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ネコと赤ちゃん2(後編)

「スピピ~。スピピ~」

 ぼくはいつものように眠っていた。


 しばらくすると……。


「ポカっ」

 何かがぼくの身体に当たって目が覚めた。

「痛いにゃん!」

カーペットの上を見ると、積み木が転がっている。

「ひょっとして……」


「ヒューン!!」

 積み木が次々とぼくに向かって飛んでくる。

わずかにぼくには届かず、ぼくの身体に当たらなくて済んだ。

「カナちゃん。積み木を投げてはダメにゃん!」

 そう、カナちゃんに向かって言うと、

 さらに、勢いよく投げつけてきた。

「わーん。わーん」

 カナちゃんは突然、泣き出した。

どうやら、機嫌が悪くなって積み木をぼくに投げつけたみたい。

リカちゃんはバックからタッパーを取り出した。

ふたをあけるとごはんが入っていた。

それをスプーンを使ってカナちゃんに食べさせた。

よほどお腹が空いていたのか、満面の笑みを浮かべながら、

おいしそうに食べている。機嫌が直ってよかった。


 最初はリカちゃんがカナちゃんに食べさせていたけど、

練習の為か、自分でスプーンを持たせて食べさせるようにしている。


「一人で食べられるのかにゃ~」

 と思って見ていたけど、上手に食べているみたい。

「へ~え~。自分で食べられるんだね。エライにゃん」

 リカちゃんは安心したのか、散らかした積み木を片づけている。


 するとカナちゃんは、

「ポトン」

 スプーンをカーペットに落とし、手づかみで食べ始めた。

まだカナちゃんは、一人でスプーンを使って食べるのは難しいみたい。

「カナちゃん、スプーンを使って食べるにゃん! それに、手で食べちゃダメにゃん!」

 そう思っていたら……。


「ポロっ」

 今度は食べ物を洋服にこぼしてしまった。

リカちゃんは慌ててカナちゃんの元に駆け寄り、

「ダメでしょ!」

 と叱りつけた。

お洋服を汚して怒られるのはネコだけじゃなくて、

人間の赤ちゃんも同じだね。


 けど、リカちゃんはお洋服にこぼしたことばかりを気にして、

カーペットにボロボロと食べ物を落としたことについては、

まるで気にしていない。

「これは子どもの教育としてはよくないにゃ! このままじゃ、お客さんのおうちで食べ物をこぼしたり落としたりしても悪いと思わない、いけない大人になってしまうにゃ。

ここはひと肌脱いで、ぼくが注意するにゃん!」

 と思ったけど、

「ぼくが注意をしたら、またシッポをかじられちゃったりして……。かじられるだけじゃなくて、シッポをギューと握られちゃうかも。あっ。そもそもネコのぼくが注意をして聞いてくれるかにゃ~」

 まぁ無理かもしれないけれど、とりあえずやってみることにした。

ぼくはカナちゃんに近づき、

「カナちゃん! カーペットに食べ物をこぼしちゃダメにゃん!!」

 しかし、カナちゃんは見向きもしない。やっぱりダメだった。

「カナちゃんがダメなら、リカちゃんに注意するにゃ!」

 ぼくはリカちゃんに近づき、

「リカちゃん! じゅうたんに食べ物をこぼしたことをカナちゃんに注意をしないとダメにゃん!!」

ぼくが必死に叫んでいると、いきなり背後から首根っこをつ掴まれた。

「痛いにゃん!」

 振り向くとご主人様がにらみつけている。

どうやら、ぼくの声がうるさかったらしい。

このままだとカナちゃんがロクな大人にならないから、注意をしただけなのに……。

「ご主人様は怒っているけど、ぼくは悪いことをしていないにゃ!

ここで引いたらネコの恥にゃん!!」

 ぼくは首根っこを捕まれながらも必死に叫んだ!


「ご主人様からも、リカちゃんとカナちゃんに注意をしないとダメにゃん!」

 ご主人様は、ますます怒って、ぼくを窓まで連れて行き、

「ポイッ」

 と外に放り出した。

そして、

「ピシャ!」

 と窓を閉めた。

ご主人様は「そこで反省しなさい」って顔をしている。

「なんて理不尽な仕打ちにゃぁ……。ぼくの努力は何の効果もなかった

正しいことをしても、むくわれない世の中なんて嫌にゃ~!


 ひょっとしたら、ぼくの言葉が通じていたらこんなことにはならなかったかもしれない。

 じゃぁ今度同じようなことがあったら、

身体を使ったジェスチャーで注意しよう!

 けど、ネコのジェスチャーが人間に分かってもらえるか、とっても微妙~。

試しにやってみよう。

とりあえず、手を曲げて大きく振ってみた。

「にゃ~!!」

 バランスを崩して倒れてしまった。

これでは「変な動きをしている子」と

思われて余計怪しまれるかもしれない。

「何だか切ないにゃ~」

 

そんなとき、

「ピュー」

 と風が吹いた。

「うぅ~。寒いにゃ~。早くおうちに入れて。ご主人様~」

 ぼくは大声で叫んだ。


 その様子を窓越しに見ていたご主人様は、

「この子は何をやっているのだろう。もしかして、本当は何か伝えたいことがあったのかなぁ。カナちゃんとリカちゃんに……」

そう思い、二人を見た。

 すると、相変わらず、カナちゃんはカーペットに食べ物をこぼし、リカちゃんはお洋服にこぼしたことばかりを気にしている。


「カナちゃん。カーペットにこぼしちゃダメだよ。それにリカちゃん。カナちゃんのお洋服に気を取られていないで、カナちゃんのことをちゃんと見てあげてね」

 そう言うと、ご主人様は窓を開けた。



《終わり》

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