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ネコとお正月3

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」


 玄関で、年始の挨拶をする子どもたちの声が聞こえてきた。

子どもたちが年始の挨拶をしているってことは今日は、元旦にゃん。

元旦は毎年、ぼくの家に親戚が集まってくる。この子どもたちのせいで、

お正月は切ない思い出しかない。


 毎年、子どもたちにイタズラされるし、喉から手が出るほど食べたいおせちも一度も食べたことがない。


「今年こそは、おせちをゲットするにゃ!」


 と毎年ぼくは、この野望を胸に抱いているけど、一度も達成したことがない。


「今年こそは必ず達成させるにゃん。この決意は、どんなに固いおせんべいよりも固いにゃ!」


 と心の中で誓っていたら、子どもたちの声が近づいてくる。


「どうしよう。ぼくを見つけたらイタズラするかもしれないにゃん。子どもたちがリビングに来る前に急いで隠れないと……。あっ! コレがいいにゃん!」


 ぼくはご主人様のひざ掛けを見つけた。


「これにもぐっていればぼくの身体は隠れるし、あったかい。

子ども達もまさかぼくがひざ掛けの中に包まっているなんて

思わないだろうからバレることはないにゃん」


 ぼくは、早速ひざ掛けの中に入り丸まった。


「あったかいにゃん~」


 あまりの居心地よさに、シッポをフリフリしながら、


「スピピ~。フリフリ~」


 いつのまにか寝てしまっていた。


 しばらくすると突然、


「ギュ~」


 いくつもの手でぼくの身体をつかむ感触が……!


「痛いにゃー!」


 ビックリして思わず叫び声を上げ目が覚めた。

するとそこには子どもたちがいた。


「またぼくにイタズラして~! それにしても

何でぼくがひざ掛けにもぐっていることが分かったのかにゃ?」

 

 なになに。


「肉まんは隠れたつもりかもしれないけど、シッポがフリフリ動いていたからバレバレだよ。頭隠して尻隠さず~」

 

だって。


「そっか~。それならバレバレにゃん。ぼくは気持ちよくてついついシッポをフリフリしながら寝ていたらしい。けど、ぼくを見つけたからと言ってイタズラをしていいわけじゃないにゃ! 今日こそはおしおきするにゃ!!」

 

 ぼくは子どもたちに近づき、


「にゃ~!!」


 子どもたちに飛び掛かろうとしたぼくは、突然、首根っこを捕まれた。


「痛いにゃ~ん!」


 後ろを振り向くと、ご主人様がぼくの首根っこを掴んでいる。

いつものごとく、こっぴどく怒られてしまった。


「子どもたちが悪いのに、どうして分かってくれないの? 切ないにゃ~」


 ぼくは仕方なく、定位置であるリビングのストーブの前に行き、

横になった。


 しばらくすると、


「いっただっきまーす」

 

 子どもたちの声が聞こえた。テーブルの上にはおせちが並べられている。

それを見ていたぼくは


「おいしそうだにゃ~」


 羨ましく思った。


「もしかしたら、今年はご主人様がおせちを分けてくれるかもしれないにゃ!ご主人様~。ぼくも食べたいにゃ~ん」


 ぼくは欲しそうに目をキラキラ輝かせながらとご主人様を見つめた。

けど、まったく気づくころなく昆布巻を食べている。


「やっぱり今年も食べられないにゃ……」


 ぼくはシクシクと心の中で鳴きながらストーブの前に戻って行った。


 ストーブの前でウトウトしていると、


「肉まん。肉まん」


ぼくを呼ぶ声が聞こえてくる……。


 ぼくは目を開けると子どもたちがいた。

子どもたちはお刺身が乗ったお皿を手に持っている。

子どもたちを見てぼくは去年のことを思い出した。


「去年は食べさせるフリをして、結局くれなかったに!」


 今年も、それをやる気かもしれない。

ぼくは警戒をゆるめず、キッと子どもたちをにらんだ。

すると、やはり今年もお刺身をぼくの口元に近づけてきた。


「その手には乗らないにゃん!!」


ぼくは、プイっと首を振った。


「肉まん。アーンして」


子どもはまたお刺身をぼくの口元に近づいてくる。

近づいてくるお刺身……。


「おいししそう。食べたいにゃ~。けど、ダメにゃん!どうせ、去年の二の舞になるにゃ!」


 うまい話には必ず裏がある。ぼくもそろそろ大人になって、

同じ過ちは二度と繰り返さないように学習するべきだよね。


 ぼくはチラリとお刺身を見た。

子どもはニコニコしながら、こっちを見てお刺身をぼくの口元に

近づけブラブラさせている。


もしかしたら今年は違うかも。実は……。


「去年のことは反省しているんだ。そのお詫びに今年は食べさせてあげるよ」


 と思っているかもしれない。

 それか、


「本当は食べさせあげたかったんだけど、他の子どもたちが見ているからついイタズラしちゃったんだよね」


 かもしれない。

 それとも、


「あのとき、ものすごくお腹がすいていたからお刺身を見ていたら食べたくなっちゃってつい……」


 だったりして。


「う~ん」


 ぼくは迷っていた。またイタズラされるかもしれないという考えも捨てきれなかったから。

色々と考えた末、


「よし。こうするにゃん。もし、食べようとした瞬間、手を引っ込められても、それを上回る速度で食べてしまえばいいにゃ! 我ながら名案にゃん♪ それならいっただっきまーす」


ぼくは猛スピードでお刺身に食いついた。


「パクッ!」


 とうとうお刺身をゲットした。

この喜びは、ゆっくり噛みしめて味わなきゃね。

けど……。


「にゃ!? にゃにゃにゃにゃ~!!!」


 ぼくは悲鳴を上げた。


「鼻がツーンとするにゃ!」


 これは、わさびたっぷりのお刺身……!!

ぼくの気持ちを逆手に取って、こんなイタズラをするなんて~。

許せない!


「お刺身はゲットしたけど、これじゃあまるで意味がないにゃん。

子どもたちにしてやられたにゃ~! 今日と言う今日はタチが悪すぎるにゃん。ご主人様にどんなに怒られても絶対にこの場で仕返しするにゃ!」


と怒りがこみ上げたけど……。 


「その前にこの鼻の痛みをどうにかしたいにゃ~。仕返しをしたくても鼻がツーンとしてとても無理にゃ……」





終わり



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