ネコの家出(後編)
「ごちそうさまー」
お腹がいっぱいになったミーコはすっかり満足したようで、
眠たそうな目をしていた。
すると……
「ピンポーン」
玄関チャイムの音が鳴った。
「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」
ぼくたちが食べたお皿を片づけようとしていたご主人様は玄関に向かった。
「こんな時間にお客さん? もしかして、ミーコのご主人様かにゃ?」
ぼくは廊下から首を出して覗いてみたら、やっぱりそうだった。ぼくのおうちにいるんじゃないかと思ってやってきたっぽい。
「ミーコ! ミーコのご主人様が来たよ」
ウトウトしていたミーコは、ハッと目を覚ました。
「私は、もうおうちには帰らないわ!」
相変わらず、帰る気はないらしい。
すると、ぼくのご主人様とミーコのご主人様がリビングにやって来た。
「にゃ~」
と鳴いて、「こんばんは」の挨拶をした。
ミーコのご主人様はぼくに「こんばんは」と言った。
ミーコのご主人様は裕福なお家に住んでいるせいか、
いつ見ても、気品がある感じがする。
「ミーコ。帰りますよ」
ミーコのご主人様はミーコに声をかけると、プイっとして、
リビングの隅っこに行ってしまった。
ミーコのご主人様は、その姿を見て困った顔をしている。
ぼくはミーコの元へ行き、
「ミーコ、ご主人様が呼んでいるよ。帰らなきゃ」
ぼくはミーコに帰るように説得した。
「いや。私は帰らない。モモよりも私のことを大事にしないなら、絶対にいや!」
ミーコは断固拒否をした。
「もう~。ミーコ~。ご主人様を困らせてはダメにゃん。早くおうちに帰りなよ~。ぼくのおうちにいたら、お取り寄せしている外国製の高級キャットフードも食べられないし、ケーブルテレビでしか見れないネコアニメも見られないんだよ。それでもいいの?」
「うっ! それは困るわ」
ミーコはネコアニメが好きで、毎週楽しみに見ている。
しかし、ぼくのおうちでは残念ながら見られない。
「だったら帰るにゃん!」
「でも……」
散々怒っていたから、今さら引き下がれないと思ったのか、
ミーコも迷っている。
すると、ぼくのうしろから人影を感じた。
振り向くと、ミーコのご主人様がいた。さっとミーコを抱き上げると、
「いい加減にしなさい! モモにやきもちを妬くんじゃないの。モモはミーコみたいに、機嫌がよいときだけとか、遊んで欲しいときだけ私のそばに寄ってくるのとはわけが違うのよ。モモは私がいないと生きていけないの。モモが落ち着いているときや、寝ているときだったら、ミーコと遊んだり、かまってあげられるから、少し待っていてといつも言っているでしょ? そんなに帰るのがいやなら、もう帰って来なくていいわ。その代り、肉まんちゃんのおうちからも出て行くのよ!」
いつもはおっとりしているミーコのご主人様がものすごく怖い顔で怒った。
そんなご主人様を見てミーコは、
「ごめんなさい~」
ミーコはにゃんにゃん鳴き出した。
結局、ミーコはおうちに帰ることになった。
玄関先に行っても、ミーコはまだ鳴いていた。
よっぽど怖い思いをしたのかもしれない。
おそらく、ミーコはあんなに怒られたことはなかったっぽい。
自分が悪いことをしたって反省してくれたかなぁ。
とにかく帰ってもらえてよかった。
「お世話になりました」
ミーコのご主人様は、ぼくのご主人様に挨拶をして帰って行った。
ところで、ぼくもミーコみたいにワガママを言いすぎたら怒られる程度じゃ済まないかもしれない。
「バツとして三日間、ごはんあげません!」
って言われたらどうしよう……。
「ぼくはミーコのようにならないようにしないと……にゃ!」
ミーコは、ぼくの反面教師だにゃん。
《終わり》