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ネコとミルク

「うー。寒いにゃー」

 ぼくは目を覚ました。

いつものように、日が当たる窓際でうたた寝をしていたら、

冬は日が短いせいか、あっという間に日が落ちてすっかり寒くなっていた。


「ブルブルブルブル」

 思わず、身体を震わせた。

「こんなときはあたたかいミルクが飲みたいにゃ~。もし、主人様がキッチンにいたらミルクをねだるにゃん」

キッチンに行くと狙い通り、夕食の準備をしようとしていた。

「これはチャンス!」

 冷蔵庫の前に行って、

「にゃーにゃー」

と鳴いてミルクが欲しいアピールをした。

 すると、ご主人様は分ってくれたらしく、冷蔵庫からミルクを出してくれた。

ぼくの思惑通りの結果になった。


 ミルクは甘いし、ぼくの毛並みと同じ白色。おまけにおいしい。

だから、大好きな飲み物なんだ。

"カルシウム"や“たんぱく質”という栄養素が入っていて身体によいらしのだけど、

飲みすぎるとよくないらしい。

そのせいで、飲む量は多くないし、毎日はくれない。


主人様はミルクをマグカップに注ぎ、電子レンジの中に入れた。

ボタンを押して二分と表示されている。

あと三分か~。待ちどおしいにゃ。

「ワクワク」

期待しながら、電子レンジを見ている。

一分四十五秒、一分四十四秒と数字がどんどん減ってきている。

二分ってあっという間だけど、待っていると長いにゃ~。

「グ~」

ミルクが飲めることを考えただけでぼくのお腹が鳴った。

ふと気になって電子レンジを見た。すると、一分二十秒になっていた。

「まだかにゃ~。まだかにゃ~」

 あともう少しで温かいミルクが飲める。

そこでご主人様とパチリと目が合う。


電子レンジの前に待っていたらいかにも飲みたいのがバレバレだから、

ぼくは大人しく、リビングで待っていよう。

そして、チラリと電子レンジを見る。表示は五十八秒になっていた。

あとちょっと。ぼくはキッチンを出てリビングで待っていた。


 キッチンからは

「ガチャガチャ」

 と音がする。

きっと、戸棚からぼくがミルクを飲むときに使うボウルを出しているに

違いない。それにミルクを注いでくれるはず。


「チーン」

 電子レンジの音が鳴った。できあがったみたい。


「ワクワク。ミルクが飲めるにゃん」

 そんなことを思っていたら。

「あーっ!」

 ご主人様の声がした。


 ご主人様に何かがあったみたい。

もしかしたら、ゴキブリでも出たの?

あるいは、ご主人様の大好きなドラマを録画することを忘れて今、思い出したのかもしれない。

それとも、ぼくのお皿を割っちゃったの?

でも、それはないはず。

割っちゃったのならパリーンって音がするだろうし、

 そもそもぼくのお皿はプラスチックでできているから簡単には壊れない。

そこでぼくは、キッチンへ行って確かめることにした。

電子レンジの前に立っているご主人様に近づくと、何が起こったのか分かった。


「ミルクが吹きこぼれているにゃん」

 電子レンジの中はミルクが飛び散っていて、

取り出されたマグカップに入っているミルクは半分くらいになっている。


どうやら、温め時間を間違えたっぽい。

そういえば、マグカップにミルクをギリギリまで注いでいた。

温め時間を間違えたのは仕方ないけど、

ミルクをギリギリまでマグカップに注ぐのはダメだよ。

もっと大きい入れ物に入れてあたためたらよかったのにね。

それか、チラチラ電子レンジをこまめに見て確認すればよかったのかもしれない。


 すると、ご主人様はぼくを見て、

「きみはネコだから、アツアツのミルクよりぬるい方がいいよね」

 テーブルの上に置いてあったぼく用のボウルに半分になったミルクを

注ぎ、そのあと、冷蔵庫の中に入っているミルクを取り出すと、そのまま注いだ。


 えっ! 冷たいミルクをつぎ足すの? それじゃあぬるいじゃない。

「もう一回、ちょっとでいいからあたためて」

 とご主人様に目で訴えた。

すると、

「これくらいがちょうどいいんだよ。きみには」

 と言った。


 きっと、あたためるのがめんどうくさいだけっぽい。

もしぼくが反論してダダをこねたら、ご主人様の機嫌を損ねてミルクをくれないかもしれない。

ぬるぬるでもミルクは飲みたい!

今日はぬるぬるミルクで我慢しよう。

ぼくはリビングに行ってぼくの定位置のストーブの前に行って座った。

すると、ご主人様はぼくの目の前にミルクが入ったボウルを置いてくれた。

ぬるぬるであろうミルクに口をつけると……。


「にゃ!」

 ぼくはビックリした。丁度いい温度だったからだった。

それにしてもぼくは不思議に思った。つぎ足してこの温度ってことは……。

ご主人様をチラリと見る。


なになに。

「やっぱり、ちょうどいい温度だっでしょ?」

と言った。


 それって、今日もいつもと同じ温度っぽい言い方だよ。

さては、毎回吹きこぼれさせてるっぽい。

これなら、次もそうなる可能性100%だね。

テレビに出ているお天気お姉さんが、明日のお天気を予報するみたいに、

ご主人様が次もミルクを吹きこぼすだろうとぼくは予報した。


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