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ネコと子イヌ6(後編)

子イヌのえりかが悲しい夢を見ることが多くなり、

鳴いていると飼い主のつとむ君を悩ませていました。


おそらくその原因は、奥さんのゆいちゃんがお産のため、

実家へ帰っていて、つとむ君は様子を見に行くことがあり、日帰りの日もあれば

泊っている日もあるため、えりかは捨てられたのではないかと不安になり、

自分が一人ぼっちになってしまう悪夢を見ているのではないかということでした。


肉まんは、


「一時だけの辛抱だよ」


 そう言って聞かせるのですが、えりかは受け入れてくれません。

「つとむ君がいない!」

「ワンワンワンワン」


 えりかはずっと鳴き続けている。

ぼくはご主人様と目を見合わせ、


「これもえりかのためだ」


 とお互いに言い聞かせ、その鳴き声に耐えた。

しばらくすると鳴き疲れたえりかは寝てしまい、やっとおとなしくなった。


「ズズウズズー。ズズウズズー」


 いびきをかいているくらいだからしばらくは起きないと思う。



 それから6時間後。夕方になり、外は暗くなってきた。


「ピンポーン」


 ぼくと、ご主人様は玄関に向かった。戸を開けると、


 「肉まん。久しぶり」


 ゆいちゃんがいた。となりにはつとむ君がいて嬉しそうな顔をしている。


「ゆいちゃん。つとむ君」


 えりかは目を覚ましたらしく、廊下に出てきた。

 

「えりか。お待たせ。赤ちゃんといっしょに戻ってきたよ」


 ゆいちゃんがそう言うと、


「ワンワンワンワン」


 勢いよく走ってきて玄関にやってきてゆいちゃんの元へ行った。


「ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です。えりか、帰るよ」


 いつもだったらいやがるえりかだったけれど、今日はおとなしく帰ってくれそうだ。

と思っていたら……。


「肉まん」


 えりかは振り向いた。

えっ。もしかして、ゆいちゃんのことは安心したからまだぼくのお家にいたいなんて言い出さないよね。

それともさっき、寝ていたから遊び足りないって思っているかも。

いや。もしかして、ぼくのお気に入りのネズミのおもちゃを欲しいなんて言わないよね。


「さっきはごめんね。言い過ぎたわ」


 えりかは言った。


「きみが分かってくれればいいよ。ぼくは気にしてないよー」


 そう言うと、ぼくに飛びついてきた。


「痛いにゃー」


 ぼくは鳴いた。結局、コレをしたかったのね。


「またね。肉まん」


 えりかはごきげんな様子で帰って行った。

ぼくの身体はジンジンと痛いけど、機嫌が治ったのならそれでいいことにしようと

思い込むことにした。



《終わり》

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