表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/143

ネコとめだま

「ただいまー」


 ご主人様が帰ってきた。玄関にお迎えに行くと、手には大き目の袋を持っている。


「きみー。めだまをもらったから見せてあげるよ。あげられないから見せるだけね」


めだまってあのめだま? 見せる??

ぼくは目玉を丸くした。


 リビングに行くと、袋の中からお赤飯が入っていそうな箱を取り出した。

あの箱にいっぱいにめだまが入っているらしい。

色々な種類のめだまかにゃ。それとも動物のめだま? いやいや。そんなのもらっても……。

人からもらうならうようなものであるならキレイな瞳のめだま??

にゃー。どれだって怖いにゃん!


そんなことを考えていたら、ご主人様はふたを開けた。


「パカッ」


 ぼくは目を恐る恐る見た。


「コレがめだま?」


 ぼくが想像していたものとは違った。

目の前にはもち米と黒豆のおこわがあった。コレのどこがめだまなの?


ぼくの様子を見て、ご主人様は勘違いしていることに気づいたらしい。


「めだまってきみの顔についている目玉のことじゃないよ。めだまって呼んでいるけれど、

本当の名前は“みたま”。黒豆(黒大豆)ともち米を蒸した黒豆のおこわのこと。その見た目から“めだま”と呼ぶ人もいるからそう呼んでいるだ」

※“みたま”は、漢字で“御霊”と表記されることがあります。


へ~え~。だからめだまなんだねー


「石川県では法事や建前(上棟式)。新築祝いの引き出物で贈る習わしがあって、もらってきたんだよ」


 そういえば、ご主人様は今日、法事に行くと言っていた。

ご主人様は礼服を着て出かけていったのだ。


 ぼくはふと思った。

”法事に行ったのなら、他にも何かもらってきたんじゃないの?” と。

例えば、お菓子とかお菓子とか……。

めだまはあきらめてもいいけど、お菓子は食べたいにゃー。


 めだまが入っていた袋に近寄った。手で袋をつっついてみた。やっぱりまだ何かが入っている。きっと、おまんじゅうとか、もなかとかもらってきるはずだにゃん。


 袋がしっかりしているからぼくが触ったくらいでは倒れそうもないから、

袋目掛けて飛んで倒すことにした。


「ジャーンプ」


 すると、突然、首根っこを捕まれた。


「痛いにゃ~ん!」


 ご主人様がぼくの首根っこをつかんでいる。


 めだまはあげないって言ったけど、

見せておいてあげないのはかわいそうかなと思ったから

少しくらいはあげようかと思っていたけど、

きみがそんなことするならあげません!


 ご主人様はぼくを静かに降ろした。


「きみには見せるだけ見せてあげるよ」


 そう言うと、ご主人様は袋の中からお菓子を取り出した。


「白と抹茶色のおまんじゅう、もなかをもらったの」


「え~。やだ~。どっちか欲しいにゃん~」


 ぼくは必死に目を潤ませながら訴えた。


「でも、見せるだけです。あげません」


 ご主人様は右手にはめだまが入った箱

。左手にはおまんじゅうともなかが入った箱を持ってリビングを出た。


「まって~」


 ぼくはご主人様を追いかけた。


「一口何かちょうだいにゃ~。見せるだけ見せてくれないなんて嫌がらせだにゃん!」


 ぼくは叫んだ。



【終わり】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ