表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/143

ネコのお買い物(後編)

 しばらく経って、

「ガチャ」

 玄関のドアが開く音がした。

ぼくは目を覚まし、

「んにゃ~。ご主人様が帰ってきたにゃ~」

 玄関にお迎えに行くと、ご主人様の両手には、

大きな買い物袋を持っていて、とても重そうだった。

 チラシを忘れて行ったから、

買い忘れがあるかもしれないと心配したけれど、これだけ買って帰って来たなら大丈夫そう。

 

 普段なら、そのまま台所に行って、冷蔵庫にしまうのだけど、

あまりにも重かったのか、ひとまず、リビングのテーブルの上に置いた。

「ご主人様~。何を買ったの?」

 ぼくは、買い物袋の中身が気になった。

だって、あんなに買ってきたんだもん。気になる。

「にゃ~。にゃ~」

 とご主人様に、何を買ったのか、見せて欲しいとねだったら、分かってくれたみたいで、買い物袋から一個一個出してくれた。


 最初に取りだしたのは、値引きシールが張られたデザートだった。

しかもいくつも出てくる。

「んにゃ? これって、賞味期限とか消費期限が近いとかで値引きして売っているやつだよね?」

 

 しかも、ぼくとご主人様と二人暮らしだけど、ぼくはご主人様が買ってきたデザートを食べることができないから、ご主人様しか食べない。

こんなにたくさん買って、食べ切れるのかなぁ。

期限は今日とか明日なのに。

「このデザートは特売品とはあまり関係ない気がする。うっかり買ってきちゃったっぽいにゃん」


 次に出てきたのは、マヨネーズとソース。

「あれ? これって特売のチラシには書いてなかった気がするにゃん」

 テーブルの上に置いてあるチラシを見たけど、書いてなかった。

もしかして、買い置き用に買ってきたのかも。

 けど、マヨネーズもソースもこの前の特売で買ってきたばっかりだった。

しかも、そのときも買って来た理由は買い置き用だった。

大人数で住んでいたら必要かもしれないけど、ぼくらには必要ないはず。

「ご主人様~。少しは学習して欲しいにゃん」

 ぼくはそう思った。


 次に出てきたのは、『桜色のモンブラン』と『新食感チーズケーキ』またもやデザートだった。

 よく見ると、この二つのデザートには「新商品」というシールが貼ってある。

 どうやら新商品のデザートを見つけて買ってきたらしい。

値引きシールが貼ってあるデザートもたくさん買ったのに、新商品のデザートも買っちゃったのね。

 値引きシールが貼ってあるデザートよりは賞味期限が持つだろうからセーフだけど、買いすぎだよ。

ご主人様は甘いものが大好きだからこんなにあっても全て食べちゃうけど、これを全部期限内に食べたらまた太っちゃうよ。

もしかして、ご主人様は、お買い物が下手なのかもしれない。


「ご主人様は、赤ペンでまるをつけた特売品をちゃんと買ってきたのかにゃ……」

ぼくは心配になった。


 次の袋を開けると、かぼちゃ、小松菜、大根、キャベツ、レタス、卵、牛乳、牛カルビ、生かつお、インスタントコーヒーが出てきた。

 こっちは本当の特売品を買ってきたみたい。

目的はちゃんと達成できたみたい。それならよかった。

「あれ?」

 ぼくはあるものがないことに気がついた。

「ご主人様、「お魚と高級牛肉」味のキャットフードは?」

 袋の中身は全部出ている。と言うことは、間違いなく買い忘れている!

ご主人様もキャットフードを買い忘れたことを今、気がついたみたいで、「あっ!」って顔をしてぼくを見た。

「ジ~」

 ぼくもご主人様を見つめた。

「ひどいにゃ!」

 ぼくはご主人様の前でにゃーにゃーないた。

自分のものはしっかり買っているのに、ぼくのものは忘れるなんて……。

 ご主人様はぼくに、

「買い忘れちゃった。ごめんね」

 と言った。

 とりあえず、テーブルの上に広げたものを全部、冷蔵庫に片づけ、

またお買い物に行くことになった。

 そして、ご主人様は再び出かけた。

さっきは、特売品とは全く関係ないものや、自分の欲しいものはしっかり買って、肝心なぼくのキャットフードを買い忘れちゃったのには腹が立っていた。


 少し時間が経って落ち着いてきたら、

「せっかく買ってきてもらうのに、腹を立ててはいけないにゃん」

ぼくは反省した。


 それから三十分後、

「ガチャ」

 玄関のドアが開く音がした。

「ご主人様が帰ってきたにゃ~」

 ご主人様を迎えに行った。

「ご主人様~。お帰りなさい。さっきはたくさん怒ってごめんなさい。たくさん買うものがあったら忘れてしまうのは仕方ないにゃん。あれ?」

 ぼくはご主人様を見てビックリした。

また大きな買い物袋を持って帰ってきた。

 キャットフードだけを買いに行ったのだと思っていたんだけど、違ったみたい。

 まさか、袋に入っているものすべてがキャットフードなの? 

それともまだ買い忘れがあったの?

 実は、出かけたついでに、他のお店に寄ったのかな? 


 リビングに入り、さっきと同様にテーブルの上に広げた。

袋の中からぼくの欲しがっていた、

新商品「お魚と高級牛肉」味のキャットフードが三缶出てきた。

「ありがとう。ご主人様~」

 ぼくはお礼を言った。

「三缶だけなら他は何かにゃ?」

 オレンジジュース、リンゴジュース、パイナップルジュースなどのジュース。

 メロンパン、クリームパン、クロワッサン、デニッシュ、蒸しパンなど菓子パンが出てきた。「ご主人様~。買いすぎにゃん。安いからと言って、ついつい色々なものを買っちゃダメにゃん。こんなに食べ切れないでしょ? これなら、ぼくの方が買い物上手かもしれないにゃ!」

 ぼくは本気でそう思った。



《終わり》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ