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ネコのシッポ(前編)

「お腹いっぱいにゃ~」

 ぼくは夕食のキャットフードを食べ終わって、すっかり満足していた。

今日は、ご主人様の帰りが遅くなるらしく、

あらかじめ、ぼく用のキャットフードを用意しておいてくれた。


 それにしても帰ってくるのが遅い。

お外を見たら、真っ暗だった。

 そして、お部屋も真っ暗。

ご主人様は、電気を消してお出かけてしちゃったからね。


 ネコのぼくは暗い所でも見えるから大丈夫だけど、

人間は夜目がきかないから大変だよね。

この前、暗い部屋で寝ていたらご主人様が入って来て、

ぼくの存在に気がつかず、お腹をけられたことがあった。

あのときは痛かった。 ぼくがいるときは、電気をつけてから入って来て欲しい。


 お腹が膨れたぼくはいつものように、

「スピピ~。スピピ~」

 と眠っていた。


 しばらくすると

「ガチャ」

ドアが開く音がして目を覚ました。きっとご主人様が帰って来たっぽい。けど、ぼく眠たかったからそのまま眠った。


「ギィ~」

 リビングのドアが開き、

そして……。

「フミッ」

 全身に激痛が走った!

「にゃ~! シッポが痛いにゃ~!!」

あわててシッポを見ると、ご、ご主人様がぼくのシッポを踏んでいた。

「にゃ~。パタン」

ぼくは、痛みとショックで気を失ってしまった……。

「ザワザワザワザワ」

 人の声と何かの動物っぽい声がする。

「何だかうるさいにゃ……」

 目を覚ましたぼくは、周りをキョロキョロ見渡すと、

犬とか鳥とか動物たちであふれているお部屋にいた。

「ここはどこ?」

 シッポを踏まれたところまでは覚えているのだけど……。

「んにゃ?」

 ぼくの頭を優しくなでている手がある。

見上げると、そこにはご主人様がいた。

ご主人様は目を覚ましたぼくを安心した顔で見つめている。


 どうやらご主人様がここにぼくを運んできたみたい。

それにしても、ここはどこだろう。

「ワンワン」

「ピーピー」

 色々な鳴き声がするし、犬や鳥以外にもウサギやリス、子ぶたか色々な動物がいる。

動物たちがいっぱいいて、賑やかだけど、どの動物たちも具合が悪そう。

顔色がよくない子や包帯を巻いている子もいる。

「もしかして、ここは動物病院?」

 ぼくは何度か来たことがある。そのときは、予防接種やぼくの具合が悪いときだった。

きっと、ご主人様に踏まれたシッポが気になって、お医者さんに診てもらうため連れてこられたらしい。

思い返せばこれまでに、ぼくのシッポは散々な目にあっている。

カナちゃんにかじられたり、握られたり……。

そのときの痛みはその瞬間だけだったけど、今日はまだ少し痛い。

このまま痛みが取れなかったらどうしよう……。


 ぼくは不安に思っていたら、ふとハムスターが目に入った。

「あ、ハムスターだ。おいしそうだにゃ~。ジュルジュル~」

 さっきまでのぼくの不安はハムスターを見て吹き飛んでしまった。

「おいしそぉ~。あっ。そんなことを思っちゃダメ! 誰かが飼っているハムスターを狙うなんて……。このご主人様が悲しんじゃうにゃん!」

 ぼくのネコとしての本能が出てしまったみたい。このままじゃいけないと思って視線を別の所に向けると……。

「ヘビにゃん!」

相変わらず身体の模様が不気味。

しかもニョロニョロしている。格子のケースに入っているとは言え怖い。


「あっ、カメもいるにゃん。ぼくの身体よりの倍以上はある大きなカメにゃ~。身体が重そうだけど、あのカメに踏まれたら、ぼくは動けなくなりそう」 


こんなことをぼくが考えるくらい今日の待ち合わせ室はたくさん動物たちがいた。

すると、

「にゃーにゃーにゃーにゃー!!」

 黒と白のシマシマネコが大声で鳴きながら、この子のご主人様らしき人に連れられて白い扉の部屋から出てきた。

「あのネコ、何をされたの? すごく鳴いているにゃん」


 次は、女の人に呼ばれて毛並みが茶色いネコが白い扉のお部屋に連れていかれた。


 それからしばらくたって、扉が開き、

お部屋から出てきた茶色いネコを見ると、

「さっきよりもグッタリしているにゃ!」

 きっと、あのお部屋では何かとんでもないことが

行われているに違いない。

怖くてたまらない。ただでさえ病院に連れて行かれるときはいつもチクッとする痛い注射を打たれる。

「今日はいつになく嫌な予感がするにゃん。白い扉のお部屋から出てきた子たちはみんな様子がおかしいにゃん。もしかして、注射だけでは終わらず、もっと痛いことをされるかもしれないにゃ!」

 グッタリした茶色いネコを見ているとさらに恐怖が増してきた。

すると、女の人がぼくたちを呼んだ。

 ご主人様はぼくを抱き上げて、白い扉の部屋にゆっくり近づいていく。

「ご、ご主人様、待って! ぼくは絶対に嫌にゃん!」

ぼくは怒りながらジタバタしたけど、ガッチリと掴まれ、身動き一つ取れなかった。

ぼくは悲しくなった。


《続く》


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