ネコと暑い、熱い、厚い、篤い一日
「う~。うぅ~。暑いにゃ~」
ぼくはあまりの暑さに、
あっちへコロコロ、こっちへコロコロ……と
体の向きを何度か変えてみた。
しかし、涼しくなるどころか余計に熱くなる。
きのう、ご主人様はテレビを見ながら
「猛暑だから今年は暑い」
と言っていたけど、暑すぎない?
ぼくは異常な暑さに気づいた。だって、ここはおうちの中だよ。
もしかして、ご主人様が間違えて冷房と暖房を間違えちゃったのかなぁ。
それとも、ぼくがまた太っちゃたから、ぼくの体温が上がっているのかも。
そんなことを思っていたら、
「うにゃ。重いにゃん」
ぼくの身体がとても重いことに気づいた。
「もしかして、ぼくの上に何かがかぶさっているのかもしれないにゃん」
ぼくはっとして目が覚めた。
なんと、ぼくの身体の上には大きな毛布のようなものがかかっている!
「どうなっているのか分らないけど、とにかくここから出なきゃ!」
ぼくは必死にもがき、なんとか抜け出した。
「ふー。暑かったにゃん」
ぼくの上にかぶさっていたのはご主人様の毛布だった。それにしてもなぜ毛布が?
ふと見ると、
「押入れの戸が開けっ放しになっている!」
どうやら、あそこから落ちてきたっぽい。きっと、ご主人様が閉め忘れたに違いない。そのせいで夢の中でうなされていたっぽい。
「こんな恥ずかしい姿、誰にも見られなくてよかった。ぼくとしたことがおマヌケにゃん……」
それからしばらくして、ご主人様とぼくはリビングでごはんを食べていた。
ご主人様は、冷やしそばで、ぼくはキャットフード。
ご主人様は食事を終えるとキッチンに行き熱いお茶を持ってきた。
そして、テーブルの上に置こうとして、
置いてあった座布団にひっかかりご主人様は体勢を崩した。
「ビシャ!」
「にゃ~! 熱いにゃ~」
ぼくの身体に熱いお茶が振りかかった。
ご主人様は慌てて、タオルを持ってきて謝りながらぼくの体を拭いてくれた。
「かなり熱かったけど、特別に許してあげるにゃん。そのかわり今度、高級キャットフード『ネコセレブ』ちょうだいにゃ!」
ぼくは、目をキラキラと輝かせながらご主人様を見ていた。その熱い眼差しに気づいたみたいでご主人様は「この子は何か企んでいるかもしれない」って顔をしていた。
トラブルはあったけど、とりあえず、お腹はいっぱいになった。
横になりたい所だけど、ダイエットのためにお散歩でもしようかなぁ。
この前はドアの隙間から出られなくなったし、
最近は体の動きが鈍くなった気がする……。
このままいくと正直ヤバそう。
「ここはひとつスマートになって、ネコ仲間たちをあっと言わるにゃん」
ダイエットの決意をして、いざ外に出てみると空模様が怪しい。
「なんだか雨が降ってきそうにゃん……」
ぼくはそう思った。
「あんなに厚い雲が出ていたら、雨が降ってくるにちがいない。
ダイエットは明日からにするにゃ~ん♪」
それに、眠くて目がトロトロしてきたし……。
そんなことを思っていたら、
「スピピ~。スピピ~」
ぼくはそのまま眠ってしまった。
そして、
「ピンポーン」
玄関チャイムが鳴った。
「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」
リビングで本を読んでいたご主人様はすぐに立ち上がり、
玄関に向かって歩いて行った。
誰が来たのかそっと首を出してのぞいてみると、宅配便のお兄さんがいた。
玄関にはたくさんの箱が置かれている。
軽く十個くらいはありそう。
「あの箱たちはなんだろう?」
ご主人様は、少しずつリビングに箱を運び入れていった。
全部運び入れると、ご主人様は嬉しそうに一つ目の箱を開ける。
すると、箱の中にはご主人様がいつも飲んでいるビールが入っていた。
ご主人様はさらにニコニコしている。
それから次の箱を開けるとたくさんのゼリーが入っていた。
次はクッキーやプリンがセットになったお菓子の詰め合わせセット。次は、お肉……。
次から次へと色々なものが出てくる。
そういえば、さっきのお兄さん。
「お中元を持ってきました」
って言っていた。
お兄さんは、
「こんなにお中元が届くなんて人望が篤いですね」
とも言っていた。
まさにその通り!こう見えて。ご主人様は色々な人によいことしている。
重い病気のお友達がいたら一日中看病したり、
見知らぬおばあちゃんの荷物を持ってあげたり、
色々な人に優しくしているから人からの信頼も篤いはず。
そんなことを思っていたら、
「んにゃ~。また眠くなってきた……」
きょうは色々な意味であつい一日だった。
≪終わり≫