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ネコと湯たんぽ

「にゃん。にゃん♪ あったかいにゃ~」

湯たんぽの上にお腹を乗せていると、心も身体もすっかりご機嫌!

寒がりのぼくの為に、ネコ用の湯たんぽを買ってくれた。


そんなとき、

「ガチャ」

玄関のドアが開く音がした。

ご主人様が帰ってきたっぽいけど、湯たんぽの上でぬくぬくしていたから、お迎えに行くのがめんどうくさくなって行かなかった。


すると、

「肉まん」

ぼくを呼ぶ声がした。

ふと前を見るとミーコがぼくを覗き込んだ。

「ミーコ。どうしたの?」

 なぜかミーコがぼくのおうちにいた。

「あれ? ミーコをおうちに入れたっけ?」

 ぼくには記憶がなかった。

「肉まんのおうちに遊びに来たら、ちょうど肉まんのご主人様が鍵を開けている所だったから、いっしょに入れてもらったの。

「へ~え~」

ぼくは適当に相槌をした。

ミーコが来ても、ぼくはミーコと遊びたい気分にはなかった。

もっと湯たんぽの上で寝ていたいから、すぐにでも帰って欲しかった。


すると、

「ねぇ、肉まん、それ何?」

ミーコは湯たんぽを見ながら言った。

「これ、湯たんぽって言って、この中には温かいお湯が入っていて

これにお腹を乗せているとあたたかいんだよ~」


「ふーん」

ミーコは興味深々だった。

「ねぇ、それ、私に貸して!」

「え~。ミーコのお家はお金持ちだから、

湯たんぽなんかなくても、あたたかくて快適にすごせるでしょ?

だから、湯たんぽなんて必要ないにゃん!」

「だって、コレ、私のおうちにはないわ。だから気になるもん!」

ミーコは気になって仕方ないらしい。

そりゃミーコのおうちには湯たんぽなんてないよ。

ミーコのようなお金持ちのおうちだったら湯たんぽよりももっといい暖房器具を使っているはず。

「やだ~。これはぼくの湯たんぽにゃ~」

 ぼくは暖かい湯たんぽからはなれたくなかった。

「いいから貸して!」

 ミーコは強い口調で言って、ぼくにぶつかってきた。

「痛いにゃ!」

ミーコはぼくを押しのけて、湯たんぽの上に乗った。

ぼくの重たい身体を押しのけるなんて、

女の執念はすさまじいとしか言いようがない。


「あったか~い」

ミーコはうっとりした顔をしてすっかりご満悦だった。


「ぼくの湯たんぽなのに~」

ミーコにアッサリと湯たんぽを奪われてしまった。

あの様子だと、すぐには湯たんぽを返してくれるとは思えない。

ぼくは湯たんぽを諦め、ご主人様のひざ掛けに入ろうとしたら、

ご主人様がすでに使っていた。


「うぅ~」

ぼくは仕方ないから丸くなって、部屋の隅に横になった。


しばらくすると、ミーコが寄ってきて、

「もういいわ。私、帰る。じゃあね」

と、ミーコは帰って行った。

「何か用事があったのかにゃ? 」

湯たんぽにお腹を乗せると、どうしてミーコが帰って行ったのか分かった。

「あっ!」

湯たんぽがぬるくなっていた

ミーコはぬるくなったから、帰って行ったっぽい!


ぬるい湯たんぽは嫌だから、ご主人様に頼んであたたかいお湯にしてもらおう。

「ご主人様~。ぬるくなったからあたたかいのに変えてにゃ~」

ぼくはご主人様の足元をスリスリしてみた。


ご主人様を見ると、ぼくの要件は分かったみたいだけど、

「めんどうくさい」って顔をしている。


「かわいいぼくのためにあたたかいのに変えてにゃ~」

目をキラキラ輝かせながら訴えた。

しかし、ご主人様は見なかったふりをしてひざ掛けを身体にかけて横になり目を閉じた。


「ひどいにゃ~、自分だけはあたたまってぼくのことはほったらかしなんて~」

目力作戦は失敗みたい。じゃあ次の作戦を考えよう。


「ご主人様~」

ぼくはかわいくシッポをフリフリさせてご主人様におねだりしてみた。

ちらっと見たけど、「うっとうしい」って顔をしてすぐに目を閉じてしまった。

「ひどいにゃ~。こんなにかわいいぼくをないがしろにするなんて~」

シッポがだめなら、かわいい声はどうかにゃ?

かわいい感じでないてみよう。


「にゃにゃ~ん♪」

 ぼくは渾身の力を出して、かわいくないてみた。

声に気がついたご主人様はぼくを見て、ムクッと立ち上がった。

「もしかして、ぼくの思いが通じたのかにゃ?」

と思っていたけど、首ねっこを捕まれ、ぼくを窓まで連れて行き、

「ポイッ」

 と外に放り出した。


 そして、

「ピシャ!」

と窓を閉めた。

どうやら、ご主人様の気に触ってしまったらしい。

「にゃ~。ご主人様~。お外は雪が積もっていて寒いにゃ~。開けてにゃ~」

このまま、お外で過ごしたら、凍ってしまいそう……。

「ブルブルブルブル~」

 ぼくの身体は震えが止まらない。

「さっきはちょっとやりすぎたかもしれない。けど、ご主人様だって悪いにゃん。めんどくさいから何もしないなんて……。あっ。こんなことを言ったら怒られるかもしれないにゃん。も、もう反省したから開けてにゃ~! 」

 ぼくは散々寒空の中、ずっとないていた。

 

しばらくすると、

「ガラッ」

 っと窓が開いた。

 さすがにお外は寒すぎると思ったみたいでおうちに入れてくれた。

「ご主人様~」

 ぼくは叫びながら、おうちに向かって走った。

このときばかりは全力疾走で部屋に飛びこんだ。

そしてご主人様のひざ掛けに飛び込んだ。


「やっぱりご主人様のひざ掛けが一番にゃん」

 ご主人様もひざ掛けに入ってきてぼくはご主人様と眠った。


「スピピ~。スピピ~」

気持ちよく眠っていたら……

「ゴンっ」

 ぼくの顔にご主人様の手が当たった。

実は、ご主人様ってものすごく寝相が悪い。

「またぼくにぶつかるかもしれないけど寒いから動きたくないにゃん。湯たんぽがあったかかったらそっちに行くけど、今日はぬるぬるだから諦めるにゃ~」

 しばらく眠っていると……。


「スピピ~。スピピ~」

「ゴンっ」

「痛いにゃ~」

 

 五分後


「スピピ~。スピピ~」

「ゴンっ」

 またぼくにぶつかった。

「痛いにゃ~!」

 今日はいつになく寝相が悪いみたいだから、このままではとても安眠できそうにないっぽい。ぼくはひざ掛けから抜け出した。

「これなら、コタツの中の方がマシにゃん」

 ぼくはコタツの中に入った。

「あっ! コタツの電源が入っていないにゃ!」

 ご主人様はコタツの電源を切っていたみたい。使わないから切るのは仕方ないけど、いつもならうっかりつけっぱなしってことがあるのにこんなときに限って……。

 ご主人様を見たけど、

またひざ掛け潜りこんだら痛い目にあうかもしれない。

湯たんぽを見たけど、ぬるぬるだからあんまり意味がない。

コタツを見たけど、あたたかくない。

「うぅ~。痛いのも、ぬるぬるも寒いのもどれも嫌にゃ~」

 ぼくは叫んだ。



《終わり》

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