ネコと手土産(前編)
「きみー。お出かけするよ」
ご主人様は手に紙袋を持っている。
あの包装紙を見るときっと中身はおせんべいだにゃん。手土産っぽい。
誰かに会いに行くっぽい。どこに行くのだろう。
車に乗り五分後、車を停めた。
そこはスーパーの前だった。
「誰かのお家に行って、料理でもするのかなぁ」
と思っていたら、
「すぐ終わるから待っていてね」
そう言って車を降りた。
十分後。
「おまたせ」
お買いもの袋を持って戻ってきた。ぼくは気になり袋の中をチラッとのぞいた。
りんごジュースとぶどうジュース。スナック菓子が入っているのが見えた。
ジュースもスナック菓子もご主人様はほとんど食べない。
いつもおやつを食べるとき飲み物はお茶で、和菓子かおせんべいを食べている。
きっと誰かにあげるみたいだにゃん。
いったい、誰に会うのだろう?
そう思いながら乗っていたけれどしばらくしたら、
「スピピ~」
といつものように眠ってしまった。
「きみー。着いたよ」
目を覚ますと、見たことがないおうちの前だった。
玄関には開けると、聞いたことがある声がいくつも聞こえた。
んにゃ? もしかしてこの声は……。
「肉まん!」
子どもたちの姿があった。どうやら子どもたちのおうちらしい。
だからジュースとスナック菓子を買ったんだね。
「おじゃまします」
ご主人様とぼくは子どもたちの家に入った。
ご主人様が手土産を渡すとお母さんも子どもたちも喜んでいた。
子どもたちのお母さんがお寿司を用意してくれていて、ぼくにもお魚を分けてくれた。
もちろんお寿司のネタではなく、ぼくのために用意をしてくれたお魚。
お寿司はおいしそうだけど、食べてはいけないお魚が多いらしい。
子どもたちはごはんを済ませると、おもちゃで遊び始めた。
しばらくは何もなかったのだけど、ぼくがお腹が膨れてウトウトし始めたときに事件が。
「これはぼくのー!」
「これで遊びたいの!」
一番上の子どもと真ん中の子どもがケンカをし始めた。
おもちゃは一番年上の子どもが力づくで手に入れたけど、
「痛いっ!」
真ん中の子どもが力では勝てないと思ったみたいで腕にかみついた。
ケンカは怖いにゃん。きみはどう思っているの?
一番年下の子どもを見たら、関わりたくないのかおままごとで遊んでいる。
「やめなさい!どうして毎日毎日同じようなことでケンカするの!!」
お母さんがピシッと怒ると子どもたちはケンカをやめた。
再び一番年下の子どもを見た。気にする気配もなく、おままごとをしている。
いつものことだから気にしないのかも。
自分の世界に入っている方が楽しいよね。ケンカすることも見ることよりも。
そんなことを思っていたらす突然……。
「フワリ」
一番年下の子どもの身体が浮いた。
コレって浮いているよね?
一番年下の子どもはビックリしたのか足をバタバタさせている。
浮くってなに? いくらこの子が軽くても部屋の中にいて浮くなんてないよね。
もしかして本当は何か台があるのだけど、ぼくには見えないようにしているのかも?
浮遊マジックみたいな……。
「どうして?」
ただただぼくはおどろくばかりだった。
《続く》