かない。
手がプルプルしていて開かないみたい。風邪のせいで力も弱っているみたい。
「今日は缶詰じゃなくていいよ。袋のやつでいいにゃ!」
ぼくは戸棚の中にある袋に入っているタイプキャットのフードを見つめて鳴いた。
どうやら伝わったみたいで、申し訳なそうな顔をして
袋に入ったキャットフードを取りに行ってくれた。
袋を開けようとしたけど、なかなか開けられなくて、ハサミで切って
ぼくのお皿にプルプル震えながら入れてくれた。
「ご主人様~。ありがとう」
ぼくはとても申し訳ない気持ちになった。普段だったら当たり前のことなのだけど、
今日は特別に思えた。
いつもぼくがおいしくごはんを食べられるのはご主人様のおかげなのだよね。
本当にありがとう。
せめてあたたかい場所で食べさせてあげようと思ったみたいで、お皿をリビングに運んでくれた。
「コトン」
日が当たる場所に置いてくれたご主人様は、ヨロヨロしながら自分のお部屋に戻って行った。
「ご主人様の後ろ姿を見て、かわいそうにゃ~」
と思いつつ、
「いっただっきまーす」
ぼくはごはんを食べた。
お腹が膨れたぼくはポカポカと日差しが照っていたところに
いたから眠くなってしまいそのまま寝てしまった。
「少し、肌寒いにゃ~」
日が落ちてきて寒くなって起きた。
「あっ。ご主人様はどうなったかにゃ?」
リビングを抜け出し、ご主人様の部屋に行った。
「ご主人様~。大丈夫?」
ご主人様に近づいたけどやはり、寝ていた。
きっと、朝から何も食べていないはずにゃ~。
少しくらいは食べないと、元気が出ないよ~
「ぼくご主人様の為に何かできないかにゃ~」
と思った。
「けど、何かしたら余計、迷惑がかかりそう。それはダメだにゃん」
ぼくなりに色々と考えてみた。
ご主人様をはげますような言葉をかけても鳴き声がうるさいって言われちゃうかもしれない。
元気をつけるなお料理を作りたくても、ぼくの肉球では無理っぽい。
早く治るようにお医者さんを呼ぼうとしても、どうやって呼べばいいか分らない。
「どうしたらいいかにゃ~。でもぼくは諦めないにゃん。やれることはやってみるにゃん!」
と考えてみたものの、思いつかなかった。
「せめてぼくができることっていったら、ご主人様のそばにいるくらい。……あっ! それだ。 ぼく、添い寝して看病するにゃ!」
「ジャーンプ」
ぼくはご主人様のベッドに飛び乗って枕元に行った。
そして、ぼくは隣で眠った。
ご主人様もぼくが隣に何かいることに気がついたみたいで、目を開けたけど、ぼくだと分かって目を閉じた。どうやら邪魔にはなっていないみたい。
次の日。
「グ~」
お腹の音で目が覚めた。
でも、この音はぼくの音じゃない。隣にいるご主人様の音。
ご主人様を見ると、ご主人様は目を開け上半身を起こした。
するとぼくと目が合った。
顔色もよくなっていて、ぼくを見て笑顔になって頭をなでなでしてくれた。
「すっかり元気になったみたいにゃん」
ご主人様はベッドから抜け出して、キッチンへ行った。ぼくもキッチンへついて行った。
ご主人様は、オーブントースターに厚切り食パンを2枚入れると、リビングに行った。
「何かを取りに行ったのかにゃ?」
と思っていたら手には、きのうぼくが使ったお皿を持っていた。
お水でキレイに洗ってから、朝食用のネコ缶を開け、ぼくのお皿に入れてくれた。
「チーン」
オーブントースターから、「パンが焼けたよ」と知らせてくれる音が鳴った。
それから、オーブントースターから厚切り食パンを取り出し、
お皿に置いて冷蔵庫からイチゴジャムを取り出し、パンに塗ってでき上がり。
リビングにお皿を運んでいったからぼくもついて行った。
「コトン」
ご主人様はテーブルの上にパンが乗ったお皿を置き、
テーブルの近くにご主人様は正座し、
その隣にぼくのお皿を置いてくれて、二人で並んで座った。
「いっただきまーす」
いつになく今日のごはんはおいしかった。やっぱり、一人よりも二人で食べる方がおいしいね。ぼくは一匹だけど。
ご主人様は昨日から何にも食べていなかったから、ものすごくお腹がすいているみたいで、ガツガツ食べていた。
あっという間に一枚目を食べ終え、二枚目を食べ始めている。
「ふ~。お腹いっぱいにゃ~」
と思っていたら、
「クシュン」
ぼくはくしゃみをした。もしかして、ご主人様の風邪がうつった?
「クシュン」
またくしゃみをした。
「き、気のせいだよね……」
と思いつつ、チラリとご主人様を見ると、
なになに、
「人間の風邪はネコにはうつらないよ」
だって。
「そうかもしれないけど、ご主人様~。もし、ぼくが風邪を引いたら今度はぼくを看病してにゃ~」
ぼくは目をキラキラしながらご主人様に訴えかけた。
すると、ぼくに目を合わせることなく食べ終えたお皿を持って、キッチンへ行ってしまった。
「そんな~。ひどいにゃ~」
「クシュン」
またくしゃみをした。
「このくしゃみは風邪なのかなぁ。もしかしてぼくのことを誰かがウワサしているのかにゃぁ。それとも他の何かの病気かにゃ~。謎だにゃん」
《終わり》