ネコと不思議な絵
「きみー。コレ見て。」
ご主人様は絵を見せてくれた。その絵は、帽子をかぶった女性の絵だった。
「この絵がどうしたの?」
ぼくは不思議に思った。
もしかして、すごーく高い絵? それとも上手な絵だから、”六歳の子が描きました”みたいな天才子ども画家が描いたとか?そもそも絵じゃなかったりして。写真?
けど、絵にしか見えないけど……。
「きみはこの絵を見て女性だと思った?」
「にゃー」
思ったよ。と返事をした。
「じゃあコレだとどう?」
ご主人様は絵の向きを変えた。
「にゃっ!」
その絵は男性に見えた。
「この絵は女性にも男性にも見える絵なんだよ。面白いでしょ」
へ~え~。不思議な絵だにゃん。面白ーい。
ぼくには描けないけれど、ご主人様も絵が下手だからこうゆう絵は描けないにゃん。
ご主人様の顔をチラリと見た。
「きみ、どうせこうゆう絵は描けないでしょって顔しているね」
「ギクリッ」
さすがご主人様だにゃん。けど、本当のことだにゃん。
ぼくはこの絵をまじまじと見た。普通に見ていると女性の絵。
だけどこっちから見ると男性に見える。
やっぱり不思議な絵だにゃん。
次の日、リビングに入るとビックリすることが起こっていた。
「えっ。穴が開いているにゃ!」
部屋の真ん中に穴が開いていた。昨日まではなかった。
もしかして、ご主人様が何か落として穴をあけちゃったのかなあ。
それとも、空から隕石みたいな硬いものが落ちてきて穴があいた?
まさか、外からどろぼうが穴を掘って地下から出てきたとか?
「落ちたら怖いけれど、近づきすぎなければ大丈夫だよね」
ぼくは怖い気持ちがあるけれど、穴が気になってしまいおそるおそる近づいた。
そして手をかざした。
「アレ? 穴じゃない」
紙?
「きみー。ひっかかったね」
ご主人様が言った。
「それはね、穴に見える絵だよ。きのうの絵といっしょに買ったんだ」
「ひどいにゃー」
「どうせ、昨日見せたような上手な絵は描けないと思っていたでしょ。だからお返し!」
「そもそも同じ日に買ったのならお返しじゃなくて、元からぼくをだますために買ったんでしょ。計画的だにゃん!」
ぼくは怒った。
「実はだまし絵を見ていたら面白くて何枚か買ったの。また見せるね。今日みたいに」
ニヤニヤしながらご主人様は言った。
ってことは、今日みたいにだまされることがあるってことだよね?
「ドッキリはいやだにゃー。今、見せてにゃー」
ぼくは鳴いた。
ご主人様はたくらみ顔で笑っていた。
《終わり》




