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ネコとクッキー(前編)

「ワッショイ、ワッショイ」

 外から元気のいい声が聞こえる。

窓からお外を眺めると、おみこしが見える。

今日は神社でお祭りがあるから、ご主人様は出かけた。

 だからぼくはお留守番。

「今年もスーパーボールすくいをしてきてくれるかにゃ~」

 ぼくはスーパーボールが好き。

転がすと勢いよく転がるし、ポンポンと飛びはねる。

「去年は青いボールだったから今年は違う色のボールがいいにゃ~」

そんなことを思っていたら、


「ガチャ」

 と玄関が開く音がした。

「あっ! ご主人様が帰ってきたにゃん!!」

 ご主人様を迎えに行くと、手にはビニール袋を持っている。

ん? 何だかご主人様の様子がおかしいにゃ。

リビングに入ると、

「どうしたのご主人様?」

 ぼくは心配そうにご主人様を見つめた。

なになに。

「神社でおみくじを引いたら凶だったから、もう一度引いた。次は末吉だったから、

くやしくて大吉が出るまで引いたら十回も引いちゃった」

だって~。

 それは大人げないよ。ショックなのは分るけど、気にしすぎ。

するとご主人様は、ぼくの顔を見て

「あっ!」

 と言って何かを思い出したみたい。

「ぼくに言いたいことがあるのかにゃ?」

 なになに。

「おみくじのショックでスーパーボールすくいをするのを忘れてしまった。ごめんね」

 だって~。


「え~。それはひどいにゃ!」

ぼくは大声でないた。

 すると、ぼくへのお土産なのか、持っていたビニール袋から何かを取り出して見せてくれた。どうやらお菓子らしく、十個くらい入っている。


「クッキー」と書いてあるけど、クッキーの前の文字が、ご主人様の指で隠れていて

何と書いてあるのか分らない。

一体、このクッキーは何クッキーなんだろう?

分っているのは何かが入っているかのように真ん中が膨らんでいること。

あと気づいたことは、なんだか硬そうだと言うこと。

しかも、ご主人様が「ぼくに見せたくて仕方がないっ」

って顔をしているから、

何か普通のクッキーじゃない感じ。

「このクッキーは何だろう?」

 ご主人様は、クッキーの袋を開けてくれてその袋をぼくの前に出した。


なになに。

「このクッキーを一つ取って、このお皿に置いて」

 だって。

 ぼくは一つ掴み、ズリズリと引きずってお皿の上に置いた。

ご主人様は、クッキーを手に取って、クッキーをかじった。


「パキン」

 とかたそうな音を立てた。

すると、クッキーの中から紙が出てきた。

「何それ!」

 ぼくはビックリした。

ふくらんでいたのは紙が入っていたからだったんだ。

クッキーが入っていた袋を見ると、


「おみくじクッキー」

 と書いてあった。

「へ~え~。おみくじが入っているクッキーだったんだにゃん。だから真ん中がふくらんでいたんだね。で、結果は?」

 ご主人様は、また「あっ!」って顔をした。

「ぼくも見たいにゃ~」

 ぼくはご主人様に近づくと、ご主人様は紙を見せてくれた。

そこには「凶」と書いてあった。


「やだ~。そんなの。もう一個ちょうだい!!」


 ぼくは、袋の中に手を突っ込んでお皿の上にクッキーを乗せた。

ご主人様は、「仕方ないなぁ」って顔をしてクッキーをかじってくれて、中に入っていた紙を出してくれた。

 ぼくにも見せてくれて紙には「末吉」と書いてあった。

ぼくにはよく分らないけど、微妙な結果なのでしょ?

テレビで、おみくじの特集番組を見たことがあった。

それによると、「大吉」が一番よくて「凶」がよくないらしい。

だから、「末吉」はきっと、びみょうな結果というのが予想できた。

ぼくはくやしいからまた、袋の中に手を突っ込んでお皿の上にクッキーを乗せた。

ご主人様は、クッキーを手に取って、クッキーをかじった


「パキン」

 次の結果は「吉」だった。

「こうなったら大吉が出るまで引き続けるにゃ~」

 ぼくはおみくじを引くのに夢中になっていた。

ご主人様は「いやな予感がするっ」って顔をした。


 ぼくはこの調子でおみくじを取り出し続けた。

ご主人様はしぶしぶクッキーを手に取ってかじってくれた。


吉、小吉、中吉、末吉……。大吉はなかなか出なかった。

ご主人様は、お皿の上にある最後の一個のクッキーをかじって、

入っていた紙を見せてくれた。そこに書かれてある文字は大吉だった!


「やった~。大吉にゃん!!」

ぼくはとてもうれしかった。

けど、おみくじクッキーを食べすぎてお腹いっぱいになっている

ご主人様は

「もう勘弁して~」って顔をしていた。

そんなご主人様には目もくれず、大吉の紙を見ながらすっかりご機嫌になっていた。


 ご主人様が大吉をなかなか引け当てられなくて

くやしかった気持ちがよく分かったけど、

「おみくじは何回もやるものじゃない」

 とご主人様には教えてあげたい。ぼくはいいんだよ。

ネコだからね。

そう思いながら眠った。


 一方、ご主人様は、ぼくを見ながら何か思いついたみたいで、

ニコニコしているというか、何かをたくらんでいる顔をしている。

その計画に気がついたのは次の日のことだった。



《続く》


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