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ネコとモデル

「ゴロゴロ~」

 ぼくがいつものようにおうちのリビングで寝っ転がりながら

くつろいでいたら、

「ザワザワザワザワ」

 外が騒がしかった。

人の話し声が聞こえるから外にたくさん人が集まっているっぽい。

 ご主人様も

「なんだろう?」

 って顔をしている。 


 時計を見るとお昼を過ぎたころだった。

こんな時間に外が騒がしいなんてそうないからぼくは不思議に思った。


「もしかして子どもたちがうちに来る予定で、これからおうちの中に入ろうとしているから騒がしいのかにゃ?」

 んにゃ? それにしては騒がしすぎるし、今回は大人の声もするから違うっぽい。

「分かった! 何か事件が起こって人が集まっているのかも?」

それだったら救急車やパトカーのサイレンの音が鳴ったりしているよね。

そんな音はしなかった。


「じゃぁ、特売品を売りに来た車が来て、それを目当てに集まっているのかにゃ?」

 ぼくは窓の外を見た。

 すると道路には、ずらーっと人が並んでいて手を振っていたり、カメラを撮っている人もいる。

それになぜだか分からないけれど、ネコも集まっていた。

「もしかして、ネコにも分かるくらい有名な人がいるのかも!」


 ぼくはどんなことが起こっているのか確かめるためにお外に出た。


 人込みに近づいていくと、みんな嬉しそうな顔をしている。

「かわいいー」 

 とか

「こっち向いて~」

 と言っている声が聞こえた。

「これは楽しみだにゃん。早く行かなきゃ!」

 ワクワクしながら人やネコをかき分け、近づいていくと、

「あれは!」


 そこにいたのは、

「キャンディ!」

 ぼくは思わず叫んでしまった。

 キャンディとはあめ玉のことではなく、ネコの名前。


「もしかして、『ネコ散歩』の撮影で来ているのかも」

『ネコ散歩』は毎週放送しているネコ番組。

ネコのキャンディが色々な所へ行ってお散歩するという番組だにゃん。

先週は、富山県だった。

とうとう、キャンディは石川県の金沢にやって来たらしい。


「やっぱりキャンディはかわいいにゃん」

 スマートで白と栗茶色の毛並みがととのっていて目がパッチリしていた。

そのキャンディがぼくの目の前を過ぎていく。


 ただ歩いているだけなのに、品があってオシャレな感じがするし、顔だけじゃなくてスタイルもいい。

それもそのはず。キャンディはネコ雑誌のモデルをしているから、普通のネコとは違うのは当然にゃん。


 三分も歩かないうちにキャンディはスタッフの男の人に抱っこされ、

車の中へ入って行った。

「へ~え~。世の中にはこんなネコもいるんだね。ちょろっと歩いただけなのに、みんなからかわいいって言ってもらえるなんて」


 ぼくは見るものは見たことだし、おうちに帰ることにした。

ぼくは気づかなかったけど、のそのそと歩くぼくの姿をスタッフの男の人はじーっと見ていた。


 それから一時間後。


「ピンポーン」

玄関チャイムの音が鳴った。

「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」

 リビングでテレビを見ていたご主人様はすぐに立ち上がり、玄関に向かって歩いて行った。

 玄関のドアを開けると、ご主人様はしばらく話をしてぼくを呼んだ。

「なに?」

 ぼくは玄関に行くと、そこにいたのは、キャンディを抱っこしていた

スタッフの男の人がいた。

 するとご主人様は、

「きみを撮影させてくれないかって言っているんだけどどう?」

 えっ。ぼくのこと!?

「ぜひ、肉まんちゃんに『ネコ散歩』に出てもらいたいんだけどどうかな?」

 ニッコリしながらスタッフの男の人は言った。


 どうやら、このスタッフの男の人はぼくが、

おうちに帰って行く姿を見て気になっていたらしい。

『ネコ散歩』には「地元のネコ」というコーナーがあって、キャンディが行った先々に住んでいる地元ネコを紹介するコーナーがある。

そのコーナーに出てもらえませんか? という話らしい。

「嬉しいにゃん。撮影ってことはテレビに出られるにゃん。 ミーコにもハリーにも自慢できるにゃ!」

 ぼくはニコニコしながら

「にゃ~ん」

 と返事をした。ご主人様はぼくの返事を理解し、取材を受けることになった。


 取材はすぐに始まった。リビングにはカメラマンとスタッフの男の人。

ぼくとご主人様がいる。 

「ではいつも通りの姿を撮りたいので、くつろいでね」

「分かったにゃ~ん」

 ゴロゴロと転がってみたり、ネズミのおもちゃと遊んだ。

 ぼくの姿をカメラマンが撮っている。まるでモデルみたいにゃん。


「このテーブルの上に登れるかな?」

 スタッフの男の人は言った。

「やってみるにゃん」

 ここはいいとこ見せるにゃん。このくらいの高さなら重いぼくでも飛べるはず。

「ピョーン」

 グラグラしながらもテーブルの上に乗れた。

「上手だね。これでおしまいだよ。ありがとう」

 スタッフの男の人とカメラマンは帰って行った。


「どんな映像になっているのか楽しみだね」

 ご主人様はニコニコしながら言った。


 一週間後。

「スピピ~。スピピ~」

 ぼくは眠っていると、

「きみー。起きて。『ネコ散歩』だよ」

「えっ。『ネコ散歩』?」

 ぼくは眠たい目をこすって目を開けた。

 すると、キャンディが歩いていて、お散歩をしていた。この歩いている所、見たことがある、ぼくおうちの前の道路にゃん。もしかして、今日はぼくが映っているかも!

 ぼくはドキドキしてきた。


「地元のネコ」のコーナーになった。

 すると、

「わー。ぼくが映っているにゃん」

 そこにはぼくが映っていた。ぼくがゴロゴロとしている姿だった。


「このネコの名前は肉まんちゃん。近所でも有名なぶくぶくと太ったおデブネコです」

 と紹介された。


「にゃ! おデブネコなんて失礼にゃん。このときはゴロゴロとしていたけれど、

いつもゴロゴロしているわけじゃないにゃ!」

 ぼくは怒った。

 しかし、ご主人様は

「フフッ」

 と笑っていた。


「ドジネコとしても有名で、おもちゃと遊んでいるのに、おもちゃに遊ばれています」


 そのとき、ぼくがネズミのおもちゃで遊んでいたら手が滑っちゃって、

おもちゃが飛び跳ねてぼくの頭に当たった映像が映っていた。

「なんでこんなドジしているところを映さないでにゃー」

 ぼくは恥ずかしかった。

 これを見ていたご主人様は。   

「ハハッ」

 と笑っていた。

  

「テーブルの上にかろうじて乗ることができましたが、ギリギリです」


 ぼくがジャンプをしてテーブルの上には乗れたけど、端っこにかろうじて

乗れたから、足がグラグラして落ちそうだった。

 そのグラグラしている姿を見ていたご主人様は、

「ワーハッハッハッー」

 大笑いしていた。


「ご主人様、ひどいにゃん。笑うなんて!」


「以上。近所でも有名なおデブでドジネコの肉まんちゃんでした」

 

番組は終わった。


「いや~。面白かったね。きみを撮影させて欲しいって言われたからなぜですかって

聞いたんだよ。すると、近所で有名なおデブでドジネコだからって言われたんだよね~」

「え~。そうなの? ぼくがてっきり、近所でかわいいネコだからだと思っていた

にゃん」

 そんな都合のいいように思っていたのはぼくだけだったみたい。いつもは

ここまでドジはしていないけれど、ドジばかりしている所を見られたら

いつもそうしているんだろうなぁと思われちゃうにゃん。


「あっ。しまった。『ネコ散歩』は、ミーコやハリーはもちろんのこと。

近所のネコたちはみんな見ているし、全国放送だから、ぼくの知らない人たちやネコたちにも見られている」

 ぼくは恥ずかしくて顔を真っ赤にした。

「こんなドジしている姿をみんなに見られているなんて恥かしい。テレビって恐ろしいにゃ~」

ぼくはそう思った。



《終わり》


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