ネコと子ども
「んにゃ!? 誰かがひげを引っ張っているにゃ! しかも、両ひげとも……」
まだ眠かったけど、ぼくは痛みで目を覚ました。
すると、目の前には子どもたちがいる。
「ぼくの大事なひげを引っ張った犯人はこいつらにゃ! それにしても何で子どもたちがいるにゃ?」
ぼくは思った。
「あっ、そう言えば、あした、子どもたちがやって来るってご主人様が言っていた気がする~。来て早々だけど、帰ってくれないかにゃ~」
お正月はこの子たちのせいでひどい目にあった。ぼくの睡眠を邪魔するし、ひげを引っ張るし……。
「んにゃ? どうしたのかにゃ?」
ぼくは子どもたちの異変に気がついた。
だって、ぼくのことを穴があくくらい、ジーっと見ている。
とても怪しい。ぼくは、嫌な予感がした。
「きっと何かする気にゃん! この前は何の抵抗もできなかったけど、
今はご主人様がいないから、ガツンと反撃してやるにゃ!!」
とりあえず、にらんで威嚇した。
「ジー……」
すると、子どもの一人が近づいてきて、ぼくを持ち上げようとした。
「うっ。重い」
しかし、重くて持ち上げることはできなかった。
「ざまあろにゃ!」
ぼくの重さは大きな米袋1袋分くらいあるらしいから、
子どもの力じゃ簡単には持ち上げられないはず。
すっかり安心していたぼくに、他の子どもたちが近づいてきて、
全員でぼくを持ち上げようとした。
「にゃ~!!」
みごとにぼくの身体が宙に浮いた。
「痛いにゃん! ぼくの身体を思いっきり掴まないでにゃ!」
ぼくの身体に子どもたちの手が食いこむ。
「もっと優しくしてにゃ~」
そんなときにご主人様がリビングにやって来た。
「ご主人様~。助けてにゃん」
ぼくは必死に鳴いた。
どうやらご主人様は、子どもたちにおやつを持ってきたみたい。
すると、子どもたちは一斉にぼくを放し、ご主人様のいる所に駆け寄った。
子どもたちの手が離された瞬間、
「えっ!」
と言う間もないほど、
「ズトン」
カーペットの上に落とされた。
「痛いにゃ!」
当然のごとく、身体を叩きつけられたような痛みが走った。
一方、子どもたちは、ぼくのことを忘れ、おいしそうにおやつを食べている。
「くやしぃ~! こうなったらもっと重くなるにゃん。子どもたちが束になったって持ち上げられないくらいに!! だからぼくが太るのはしょうがないにゃん。全部、子どもたちのせいにゃん」
と子どもたちのせいにして、ぼくもご主人様が持ってきてくれたささみのおやつを食べた。
《終わり》