ネコと毛むくじゃら
「う~。寒いにゃん」
お外は風がピューピュー吹いている。
お昼寝をしていたぼくは、寒くて目を覚ました。
「ブルブルブルブル」
震えてしまうくらいの寒さだから、このままだと風邪を引いてしまう……。
「そんなとき、ネコはコタツの中で丸くなるのが一番にゃん♪」
ぼくがおうちに入ろうとしたら、一匹のイヌが目の前の道路を通り過ぎた。
「んにゃ? あったかそうなイヌが歩いているにゃん」
その犬は、たくさんの毛に覆われている。見るからにあったかそう。
犬にしては小柄だけど、ぼくよりはちょっと大きい。
「あのあったかそうなフワフワした毛に触ってみたいにゃん」
ぼくは近づいて行った。
「何か用か?」
ぼくに気づいた毛むくじゃらのイヌは言った。
「わたあめみたいにフワフワしている毛並みを触らせてにゃん」
ぼくは、毛むくじゃらに飛びつきピトっと顔を付けスリスリした。
「おい! 勝手にスリスリするな~!!」
毛むくじゃらのイヌは、素早くぼくから離れた
「いいじゃんいいじゃん。いいにゃんにゃん。毛むくじゃら~♪
スリスリしても毛は減らないにゃん」
今度は身体ピトッとつけて全身でスリスリ、スリスリ。
「あったかいにゃん~♪」
幸せな気分だった。毛並みも気持ちいいし、あったかい。
「おれの名前は、ジャスミンだ。毛むくじゃらじゃない!」
毛むくじゃらはぼくを振り払い、怒って言った。
でもぼくにとっては毛むくじゃらにしか見えない。
「だって、毛むくじゃらだし、それにジャスミンって顔をしてないにゃん。どう見ても、毛むくじゃらにゃん」
ぼくは何度も近づいてスリスリした。
その度にぼくは毛むくじゃらに振り払われる。
けどそんなこと気にしないし、スリスリしていたおかげでぼくの身体が、
だんだんとあたたかくなってきた。
そんなときだった。
ご主人様がちょうど玄関のドアの前に立っていて、
これから鍵を開けようとしていた。
「あ、ご主人様が帰ってきたにゃ~」
ぼくは毛むくじゃらから離れた。
「ぼく、帰るね。じゃあね、毛むくじゃら~。またスリスリさせてにゃん」
ぼくは手をフリフリ別れを告げ、その場を去った。
「おい、おれの名前は、ジャスミンだ~」
毛むくじゃらの叫んでいる声が遠くで聞こえてきたけど
「何か叫んでいるけど、もうどうでもいいにゃん」
ぼくはご主人様とおうちに入った。
《終わり》